お薦めコンサート一覧

お薦めコンサート

石合 力◎朝日新聞編集委員

尾高忠明と大阪フィル、ベートーヴェン交響曲のチクルス始動

■尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 ザ・シンフォニーホール特別演奏会 ベートーヴェン・チクルス~原点にして頂点~ I

ベートーヴェン:バレエ音楽《プロメテウスの創造物》序曲、交響曲第1番、第2番
9月10日(水)19:00 ザ・シンフォニーホール

■山下一史指揮 大阪交響楽団 第137回名曲コンサート

菊池洋子(ピアノ)
ベートーヴェン:序曲《レオノーレ》第3番、ピアノ協奏曲第1番、第5番《皇帝》
9月14日(日)14:00 ザ・シンフォニーホール

■2025 ル・ポン国際音楽祭赤穂・姫路

樫本大進(音楽監督・ヴァイオリン)、ナタリア・ロメイコ、ボリス・ブロフツィン、五明カレン(ヴァイオリン)、リーズ・ベルトー、アミハイ・グロス(ヴィオラ)、上村文乃、ユリアン・シュテッケル、ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)、オリヴィエ・ティエリ(コントラバス)、エマニュエル・パユ(フルート)、ポール・メイエ(クラリネット)、小菅優、アレッシオ・バックス(ピアノ)

9月27日(土)~10月4日(土)
(コンサート日程・会場・プログラムと出演者など、音楽祭全体の詳細は、https://imf-le-pont.jp参照)


 西日本の演奏会から紹介する。2027年に没後200年となる楽聖ベートーヴェン。秋のシーズンから大阪の主要オケも相次いでプログラムに取り上げる。尾高忠明と大阪フィルは、交響曲チクルスに挑む。尾高は18年に音楽監督に就任し、ブルックナーの交響曲チクルスを今年2月に完結。創設者朝比奈隆から築き上げた深みのある響きにピアニッシモの繊細な美しさを加え、得意のエルガーやマーラーなどで快進撃を続ける。そのベートーヴェン演奏は「奇をてらわない正攻法で」と楽団関係者。音響の優れたザ・シンフォニーホールでじっくりと味わいたい。
 大阪響は、常任指揮者山下一史が菊池洋子と続けるベートーヴェンのピアノ協奏曲チクルスの3回目。第1番のカデンツァはグレン・グールドによるもの。創立45周年記念の第282回定期演奏会では、山下の指揮でヴェルディの《レクイエム》を取り上げる(9月28日)。「偶然のバッティング」(関係者)で、6日後には藤岡幸夫指揮関西フィルも同じ曲を演奏する(10月4日)。「大阪4オケ」などでしのぎを削るオケと声楽陣の競演となる。
 ベルリン・フィルのコンサートマスターで世界的なヴァイオリニストの樫本大進が音楽監督を務める「ル・ポン国際音楽祭」。今年もゆかりの地、赤穂と姫路で9月27日から10月4日まで6公演を開く。今年のテーマは「モーツァルトと、今年没後50年をむかえるショスタコーヴィチとの融合」。名手14人による究極の室内楽演奏を味わえる。入場料は全席1,000円。出演者はノーギャラで日本に滞在し、樫本が日本食を振る舞う趣向だ。


清宮美稚子◎本誌編集

沖澤/京響、《シェエラザード》で国内ツアー
ソロはソロコンサートマスターの石田泰尚

■沖澤のどか指揮 京都市交響楽団演奏会

L.ファランク:交響曲第3番、リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》
9月19日(金) 19:00 、20日(土)14:30 京都コンサートホール〔21日(日) 15:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール、23日(火・祝) 18:00 サントリーホール、24日(水) 19:00 ハーモニーホールふくい、25日(木) 18:30 長野市芸術館、27日(土) 13:30 SG GROUPホールはちのへ(八戸市公会堂)、28日(日) 13:00 リンクステーションホール青森〕

■神戸市混声合唱団 秋の定期演奏会『人間の顔~戦後80年に捧ぐ』

佐藤正浩(指揮)
シェーンベルク:《地には平和を》、プーランク:《フランスの歌》、リゲティ:《ルクス・エテルナ》、プーランク:カンタータ《人間の顔》
9月14日(日)15:00 神戸文化ホール

■横山幸雄(ピアノ) ベートーヴェン・プラス Vol.11〈ベートーヴェン5大ピアノ・ソナタ&ラヴェル ピアノ独奏曲全曲〉

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ《悲愴》《月光》《テンペスト》《ワルトシュタイン》《熱情》、ラヴェル:ピアノ独奏曲全曲 9月7日(日) 10:45 東京オペラシティ コンサートホール


 公演を重ねるごとに評判が評判を呼ぶ沖澤のどか/京響は、《シェエラザード》という魅力的なプログラムで、本拠地での定期演奏会を皮切りに神戸、東京、福井、長野、そして沖澤の出身地青森県の八戸、青森で演奏会を行う。ヴァイオリン・ソロを務めるのはソロコンサートマスターの石田泰尚。この規模の国内ツアーは、日本フィルの例年の九州ツアーを除けば珍しいのではないか。京都に行かずして沖澤/京響を聴ける絶好の機会だ。
 神戸市混声合唱団が戦後80年に関連して注目すべきプログラムを取り上げる。第2次大戦中、1940年6月からナチスの占領下に置かれたパリで、静かなレジスタンスの声を上げた文化人のひとり、プーランクは、ポール・エリュアールの詩をもとに1943年、カンタータ《人間の顔》を作曲。楽譜は地下出版され、45年3月、イギリスで英語翻訳版が初演された。この曲と、シェーンべルク《地には平和を》など無伴奏の合唱曲4曲を、H Pに公開されている指揮者佐藤正浩のメッセージと合わせて味わいたい。
 日本のピアノ界を牽引する横山幸雄。そのライフワークの一つ、〈ベートーヴェン・プラス〉vol.11が開かれる。10:45開演の4部構成で終演は16:45予定。ベートーヴェン〈5大ソナタ〉にプラスして、ラヴェルのピアノ独奏曲が全曲演奏される。なお翌週の15日(月・祝)には宗次ホールで〈ラヴェル ピアノ独奏曲全曲演奏会〉を開催、横山のエネルギーには脱帽だ。
 9月はカーチュン・ウォン/日本フィルのマーラー:交響曲第6番を紹介したかったが、13日(土)は完売、12日(金)も残席わずか。ウォンの人気は凄まじい。