新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

レグラ・ミューレマン(ソプラノ)
マリー・クロード・シャピュイ(メゾ・ソプラノ)
マクシミリアン・シュミット(テノール)
トーマス・バウアー(バリトン)
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)
バーゼル室内管弦楽団
ヴロツラフ・フィルハーモニー合唱団
(ソニー)SICC-30498 2808円
録音:2016年

スリリングで生まれたばかりのような新鮮な刺激的な第九

 12年をかけて進行していたアントニーニとバーゼル室内管によるベートーヴェン交響曲全集の完結編。イル・ジャルディーノ・アルモニコの創設者であるカントニーニは、ここではモダン楽器を使用しながらも、ガット弦、ナチュラル・トランペット、ナチュラル・ホルン、ケトル・ドラムを用い、きわめて自在な解釈を聴かせている。重厚長大な記念碑的な作品というイメージは後退し、スリリングで今生まれたばかりのような新鮮で刺激的な音楽を展開。

シューベルト:交響曲第5番、第7番「未完成」

シューベルト:交響曲第5番、第7番「未完成」

クラウディオ・アバド(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1830 3024円
録音:1971年(ライヴ)

37歳のアバドのみずみずしい感性がきらめくシューベルト

 1971年の聖霊降誕祭にウィーンのムジークフェライン大ホールで開催されたアバドとウィーン・フィルの演奏会のライヴが初リリースされた。65年にこのオーケストラにデビューし、良好な関係を構築していたアバドはその時点で37歳。収録されたシューベルトの交響曲第7番「未完成」、第5番では彼のみずみずしい感性がきらめき、珠玉のような音楽に結晶している。独自の確固とした演奏スタイルをもっていた同楽団の持ち味を余すところなく発揮。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ライフ●イゴール・レヴィット

ライフ●イゴール・レヴィット

●ブゾーニ:J.S.バッハによる幻想曲●J.S.バッハ/ブラームス編:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」●シューマン:主題と変奏●ジェフスキ:「夢」第1部より「男」●リスト:ワーグナーの「パルジファル」より「聖杯への厳かな行進」、他
イゴール・レヴィット(ピアノ)
(ソニー)SICC-30495/6 3888円(2CD)

友人の死に遭遇し、心情を吐露するような演奏

 ロシアに生まれ、8歳のときにドイツに移住したイゴール・レヴィットはバッハやベートーヴェンの録音で高い評価を得ている。新譜は親しい友人の死に遭遇し、深い喪失感と悲しみを表現した「ライフ(人生)」。ブゾーニで静(ひつに幕開けし、バッハ、シューマン、リストで深層心理を描き出し、ジェフスキの作品に共鳴し、最後はビル・エヴァンスで終幕するというこだわりのプログラム。いずれもレヴィットの心情を吐露するような深遠な演奏だ。

音楽史・バロック

安田和信◎音楽評論家

バッハ:鍵盤のための作品全集Vol.1~若き継承者

バッハ:鍵盤のための作品全集Vol.1~若き継承者

●ヨハン・ミヒャエル・バッハ:コラール「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」
●J.S.バッハ:ファンタジア/コラール「高き天よりわれは来たれり」
●ジローラモ・フレスコバルディ:ベルガマスク
●ヨハン・クリストフ・バッハ:プレリュードとフーガ、他
バンジャマン・アラール(チェンバロ、オルガン)
ジェルリンド・ゼーマン(ソプラノ)
(キングインターナショナル/ハルモニア・ムンディ)
KKC-5918/20 4000円(3CD)
〈録音:2017年〉

少年バッハに影響を与えたであろう作曲家も収録

 アラールは既に別レーベルでバッハの録音をしているが、本盤はバッハのあらゆる鍵盤作品を網羅する全集の第1弾。オルドルフ時代、リューネブルク時代、アルンシュタット時代に焦点をあて、最初期のコラール編曲(原曲も併録)やプレリュード、フーガを鮮やかな演奏で聴くことができる。少年バッハに影響を与えたであろう作曲家の作品が取り上げられており、様式の比較を耳で可能にしているのも興味深い。完成が待ち遠しい企画。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

シューベルト:交響曲第1番、第6番

シューベルト:交響曲第1番、第6番

ルネ・ヤーコプス(指揮)
ビー・ロック・オーケストラ
(Pentatone)PTC-5186707 オープン価格
(SACDハイブリッド)

「歌の人」シューベルトの交響曲の新しい歴史を作る

 シューベルトは「歌の人」だとみんな知ってはいるけど、彼の交響曲の歌われ方は、アーノンクールがリートとして奏でる以前は童謡か軍歌のようだった。ヤーコプスの歌わせ方は、ずっと気楽。まるで鼻歌のように朴訥(ぼくとつ、そして自由で(はかなげ。第1番第3楽章のトリオのテンポは自由すぎるし、第6番終楽章だけでロッシーニのオペラ全曲を聴いた気分にさえなる。声楽発想の指揮者とピリオド楽器オケがシューベルトの新しい歴史を作った。