岡本稔◎音楽評論家

ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)、
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-2394
3300円
オーケストラの自主性活かした理想的な指揮
大イヴェントの期待に応えたネゼ=セガン
世界中に生中継される恒例のイヴェント。演奏会を企画する担当の感覚の鋭さには頭が下がる。毎年、オーケストラと良好な関係を保つ指揮者を指名し、取り上げてこなかった作品にも光を当てながら、新年にふさわしい雰囲気を醸成する。ネゼ=セガンは期待に十分応えている。オーケストラの自発性を最大限に活かしながら、要所を引き締める指揮は理想的。舞踊のために書かれた作品から優美で、溌溂とした味わいに満ちたニュアンスを紡ぎだしていく。

朝比奈隆(指揮)、大阪フィルハーモニー交響楽団
(アルトゥス)ALT552
3490円
朝比奈隆のマーラー第5番唯一のライヴ
自信と風格に満ち溢れた独自の存在感
朝比奈隆といえば、なによりブルックナーの名解釈者として知られるが、マーラーについても決して無関心であったわけではなかった。第2番から第9番、交響曲《大地の歌》の演奏記録も残されている。この録音は第5番を指揮した唯一のライヴ。1980年の大阪フィル東京演奏会におけるもの。構築のがっしりとした作りで、時にベートーヴェンとの類似性も感じさせる。自信と風格に満ち溢れた音楽はこの指揮者ならでは。独自の存在感を放つ。
伊熊よし子◎音楽評論家

エリック・ルー(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13885
3410円
※SACD Hybrid
心に近い作曲家の音楽を自然体で
エリック・ルーはショパンを得意としているが、インタビューでは「いまもっとも心に近い作曲家はシューベルト」と明言している。そんな彼がシューベルトの即興曲8曲を録音した。ここにはエリック・ルー本来の自然体で、聴き手に語るように紡いでいくこの上なく美しく柔軟性に富み、情感あふれる響きが凝縮している。内田光子とシューベルトについて語り合ったそうで、彼女の演奏を敬愛している。弱音が詩的で繊細でささやくような馨【かぐわ】しさ。
石戸谷結子◎音楽評論家

パーセル:もしも音楽が恋の糧となるのなら / キャンピオン:光の創造主よ / ハンフリー:あの罪を赦していただけますか / ブロウ:サビーナは千の魅力を持っていて / ヘンデル:おお眠りよ、なぜ私を見捨てるの ほか
グレイス・デイヴィッドソン(ソプラノ)、ジュリアン・パーキンス(ハープシコード)
(Signum Classics)JSIGCD960 3500円
※輸入盤国内仕様、日本語解説・歌詞付き
ソプラノとハープシコードによる英国歌曲集
イギリス生まれのデイヴィッドソンによる、パーセルやヘンデルなど、古楽系アリアを集めたアルバム。ハープシコードの名手で指揮者でもあるJ・パーキンスとのコラボレーション。彼はバロック・オーケストラやピリオド楽器のアンサンブルの芸術監督も務めている。デイヴィッドソンは、混じりけのないピュアで透明な声の持ち主で、歌声はまっすぐに聴き手の心に響く。アルバムの中では特にヘンデル《セメレ》の数曲のアリアが印象に残る。「千の魅力」のタイトルは、J・ブロウの曲から。
鈴木淳史◎音楽評論家

シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番、歌手の慰め(イッサーリス編チェロ&ピアノ版) / ダヴィッド:ロマンツェ / モシェレス:チェロ・ソナタ / バッハ&グノー:アヴェ・マリア
スティーヴン・イッサーリス(チェロ)、コニー・シー(ピアノ)、ジェズアルド・シックス
(Hyperion)7128477
オープン価格
原曲よりも濃厚なシューマンの情熱
1851年に焦点をあてたアルバム。この年に書かれたシューマンのソナタをチェロ版で弾く。さすがイッサーリス、なかなかチャレンジングな編曲で、原曲よりシューマンの止め処ない情熱が濃厚に伝わってくる。コニー・シーの弾く、作品と同年に作られたエラール製ピアノとの掛け合いも激しい。その熱量は、モシェレスのソナタの魅力も引き出す。贅沢なことに、英国の誇る声楽アンサンブルが《アヴェ・マリア》後半だけに登場。ハーモニーの深さに言葉を失う。