岡本稔◎音楽評論家

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)、
ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-10489 3300円
※SACD Hybrid
ヤルヴィと手兵オケの個性を見事に刻印
小ぶり編成によるシューベルト全集第1弾
パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルハーモニーによるシューベルト全集の第1弾。幅広いレパートリーで高い評価を獲得しているヤルヴィだが、シューベルトの淡い色に彩られた世界はやや敷居が高かったのかもしれない。しかし、ここで聴く演奏には彼らの個性が見事に刻印されている。作曲者が指定した通りの小ぶりの編成によって、旋律の綾が手に取るようにわかり、打楽器が刻印を打つ。弦の細やかな表情にも特筆すべきものがある。

R.シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》、
家庭交響曲、アルプス交響曲*
読売日本交響楽団 、新日本フィルハーモニー交響楽団*
(東武レコーディングス)TBRCD0182
3850円 ※2CD
指揮者と作曲家、両職人の幸運な出会い
読響と新日本フィルも充実
2025年1月に急逝した秋山和慶が2009年と11年に残したR.シュトラウスを集めたアルバム。秋山といえば職人的な技量の持ち主として知られ、その表現の正確無比さについては定評があった。一方、シュトラウスも作曲の技量において職人的なたぐいまれな能力を持った人。これらの録音は両者の幸運な出会いが大きな成果を上げている。演奏している2つのオーケストラの充実ぶりも称賛に値する。アンサンブルが優れるとともに、音楽的な表現にも秀でている。
伊熊よし子◎音楽評論家

ヤナーチェク:《草かげの小径》より〈おやすみ!〉 / リスト:子守歌 / ショパン:子守歌 / リャプノフ:《6つのやさしい小品》より〈人形の子守歌〉 / デスナー:Song for Octave ほか
ベルトラン・シャマユ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-28511 3300円
※SACD Hybrid
幻想的で静謐な、16曲の「子守歌」アルバム
自身が不眠症に悩まされているというベルトラン・シャマユは、昔から「子守歌」に目がなかったとライナーノーツに綴っている。その彼がショパン、ブラームス、グリーグの有名な曲にヤナーチェク、リスト、リャプノフなどを加えて16曲の「子守歌」で幻想的かつ静謐、さまざまな感情を喚起する演奏を展開している。ブライス・デスナー(1976~)の世界初録音も含み、多様な選曲が聴き手に眠気よりも覚醒感を与える。夢幻的なアルバムの誕生だ。
石戸谷結子◎音楽評論家

松居直美(オルガン)、鈴木美紀子(ソプラノ)、吉田光司(鐘)
(カメラータ)CMCD-28397
3080円
軽井沢追分教会に響くクリスマスの名曲の数々
喧噪を離れた軽井沢郊外、森の中にひっそりたたずむ軽井沢追分教会。そこにはオランダ、ライル社が制作したオルガンが設置されている。クリスマス時期は雪に閉ざされるその教会で、松居直美が奏でるクリスマスの名曲の数々。13曲のうち8曲は鈴木美紀子のソプラノが演奏に加わる。ブリテンの《主の聖体によるキャロル》やカタルーニャ民謡の《鳥の歌》など。また松岡あさひが作曲した《楽園の鳥たち》や《クリスマス・キャロル・コレクション》も。オルガンの力強い響きと繊細で豊かな音色が森にこだまする。
鈴木淳史◎音楽評論家

パール・ヘルマン:弦楽三重奏曲 / ゲーザ・フリッド:弦楽三重奏曲、ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲《Kan-Ti》 / ゾルターン・セーケイ:弦楽三重奏曲
ハーグ弦楽三重奏団
(Cobra Records)COBRA0096
オープン価格
1920年代のハンガリーの作曲家による弦楽三重奏曲集
ほぼ同時期にコダーイやバルトークに学んだ3人の作曲家が若き日に書いた弦楽三重奏曲集。ユダヤ系だったために収容所へ送られ消息不明となったチェロ奏者ヘルマンによる濃密な歌。ヴァイオリニストとしても名声を成したセーケイの作品はまさしくポスト・バルトークというべきシャープな作風だ。そして、フリッド作品は民族的なエッセンスをドラマティックに盛り込んだ。オランダのトリオによる、輪郭もくっきり、颯爽とした運びの演奏。