新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、第7番「レニングラード」

ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、第7番「レニングラード」

●ショスタコーヴィチ:「リア王」組曲、祝典序曲
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ボストン交響楽団
(ユニバーサル)UCCG-1828/9(2CD)
3780円
録音:2017年

政治的な背景に深入りせず音楽的な切り口で新たな作品像

 ボストン響、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管の2つの名門を手中に収め、快進撃を続けるネルソンスのショスタコーヴィチ全集の第4弾にあたる。今回もロシアの名門の演奏とは一味異なるアプローチによってショスタコーヴィチの作品に迫る。彼にとってはすでに現代の古典という位置づけだろう、政治的な背景に深入りすることなく、真に音楽的な切り口で新たな作品像を提示する。オーケストラの能力は驚くばかりで、響きも洗練されている。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

テスタメント/私の愛する音楽 ~ハイドンからプロコフィエフへ~

テスタメント/私の愛する音楽 ~ハイドンからプロコフィエフへ~

●ハイドン:ピアノ・ソナタ第20番/第23番/第44番
●ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4番/第16番/第19番
●シューベルト:ピアノ・ソナタ第4番/4つの即興曲作品142
●シューマン:ピアノ・ソナタ第1番/3つの幻想小曲集/アラベスク、他
ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)
(ソニー)SICC-19034/39 17820円(6SACDハイブリッド)

情熱と内面性が色濃く映し出された6枚組

 アファナシエフが自身の芸術を刻印するために6枚組の「テスタメント(遺言)」と題したアルバムを作り上げた。すべて新録音で、初のハイドン、長年愛奏しているベートーヴェン、シューベルト、ノルタルジアを意味するプロコフィエフなど意義深い作品が組まれている。6日間のセッションで録音されたこのアルバムは、いずれもアファナシエフの心情と情熱と内面性が色濃く映し出されたもの。各曲が彼の解説文とリンクして人生観を伝える。

オリヴィエ・メシアン:鳥のカタログ全13曲

オリヴィエ・メシアン:鳥のカタログ全13曲

●メシアン:「鳥のカタログ」(べにあしがらす/こうらいうぐいす/いそひよどり
/かおぐろひたき/もりふくろう/もりひばり/ヨーロッパよしきり
/むなじろひばり/ヨーロッパうぐいす/こしじろいそひよどり、他
ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)
(キングインターナショナル)PTC-5186670 オープン価格
(3SACDハイブリッド、ボーナスDVD)

細部まで神経が張り巡らされたピアニズム

 メシアン演奏における第一人者エマールは1973年メシアン国際コンクールの優勝者。鳥の鳴き声を基礎としたこの作品はメシアンの代表作のひとつで、自然界とのつながり、作曲家としての方向性などを示しており、フランスの特定の地方における代表的な鳥の名前を標題に掲げている。全曲は約3時間30分の長大な作品で、エマールの細部まで神経が張り巡らされた細密画のようなピアニズムが印象的。森の空気を全身にまとうような気分だ。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

リヒャルト・シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」

リヒャルト・シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」

マリアンネ・シェヒ(元帥夫人)
イルムガルト・ゼーフリート(オクタヴィアン)
リタ・シュトライヒ(ゾフィー)、クルト・べーメ(オックス)、他
カール・ベーム(指揮)
シュターツカペレ・ドレスデン&ドレスデン州立歌劇場合唱団
(ユニバーサル)UCGG-9155 10368円
※SACD、DG原盤

作曲者の信頼厚かったベーム指揮によるドレスデンの名盤が蘇る

 「ばらの騎士」の名盤は数々あるが、これは作曲家が絶大な信頼を寄せたカール・ベームの指揮。歴史的名盤がSACD-SHM仕様で甦った。クルト・ベーメも溌剌(はつらつとしており、(々しいイルムガルト・ゼーフリートのオクタヴィアンとリタ・シュトライヒの優雅なゾフィーによる二重唱や、マルシャリンのマリアンネ・シェヒを加えた3幕の三重唱はこの上なく典雅だ。ベームの指揮は端正で抑制の効いた正統派の演奏。作品ゆかりのドレスデンで、1958年セッション録音。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ヒンデミット:交響曲「画家マティス」

ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、第7番「レニングラード」

●ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容/
弦楽オーケストラのための5つの小品/ラグタイム(組曲「1922年」第5曲)
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)
(Naive)V-5434 オープン価格

ヒンデミット指揮者ならではのバランスいい「画家マティス」

 ヒンデミット指揮者として、もっと評価されていいパーヴォ。「画家マティス」は、実にバランスのいい演奏だ。シャープなフレージングの中にふっと浮き上がる荘厳さ。「交響的変容」は、ついアクが強くなってしまう演奏も多いが、パーヴォは引き締まった流れから、この作品の細部まで彫(たくしつつ、清潔感あふれる壮大な頂点を築く。「5つの小品」や「ラグタイム」もオーケストラの機能性を十二分に引き出した都会的な快演だ。