岡本稔◎音楽評論家

エドワード・ガードナー(指揮)、
ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団
(CHANDOS)CHSA5248
オープン価格
※輸入盤、SACD Hybrid
聴く者を引き込む指揮者の解釈とオケの響き
ブラームスの魅力をありのままに
ベルゲン・フィルは2015年から24年まで首席指揮者をつとめたガードナーのもと評価を高め、25年の英グラモフォン誌ではオーケストラ・オヴ・ザ・イヤーに選出された。当盤は交響曲全集の完結編にあたる。作品そのものに語らせるというアプローチでブラームスの魅力をありのままに引き出す。洗練された弦楽器の音色を中心とした、温かみのあるオーケストラの響きを活かし、推敲を重ねた解釈によって聴く者を思わず引き込んでいく。

井上道義(指揮)、オーケストラ・アンサンブル金沢
ナデージダ・パヴロヴァ(ソプラノ)、
アレクセイ・ティホミーロフ(バス)
(オクタヴィア)OVCL-00914
3850円
※SACD Hybrid
引退直前の井上道義とアンサンブル金沢
ショスタコーヴィチの名作で入魂の名演
2024年11月、引退直前の井上道義とオーケストラ・アンサンブル金沢との最後の共演の記録。ショスタコーヴィチをライフワークの一環としていた井上にとって、最後の演奏会にはこの作曲家がふさわしいと考えたのだろう。第14番は作曲者が持てる多彩な技法を駆使して書き上げた名作。卓越した2人の歌手と高い能力を持つオーケストラを必要とする難曲である。その条件を満たし、指揮者の入魂の気迫のタクトによって実現した名演といえる。
伊熊よし子◎音楽評論家

シューマン:アベッグ変奏曲、蝶々、交響的練習曲、
ピアノ・ソナタ第1番、ピアノ・ソナタ第2番 ほか
エリザーベト・レオンスカヤ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-28516
5500円
※2SACD Hybrid
哲学的で魔術的な空気も漂うピアニズム
エリザーベト・レオンスカヤのシューマンは、馨【かぐわ】しきエレガンスあふれる《アベッグ変奏曲》から開幕し、一気に心が高揚し、最後はピアノ・ソナタで締めくくる。アルバムは《交響的練習曲》の主題の後に5つの変奏を置き、再び主題と12の練習曲を奏でるという新たな方法をとっている。その詳細は解説書に記載されているが、レオンスカヤの演奏はまさにシューマンの当時の精神性と挑戦する心と、時に哲学的で魔術のような空気も漂わせている。
石戸谷結子◎音楽評論家

パレストリーナ:ミサ《兄弟たちよ、わたしは 主から受けたことを》より〈キリエ〉〈グローリア〉、ミサ《ドレミファソラ》より〈クレド〉〈アニュス・デイ I & II〉 / ペルト:カイザルへの税金 / マクミラン:あなたの手を伸ばして ほか
ハリー・クリストファーズ(指揮)、ザ・シックスティーン
(Coro)COR16217
オープン価格
※輸入盤国内仕様、日本語解説付き
「教会音楽の救世主」への敬意と親愛
2025年11月に21年ぶりに来日したザ・シックスティーン。その来日に合わせ、演奏曲目を集めたコンピレーション・アルバム。2025年はパレストリーナの生誕500年。彼に影響を受けたペルト(生誕90年)やマクミランの曲もプログラミングされている。当初は16人で結成され(現在は18人)、イギリス古楽合唱団の最高峰といわれる、清澄で精緻なアンサンブルが特徴だ。「教会音楽の救世主」とされるパレストリーナへの敬意と親愛が感じられる、心揺さぶられるエモーショナルな演奏。
鈴木淳史◎音楽評論家

ドルマン:マズルカ/ベンクトソン:カロル・シマノフスキの思い出に捧げるマズルカ/ ラスコ:アンナのためのマズルカ/カニオフスカ:マズルカ・パスティーシュ第1番/ピカ:ジャズ・マズルカ/ブレハシュ:ピアノと3台のワイヤレス・スピーカーのためのマズルカ ほか
アンナ・キヤノフスカ(ピアノ)
(DUX)DUX2149
オープン価格
20の感性が躍る、現代のマズルカ
ポーランドの伝統的な舞曲をテーマに、ピアニストが20名の作曲家に委嘱した作品集。そのスタイルは多種多様だ。たとえば、冒頭に収められたドルマン作品は、ギクシャクとしたマズルカのリズムで始まり、中間部ではショパンを思わせる優美な流れに転じ、それがヘブライの音階に変貌していく。このアルバムが1960年代に作られたなら、もっと差異や模倣を意識した作品が並んだだろう。21世紀の作曲家の音楽は、もっと自由で素直だ。