新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー:交響曲第1番(1866年 リンツ稿)

ブルックナー:交響曲第1番(1866年 リンツ稿)

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
hr響(旧フランクフルト放送響)
(ソニー)SICC-10255 3240円
(SACDハイブリッド)

ロマン的であるとともに明快極まりない語り口

 パーヴォとフランクフルト放送響によるブルックナー・チクルスの7枚目。後期作品とは明らかに趣を異にする引き締まった作品の持ち味をありのままに表現した演奏といえるだろう。オーケストラの高い機能性を活かしながら、ロマン的であるとともに明快極まりない語り口で清新な表現を展開。多くのブルックナー指揮者が示す神秘的な世界とは一味異なる躍動感にあふれた音楽を自在に描き出していく。「1866年リンツ稿」の特徴が際立つ。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

メシアン:世の終わりのための四重奏曲

メシアン:世の終わりのための四重奏曲

マルティン・フレスト(クラリネット)
リュカ・ドゥバルグ(ピアノ)
ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
トーレイフ・テデーン(チェロ)
(ソニー)SICC-30482 2808円

第一線で活躍する4人の名手の新たなメッセージ

 幾多の録音が存在する「世の終わりのための四重奏曲」に、現在第一線で活躍する4人の名手が集い、新たなるメッセージを託した録音を生み出した。メシアンが第2次大戦中にドイツ軍の捕虜となり、収容所で書き上げたこの作品は、聖書のヨハネ黙示録第10章から霊感を得たもの。クラリネット、ピアノ、ヴァイオリン、チェロという4つの楽器が人間の悲劇性、魂の永遠性、狂乱や混乱、深遠などの表現を、思いを込めて率直に紡いでいく。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ドロテア・レシュマン「モーツァルト オペラ・アリア集」

ドロテア・レシュマン「モーツァルト オペラ・アリア集」

●歌劇「皇帝ティートの慈悲」より「ああ、私を喜ばせたいとお望みなら」
/歌劇「フィガロの結婚」より「愛の神よ、安らぎをお与え下さい」、他全8曲
ドロテア・レシュマン(ソプラノ)、ダニエル・ハーディング(指揮)、スウェーデン放送響
(ソニー)SICC-30477 2808円

モーツァルトを得意にする名ソプラノが待望のアリア集を録音

 ドイツの名ソプラノとして絶大な人気と実力を誇るレシュマンだが、これが初のモーツァルトのオペラ・アリアになるという。エレットラ、ヴィテリアといった強烈な個性を持つ役柄はレシュマンの最も得意とするキャラクターだし、伯爵夫人の2つのアリアも高貴さが匂い立つ。ニュアンス豊かで、言葉に深い感情が込められているので、表現が深いのが特徴。安定した歌唱も彼女ならでは。8曲はいずれも文句のつけようのない歌唱だが、白眉はヴィテリアの2幕のアリア。

グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」

グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」

フィリップ・ジャルスキー(オルフェオ)、
アマンダ・フォーサイス(エウリディーチェ)、他
ディエゴ・ファソリス(指揮)
イ・バロッキスティ
スイス・イタリア語放送合唱団
(Erato)9029 566023 オープン価格
※輸入盤

ジャルスキーを主役に1774年ナポリ版による世界初録音に挑戦

 この作品にはウィーン版とパリ版がある(さらにベルリオーズなどによる編曲版なども)のは良く知られるが、今回は1774年に改訂され、ナポリの王宮で演奏された版。1762年ウィーン初演版をもとに、さらにカットし凝縮したイタリア語版で、世界初録音という。オルフェオを歌うジャルスキーのしなやかな歌唱はもちろんのことだが、エウリディーチェを歌うフォーサイスのメリハリある歌唱も素晴らしい。ファソリスの生き生きした指揮も聴きどころ。

現代曲

長木誠司◎音楽評論家

SOLO エマニュエル・パユ

SOLO エマニュエル・パユ

●武満徹:エア●テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第1番●カルク=エーレルト:ソナタ・アパッショナータ●テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第2番●ヴィトマン:小組曲●武満徹:声(ヴォイス)●ヘルプス:セカンド・ソーツ、他
(ワーナー)WPCS-13765/6 3780円

フルート作品の長い歴史を自由に横断

 これまで以上に力のこもったパユのアルバム。そよ風のように揺らぎながら吹き進む武満徹の《エア》に始まり、テレマンのようなバロック、カルク=エーレルトのような近代を通って、再びヴィトマンのような超現代に戻ってくる。フルート作品の長い歴史を自由に横断しひょう々と跳躍し嬉々として回帰しつつ、各曲の特性を静かな息と豊かな技巧とえ渡る音色で紡いでいく。幾度となく再起する幸福感に浸りながら一気に聴けてしまう2枚。