新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベルリン・フィル アジア・ツアー2017
~ライブ・フロム・サントリーホール

ブルックナー:交響曲第1番(1866年 リンツ稿)

●バルトーク:ピアノ協奏曲第2番●ブラームス:交響曲第4番
●ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」●ラフマニノフ:交響曲第3番、他
ユジャ・ワン、チョ・ソンジン(ピアノ)
サイモン・ラトル(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
※映像では、香港、ソウルなどの演奏会全曲収録、ドキュメンタリーも収録
(キングインターナショナル)KKC-9327/32 オープン価格
(5SACDハイブリッド、1ブルーレイ)
収録:2017年

ラトル芸術監督最後のサントリーホール公演の記録

 5枚のCDには、2017年11月のアジア・ツアーの東京における2つの演奏会と同月のベルリンでのチョ・ソンジンを迎えたラヴェルのピアノ協奏曲が収められている。ブラームスの交響曲第4番でもラトルの円熟の深さが示されているが、特筆すべきはラフマニノフの交響曲第3番だろう。緩急自在なタッチで作品の魅力を完璧に表現。ブルーレイには、香港、武漢、ソウルにおける映像が収録されている。CDと同じ曲目だが、微妙に味わいが異なる。

「ゴールデン・エイジ」

メシアン:世の終わりのための四重奏曲

●ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番●クライスラー:「美しきロスマリン」
●ガーシュウィン:「サマータイム」、他
レイ・チェン(ヴァイオリン)
ジュリアン・クェンティン(ピアノ)
メイド・イン・ベルリン(弦楽四重奏)
ロベルト・トレヴィーノ(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(ユニバーサル)UCCD-1464 3024円
録音:2017年

若い才能を発揮し、作品に真正面から対峙

 レイ・チェンのデッカ・デビューにあたる1枚。ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番では、作品にふさわしい抒情性をにじませながら、楽器を豊かに鳴らしたソロを聴かせている。アルバムのタイトル「ゴールデン・エイジ」にふさわしい、若い才能を自在に発揮させた演奏である。併録の8つの小品もいずれもヴァイオリンの黄金時代を象徴する綺羅きら星のような名作ぞろい。アンコール・ピース風解釈とは違う、作品に真正面から対するアプローチをとる。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集

メシアン:世の終わりのための四重奏曲

クレモナ四重奏団
(キングインターナショナル)KKC-5900
9500円(8CD)(SACDハイブリッド)

凛とした明快な響きで作品の魂に肉薄する

 2000年に結成され、いまやイタリアを代表するクァルテットとして活躍しているクレモナ四重奏団が2012年から15年にかけてベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音を行った。陽光を思わせる明るい音色から深遠さを醸し出す厚みのあるアンサンブルまで、4人の弦は集中力と緊張感をはらむ。クァルテットの最高峰に位置すると称されるベートーヴェンの作品に真に対し、りんとした明快な響きで作品の魂に肉薄していく。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

レグラ・ミューレマン「モーツァルト・アリア集」

ドロテア・レシュマン「モーツァルト オペラ・アリア集」

●モーツァルト:アリア「やさしい春がもうほほ笑んで」/
モテット「エクスルターテ・ユビターテ」、他全9曲
レグラ・ミューレマン(ソプラノ)
ウンベルト・ベネデッティ=ミケランジェリ(指揮)
バーゼル室内管
(ソニー)SICC-30478 2808円
※Blu-spec CD2

鈴を震わすような、涼やかな声質のソプラノによるモーツァルト

 フローレスやレシュマンなど毎月、「モーツァルト」を出しているソニーだが、今月はスイス生まれの新星ソプラノ、ミューレマンが登場。すでに映像ではお馴染なじみで、ラトル指揮「魔笛」のパパゲーナ、映画版「魔弾の射手」でエンヒェンを歌っている。鈴を震わすような、涼やかな声質の持ち主で、なめらかで美しいレガートが特徴。まさにモーツァルトにふさわしい若々しい声だ。コロラトゥーラ技巧も得意で、高音もよく伸びる。「エクスルターテ・ユビラーテ」は驚異的なうまさだ。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ドビュッシー:管弦楽曲集

グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」

●ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲/
交響的断章「聖セバスティアンの殉教」/3つの交響的素描「海」
パブロ・エラス=カサド(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
(Harmonia Mundi France)HMM-902310
オープン価格

グルーヴ感たっぷりに歌わせた「海」と艶めかしい「牧神」

 ドビュッシー没後100周年の年、先月リリースされたクリヴィヌの3度目の「海」に続き、また歴史に残る演奏が登場した。エラス=カサドによる、一つひとつの細部を表情豊かに、グルーヴ感たっぷりに歌わせた「海」だ。波は踊っている! 柔らかな響きを保ったまま、テンポも細やかに揺らす。「波の戯れ」の頂点に向かうテンポアップの流れは爽快。「牧神の午後」も濡れたような音色で、声部がふわりと重なっていく様がじつになまめかしい。