岡本稔◎音楽評論家
ヤニック・ネゼ=セガン(指揮)
ヨーロッパ室内管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1653/4
3780円
シューマンにふさわしい淡いロマン的な情緒を漂わせた演奏
2012年11月にパリで行われた演奏会のライヴ。ネゼ=セガンは、ピリオド・アプローチの成果を適度に取り入れ、弦のヴィブラートを抑制し、速めの心地よいテンポで颯爽(ル:さっそう)と音楽を進める。シューマンにふさわしい淡いロマン的な情緒を漂わせながら、音楽のエネルギーをあますところなく示すことに成功。ヨーロッパ室内管の小振りな編成を活かし、各声部の動きが明確に透けて見えるような演奏を実現している。シューマンの交響曲全集のきわめて刺激的な演奏の登場といえるだろう。
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
クリスティアン・ティーレマン(指揮)
ドレスデン・シュターツカペレ
(ユニバーサル)UCCG-1651
2808円
ブラームスにふさわしい陰影に富んだピアノ演奏
ポリーニにとってブラームスのピアノ協奏曲第2番の録音は3度目。1回目はアバド指揮、ウィーン・フィル、2回目はアバド指揮、ベルリン・フィルとの共演で、ともに名盤の誉れ高い。ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンとは協奏曲第1番のライヴ盤がリリースされており、すでに相性の良さは実証済み。ブラームスにふさわしい陰影に富んだピアノは前の2つの録音と趣を異にする。ティーレマンの指揮も見事というほかない。
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
マルティン・フレスト(クラリネット・指揮)
レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
アントワーヌ・タムスティ(ヴィオラ)、他
(キングインターナショナル)KKC-5372
3086円(SACDハイブリッド)
アンスネスら実力派とのアンサンブルを楽しむ
スウェーデン出身の若手クラリネット奏者、マルティン・フレストがモーツァルトのさまざまな編成による作品をもっとも適したメンバーと共演する魅力的なアルバムを作り上げた。ブレーメン・ドイツ室内フィルを弾き振りし、アンスネス、タムスティ、ヤンセンら実力派とのアンサンブルを楽しむ。いずれもなごやかで嬉々とした演奏。当時の楽器を復元したバセット・クラリネットで自在な低音を駆使し、人間の声のように自然な音を奏でる。
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
ドロテー・ミールズ(ソプラノ)、ほか
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指揮)
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
(マーキュリー)LPH012
2800円
気負わず自然体で繊細な表現のバッハ・教会カンタータ集
バッハがライプチヒ聖トーマス教会の聖歌隊監督に就任した1723年から翌24年までの1年間に作曲した60曲にもおよぶ教会カンタータから、4曲を厳選して演奏している。古楽の典雅でやわらかい音色と独唱カウンター・テナー(アルト)やソプラノのピュアな声がよく溶け合い、絶妙な響きを醸しだす。ヘレヴェッヘの指揮は気負わず自然体で、繊細な表現。バッハの曲をいとおしみ、生き生きと演奏している姿勢が伝わってくる。
鈴木淳史◎音楽評論家
●モーツァルト:プレリュードとフーガ ニ短調 K.405/4
(バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻第8番 嬰ニ短調 BWV.877)/
アダージョとフーガ イ短調
(平均律クラヴィーア曲集第1巻第22番変ロ短調 BWV.867)、他
ベルリン古楽アカデミー
(Harmonia Mundi France)HMC-902159
オープン価格
バッハとモーツァルトのコラボレーション
バッハへ傾倒した時期がモーツァルトにはあり、それがこの編曲の数々を生んだ。しかし、単なる編曲にあらず。バッハ「平均律クラヴィーア曲集」からの作品をフーガ部は旋律をそのまま用いつつ、前半の前奏曲は曲想を生かしながら完全に書き換えているパターンが大半だ。つまり、モーツァルトの音楽がバッハとどう繋(ル:つな)がっていくかの実践。まさしくバッハとモーツァルトのコラボ。「平均律」第1巻第4番を原曲とした2種類の作品も聴くことができる。