岡本稔◎音楽評論家
●ワーグナー:「パルジファル」前奏曲、ジークフリート牧歌
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1843/4 3780円
録音:2018年
過度に重過ぎず新時代のブルックナー像を構築
両者の組み合わせによるシリーズ第4弾。相次いでリリースされるディスクはいずれも水準が高く、ネルソンスが言うところの「この団体の体のDNAの中にブルックナーの音楽が入っている」ことを実感させるとともに、そこにまぎれもない清新な個性を投影させ、新時代のブルックナー像を構築している。作品に向かい合う距離感が抜群で、過度に重過ぎず、しかも作品の中身を鮮やかなタッチで描出。ワーグナーの「パルジファル」前奏曲ほかも秀逸だ。
●シノーポリ:「コスタンツォ・ポルタ賛歌」より第2曲/
愛の墓3/交響的断章「ルー・サロメ」
ジュゼッペ・シノーポリ、シルヴァン・カンブルラン、ペーター・ルジツカ(指揮)
ドレスデン・シュターツカペレ
(プロフィール)PALT-002/3 オープン価格
録音:1994、97、2004年
マーラーの遺作に真正面から向き合った説得力ある演奏
1992年から没するまでドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者をつとめたシノーポリの97年のライヴ。オーケストラをすっかり掌握したこの鬼才は、マーラーの遺作に真正面から向かい合い、きわめて説得力の大きい演奏を実現している。作品の持ち味を活かしながらも過度に
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
●シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番/4つの即興曲D899/
歌曲集「白鳥の歌」よりセレナード(リスト編)
カティア・ブニアティシヴィリ(ピアノ)
(ソニー)SICC-30509 2808円
独特なテンポ設定で引き込まれる“心の歌”
個性的で深い印象をもたらすカティア・ブニアティシヴィリは、録音のたびに新たな面を披露してきた。今回のシューベルトも実に多彩な表現、歌心、情感をたたえたピアニズム。特にテンポ設定が独特で引力が強く、一気に引き込まれていく。即興曲が非常に雄弁で独創的、各曲の個性が際立ち、心の歌を奏でているよう。カティアのピアノは、いずれの作品もその奥にジョージアの舞曲の要素が潜んでいる感じがし、彼女のルーツが垣間見える。
安田和信◎音楽評論家
●テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア第1~12番
川田知子(ヴァイオリン)
(マイスターミュージック)MM-4057 3240円
〈録音:2019年〉
モダン・ヴァイオリンで曲の魅力を十分に引き出す
テレマンの音楽が持つ多彩な世界を
石戸谷結子◎音楽評論家
●シューベルト:「消滅」「水の上で歌う」「リュートに寄せて」
「竪琴弾きの歌」「夜と夢」、ほか全19曲
ピーター・ピアーズ(テノール)
ベンジャミン・ブリテン(ピアノ)
(キングインターナショナル)SBT-1519 オープン価格
※輸入盤、TESTAMENT原盤
歌詞内容を重視、エモーショナルな表現で感動的なシューベルト
1959、61、64年に録音されたピアーズのリート・リサイタル。ピアノはベンジャミン・ブリテンだ。ピアーズの歌唱は、曲をドラマティックに伝えるもので、歌詞の内容を重視したエモーショナルな表現だ。数あるシューベルトの歌曲の中から、孤独や夜や死などをテーマにした静かに沈潜する曲を選んでいるのが興味深い。いずれも素晴らしい歌唱だが、とくに「夜と夢」「彼女の墓」「私のゆりかご」が感動的だ。ブリテンのピアノがロマンチックで優しい。