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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:交響曲第7番

ベートーヴェン:交響曲第7番

テオドール・クルレンツィス(指揮)
ムジカ・エテルナ
(ソニー)SICC-30566 2420円

生命力に満ち溢れたアヴァンギャルドとしての演奏

 昨年の第5番「運命」につづく、クルレンツィスと手兵によるベートーヴェン第2弾。「かつて書かれた交響曲の中で最も完璧な形式を催えた交響曲」と語る彼は、鬼才の面目躍如たる鮮やかな切り口でこの曲の解釈を再構築。ピリオド奏法を大胆に取り入れた鋭い響きが極めて印象的だ。ウィーン的な要素はほとんど感じられないが、そうした指摘を黙らせるだけの説得力を有している。生命力に満ちあふれたアヴァンギャルドとしての演奏だ。

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、第10番

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番、第10番

ジャナンドレア・ノセダ(指揮) ロンドン響
(キングインターナショナル)KKC-6319
3300円(SACDハイブリッド)

軽妙洒脱な表現の第9番、音楽的な表現に徹した第10番

 2016年からロンドン響の首席客演指揮者をつとめるノセダのショスタコーヴィチ・シリーズは4曲がリリースされているが、当盤はそれに続くもの。ノセダにとってこの作曲家はサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場の首席客演指揮者時代に親しんで接したもの。その経験がここでも活かされているが、より洗練された表現になっているのが特徴的だ。第9番の軽妙しゃ脱な表現はこの指揮者ならでは。音楽的な表現に徹した第10番も好演だ。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ハイドン:弦楽四重奏曲第76番「五度」、バルトーク:弦楽四重奏曲第3番、モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番「不協和音」

ハイドン:弦楽四重奏曲第76番「五度」、バルトーク:弦楽四重奏曲第3番、モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番「不協和音」

モディリアーニ弦楽四重奏団
(キングインターナショナル)MIR-506 オープン価格

若手カルテットの憧れともいわれる存在に成長

 2003年に結成されたモディリアーニ弦楽四重奏団はいまやフランスを代表するカルテットとなり、若手カルテットの憧れともいわれる存在に成長。ハイドン、バルトーク、モーツァルトでその真価を遺憾なく発揮している。ハイドンの「五度」の巧みな構築感を明晰に表現し、バルトークの民謡風のリズムを驚異的な集中力で喝破。モーツァルトでは洒脱しゃだつ、軽快、先鋭が混在し、耳が引き付けられる。4本の弦が豊かな四重唱を奏でているよう。

現代曲

長木誠司◎音楽評論家

パリ ヒラリー・ハーン

パリ ヒラリー・ハーン

●ショーソン:詩曲●プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
●ラウタヴァーラ:2つのセレナード(ヒラリー・ハーンのために)
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン) フランス放送フィル
ミッコ・フランク(指揮)
(ユニバーサル)UCCG-45003 3080円

静かな抒情性に溢れたラウタヴァーラのセレナード

 5年前に亡くなったフィンランドのラウタヴァーラがハーンとフランクのために書き、未完成で残された2つのセレナードを、アホが補作して完成。そのパリでの初演の録音が聴きものだ。2曲ともに静かな抒情性にあふれた作曲者晩年の境地。それは同じくパリで初演されたプロコフィエフの協奏曲第1番での冷たい抒情性にもつながるが、こちらは独得の皮肉っぽさへの目配りも行き届いている。劇的物語のような壮大なショーソンも快演。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

プルースト、1907年7月1日のコンサート

プルースト、1907年7月1日のコンサート

●アーン:クロリスに●シューマン:夕べに●ショパン:前奏曲「雨だれ」
●フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
●ワーグナー:イゾルデの愛の死(リスト編)、他
テオティム・ラングロワ・ド・スワルテ(ヴァイオリン)
タンギ・ド・ヴィリアンクール(ピアノ)
(Harmonia Mundi France)HMM-902508 オープン価格

「失われた世界を求めて」の世界観がここに

 今年はプルースト生誕150周年。先日もイッサーリスの「プルーストのサロン音楽」(BIS)が出たばかりだ。一方、当盤は「失われた時を求めて」の世界を構成する音楽が集められたという、1907年7月1日に行われた文豪の企画による演奏会を再現。ヴィリアンクールの弾くエラールのニュアンス豊かさに耳を奪われる。そして、ド・スワルテの機敏なヴァイオリン。フォーレのソナタのスケルツォ楽章ではとりどりの色彩が激しく飛び交う。