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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー:交響曲第8番(第2稿・ハース版)

ブルックナー:交響曲第8番(第2稿・ハース版)

クリスティアン・ティーレマン(指揮) ウィーン・フィル
(ソニー)SICC-30568 2860円

重量感とみずみずしさをあわせ持つ有無を言わさぬ名演

 ティーレマンは必ずしもレパートリーは広くなく、なかでもシンフォニーは得手不得手がある印象もあるが、ブルックナーについてはその圧倒的な説得力に異を唱える人はいないだろう。なかでも第8番は既出のシュターツカペレ・ドレスデンとの録音、映像も高い評価を得ている。全集の第1弾となる当盤はそれをさらに上回る。楽団の特性を活かしきり、能力をいかんなく発揮させ、重量感とみずみずしさをあわせ持つ有無を言わさぬ名演を実現。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」 ゴセック:17声の交響曲

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」 ゴセック:17声の交響曲

フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
レ・シエクル
(キングインターナショナル/harmonia mundi)KKC-6268 3300円

初演を聴いた聴衆の驚きをありのままに追体験

 ベートーヴェン・イヤーの最後を飾るロトの快演の登場。初演を聴いた聴衆の驚きをありのままに追体験させてくれるような衝撃をたたえている。切れ味鋭い響きはこの指揮者と手兵ならでは。一歩間違えると作為的ともとられかねない解釈だが、外連味けれんみはまったくない。1800年代初めのドイツの管楽器のレプリカの鋭さと古雅な味わいを併せ持つ響きが極めて印象的。併録された「17声の交響曲」のゴセックは、楽聖に影響を与えたとされる人だ。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全曲

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全曲

●バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1~3番
神尾真由子(ヴァイオリン)
(ソニー)SICC-19051 3300円(SACDハイブリッド)

作品のよさを前面に押し出す自然体の演奏

 神尾真由子はおおらかで度胸があり、大舞台ほど燃えるタイプ。本音で物を語り、肉厚な響きと地に足の着いたどっしりとした演奏が武器で、目力の強さも印象的だ。近年は室内楽にも積極的に取り組み、レパートリーの幅を広げている。そんな彼女が初録音となるJ.S.バッハの「無伴奏パルティータ」全3曲を収録。思い入れが深いと語る「シャコンヌ」をはじめ、作品のよさを前面に押し出す自然体の演奏。多種多様な舞曲が心に深く染み入る。

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」、第12番「四重奏断章」、第4番

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」、
第12番「四重奏断章」、第4番

カルテット・アロド (ワーナー)9029517247
オープン価格 ※輸入盤

「死と乙女」第4楽章の「ロンド」のテンポの速さが壮絶

 2016年、ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝したカルテット・アロドは、4人とも主張が強く自身の音楽を確固たる姿勢で貫く。そのなかで互いの音に寄り添い、融合し、あるときは断固として自己を主張する。新譜のシューベルトも緊密でドラマチックな演奏を繰り広げているが、とりわけ「死と乙女」第4楽章プレストの「ロンド」のテンポの速さが壮絶。けっしてゆるがず乱れず絶妙のハーモニーを保ち、シューベルトの歌心も忘れない。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ヒーローズ

ヒーローズ

●ウォルトン:ヴィオラ協奏曲●グウェナエル・マリオ・グリジ:オン・ザ・リール
●プロコフィエフ:ロメオとジュリエット
アドリアン・ラ・マルカ(ヴィオラ)
クリスティアン・アルミンク(指揮)
リエージュ・フィル
(La Dolce Volta)LDV-75 オープン価格

裏方のヴィオラがヒーローとして輝くアルバム

 裏方的な役割を与えられ続けたヴィオラ。その楽器がヒーローとして輝くアルバム。20世紀には多くのヴィオラ協奏曲が書かれたが、先駆たるウォルトン作品。マルカの独奏は、スケールの大きい歌いっぷりで、終楽章の表情の変化も見事。グリジ作品は、アクション、ラヴシーンあり、そのまんまヴィオラが主役のハリウッド映画だ。《イタリアのハロルド》のオマージュも。そしてプロコフィエフ作品でのまばゆいばかりのヴィルトゥオーゾっぷり。