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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

エルガー:チェロ協奏曲

エルガー:チェロ協奏曲
ウォルトン:チェロ協奏曲

ゴーティエ・カピュソン(チェロ)
アントニオ・パッパーノ(指揮)
ロンドン交響楽団
(ワーナー)2173226483 オープン価格 ※輸入盤 Erato原盤

カピュソンをパッパーノが好サポート
イギリスの名作チェロ協奏曲2つの魅力満開

 このところエルガーの作品の優れたディスクのリリースが増えた印象がある。ゴーティエ・カピュソンは憂いを秘めた旋律を歌い上げ、そこに込められた情熱を明らかにし、エルガーの最高傑作の魅力を余すところなく描き出す。演奏機会が少ないウォルトン作品は、晩年の1956年の成立。多彩な表現を駆使して有機的な全体像を構築したこの作曲家ならではのもの。カピュソンはパッパーノの好サポートを得て、イギリス的な名作の魅力を明らかにする。

ブルックナー:交響曲第6番

ブルックナー:交響曲第6番

尾高忠明(指揮)
大阪フィルハーモニー交響楽団
(フォンテック) FOCD9910 3080円

作品そのものの魅力を引き出した尾高
オーケストラの能力の高さも出色

 尾高と大阪フィルによるブルックナー第6弾。このオーケストラは朝比奈隆のもと、ブルックナー演奏で極めて高い評価を確立したことは周知のとおり。尾高はその伝統を尊重しつつも、自らの作品像を提示してきた。過度の自己主張を加えることなく、作品そのものの魅力を明らかにした秀演。尾高の個性にもこの作品は適していると思われる。オーケストラのアンサンブル能力やトゥッティ、各奏者の音色の魅力は朝比奈時代とは隔世の感がある。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

ライオネル・ターティスに捧ぐ

ライオネル・ターティスに捧ぐ

●ボーエン:ヴィオラ・ソナタ第1番/ターティス:《日没》/
ブラームス:《愛の歌》op.71-5/クライスラー:《愛の悲しみ》/
フォーレ:《エレジー》/クラーク:ヴィオラ・ソナタ、ほか全20曲
ティモシー・リダウト(ヴィオラ)
フランク・デュプレ、ジェイムズ・ベイリウ(ピアノ)
(キングインターナショナル)HMM905376 オープン価格
※2CD、輸入盤、harmonia mundi原盤

英国のヴィオラ界の俊英
尊敬する先人の愛奏曲を集成

 1995年ロンドン生まれのヴィオラ奏者ティモシー・リダウトは、イギリスのヴィオラ奏者でこの楽器を独奏楽器に押し上げたライオネル・ターティスを敬愛し、彼の名を冠したコンクールで優勝を果たした。そのターティスが愛奏した作品を集めたアルバムは、凛(りん)としたみずみずしさに富む音色が満載のアルバム。「ヴィオラを人間の声のようにうたわせたい」と願うリダウトの低弦の響きが聴き手の心を癒し、活気づける。ヴィオラ界の俊英に期待!

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ドニゼッティ:歌劇《愛の妙薬》

ドニゼッティ:歌劇《愛の妙薬》

ナディーン・シエラ(アディーナ)、
リパレット・アヴェティシャン(ネモリーノ)、
ブリン・ターフェル(ドゥルカマーラ)、ほか
セスト・クアトリーニ(指揮)
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
ロラン・ペリー(演出、衣装)
(ナクソス)NYDX50370 5500円 ※OPUS ARTE原盤、日本語字幕・解説付き

シエラ、ターフェルら歌手も傑出
観る人皆を幸せにする傑作映像

 プレミエ上演から17年を経ても、なおも変わらず上演され続けている、ペリーのプロダクション(じつは2007年パリ・オペラ座、17年コヴェント・ガーデンと現地で2回観た)。23年上演の目玉は、同オペラ・デビューとなった人気ソプラノ、シエラ。溌剌(はつらつ)とした演技と安定した生き生きとした歌唱で舞台を牽引。ターフェルの巧すぎる?ドゥルカマーラも存在感十分。クアトリーニの指揮もテンポ良く、文句なく楽しい舞台。観る人皆を幸せにしてくれる大傑作映像だ。

ヴェルディ:歌劇《マクベス》

ヴェルディ:歌劇《マクベス》

ヴラジスラフ・スリムスキー(マクベス)、
アスミク・グリゴリアン(マクベス夫人)、
タレク・ナズミ(バンコー)、ジョナサン・テテルマン(マクダフ)、ほか
フィリップ・ジョルダン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&ウィーン国立歌劇場合唱団
クシシュトフ・ワルリコフスキ(演出)
(キングインターナショナル)
KKC9889 6700円〈BD〉、KKC9890 5000円〈DVD〉
※C-Major原盤、日本語字幕・解説付き

グリゴリアンがマクベス夫人を熱演
パゾリーニへのオマージュとして演出

 2023年ザルツブルク音楽祭で話題を呼んだワルリコフスキの舞台。パゾリーニの映画「オイディプス王」(日本名は、アポロンの地獄)へのオマージュとして演出。横に長い舞台を巧く使い、複数のシーンが同時進行。人気絶頂のグリゴリアンがマクベス夫人を熱演し、子を授かれない苦しみから残虐な殺人に手を染めていく女性の葛藤をドラマチックに歌いあげる。マクベス役のスリムスキーも巧く、他にナズミ、テテルマンと旬の歌手たちを揃えた贅沢な公演だ。