新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:交響曲第1番、ピアノ協奏曲第1番

ベートーヴェン:交響曲第1番、ピアノ協奏曲第1番

マルタ・アルゲリッチ(ピアノ) 小澤征爾(指揮) 水戸室内管弦楽団 (ユニバーサル)
UCCD-1452 3240円

小澤とアルゲリッチの相乗効果でスリリングな演奏

 小澤と水戸室内管によるベートーヴェン・シリーズの最新作。交響曲第1番は初期作品にふさわしい軽妙さも加味しながら小澤らしい 明晰めいせきな表現を貫き、この作曲家ならではの覇気もあわせて表出している。アルゲリッチをソリストに迎えたピアノ協奏曲第1番は、独奏との相乗効果も生まれて、よりスリリングな演奏が実現されている。8歳から弾き続けているという彼女のソロは雄弁そのもの。細やかなニュアンスにも富んだ演奏は絶品といえる。

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

テオドール・クルレンツィス(指揮)
ムジカ・エテルナ (ソニー)
SICC-30426 2808円

ロシア的なメランコリックな解釈とは一線を画した表現

 モーツァルトの「ダ・ポンテ3部作」の作品のイメージを変える画期的な解釈で驚かせたギリシャの鬼才クルレンツィスが、チャイコフスキーの交響曲で新境地を開拓している。いわゆるロシア的なメランコリックな解釈とは明らかに一線を画した表現はこの上なく新鮮。当初は違和感を覚えることもあるが、この指揮者の表現言語に慣れてくると説得力に満ちていることがわかる。ある種の現代的な感性を貫いたチャイコフスキーといえるだろう。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475、 ピアノ・ソナタ第14番、第13番

モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475、 ピアノ・ソナタ第14番、第13番

メナヘム・プレスラー(ピアノ) (キングインターナショナル)
LDV-34 オープン価格

90歳の録音はみずみずしい音色とリズムで至福の時を

 12月に94歳を迎えるメナヘム・プレスラーが、90歳のときにフィラルモニー・ド・パリのディレクターから勧められモーツァルトのピアノ・ソナタ全曲録音に着手。その第1弾が登場した。「いま私たちが踊っていられるのはモーツァルトのおかげです。彼がいなかったら歩かなければならなかったでしょうから」と解説書につづっているように、このモーツァルトはみずみずしい音色とゆったりした踊りのリズムに彩られ、至福の時を与えてくれる。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

「マリア・カラス 伝説の東京コンサート 1974年」

「マリア・カラス 伝説の東京コンサート 1974年」

●ビゼー:「カルメン」より「ハバネラ」/プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」、ほか全8曲 マリア・カラス(ソプラノ)、ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)、ロバート・サザーランド(ピアノ)(ワーナー)
WPXS-90005 (BD) 7020円
WPBS-90269(DVD) 6048円
※日本語字幕付き

世紀のディーヴァによる亡くなる3年前の日本公演の貴重な映像

 1977年9月16日、カラスはパリで突然の死を遂げた。死の3年前にはディ・ステファノと共に来日し、九州から北海道まで7回のコンサートを行った。そのうち10月19日のNHKホールでの貴重な映像が残された。1965年のコヴェントガーデン歌劇場の「トスカ」を最後に舞台から引退していたカラスの来日とあって、日本の聴衆は熱狂した。その興奮が伝わってくる熱い舞台。「ハバネラ」や「愛の妙薬」2重唱がカラスの歌唱を堪能させてくれる。当時の再現ブックレット付き。

ドビュッシー:歌劇「ペレアスとメリザンド」

ドビュッシー:歌劇「ペレアスとメリザンド」

マグダレーナ・コジェナー(メリザンド)、クリスティアン・ゲルハーヘル(ペレアス)、ジェラルド・フィンリー(ゴロー)、ベルナルダ・フィンク(ジュヌヴィエーブ)、他、サイモン・ラトル(指揮) ロンドン交響楽団&同合唱団 (キングインターナショナル)
LSO-0790 オープン価格 ※3SACD、LSO LIVE原盤、輸入盤

主役2人の成熟して落ち着いた男女の声と深い歌唱が素晴らしい

 いつかコジェナー主演で録音して欲しいと期待していたラトル指揮の「ペレアスとメリザンド」。ベルリン・フィルでも演奏したが、これはロンドン・バービカンでのライヴ。コジェナーはメゾなので、ペレアス役はバリトンのゲルハーヘルが歌った。成熟して落ち着いた男女の声と深い歌唱が素晴らしく、3幕の「私の長い髪は」と4幕の「庭園の泉」での愛の二重唱はこの上なく澄んで官能的だ。ラトルの指揮は繊細で、水彩画のように透明で色彩的。他のキャストも充実。