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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

マーラー:交響曲第5番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

エリアフ・インバル(指揮)
東京都交響楽団
(オクタヴィア)OVCL-00515 3360円

インバルの新マーラー・ツィクルスの中でも屈指の完成度

2013年1月に行われた横浜みなとみらいホール、東京芸術劇場、サントリーホールにおける演奏から編集されたものである。インバルのマーラーへの深い傾倒ぶりと都響のマーラー解釈の豊かな経験が相乗作用をもたらし、きわめて水準の高い演奏を実現。オーケストラのみせる積極的な音楽へのかかわりが大きな実を結んでいる。インバル=都響の「新マーラー・ツィクルス」のなかでも屈指の完成度を誇る演奏といえるだろう。

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、第2番

ドヴォルザーク:「ロマンス」、「マズレック」「ユーモレスク」
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
マンフレート・ホーネック(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
池場文美(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1641 2940円

歌う楽器の魅力を余すところなく示したドヴォルザーク

ヴァイオリン協奏曲はムターにとって初めての録音。作品が持つロマンティックな側面をありのままに表現するとともに、歌う楽器ヴァイオリンの魅力を余すところなく示している。ホーネックはそうしたムターのソロに触発され、共感豊かに作品の全体像を描き出す。「ロマンス」、「マズレック」でもオーケストラとの呼吸はぴったり。「ユーモレスク」は池場文美のピアノ伴奏による。これも細やかな味わいに富んでいる。

器楽・室内楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ショパン:バラード
リスト:トランスクリブションズ

ショパン:ポロネーズ集

●ショパン:バラード第1~4番●ショパン~リスト編:乙女の願い/いとしき娘●シューベルト~リスト編:ます●ワーグナー~リスト編:イゾルデの愛の死、他
河村尚子(ピアノ)
(ソニー)SICC-10191 3000円

自信がみなぎるバラードなど歌心あふれる1枚

国際舞台で活躍する河村尚子が、ショパンのバラードをリリース。長年弾き込んだ第3番と第4番に、新たな挑戦となる番1番と第2番を組み合わせ、全集録音を完成させた。これにリスト編曲によるショパン、シューベルト、ワーグナーの歌曲を加え、歌心あふれる1枚となった。彼女のバラードは物語性が印象的で、各曲に込められたショパンの意図を率直に表現。全編に自信がみなぎり、解釈、表現に説得力と洞察力が備わっている。

ショパン:練習曲集(全曲)

モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集

ショパン:12の練習曲Op.10/12の練習曲Op.25/3つの新練習曲遺作
イリヤ・ラシュコフスキー(ピアノ)
(ビクター)VICC-60869 3000円

詩的でおだやかな香りが立ちのぼってくるショパン

2012年の第8回浜松国際ピアノコンクールで優勝したロシア出身のイリヤ・ラシュコフスキーが、ショパンの練習曲集全27曲を録音。テクニックを前面に表す演奏ではなく、あくまでも表現力を重視した演奏で、各曲から詩的でおだやかな香りが立ちのぼってくる。ショパンはこれらを単なる指の練習ではなく、楽曲としての意味合いをもたせた。その意図に寄り添い、柔軟性に富む美しい響きで丁寧に弾き進める。「別れの曲」がエレガント。

オペラ・声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

カウフマン ヴェルディ・アルバム

ヴェルディ:「レクイエム」

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より「女心の歌」/歌劇「アイーダ」より「浄らかなアイーダ」、ほか全13曲
ヨナス・カウフマン(テノール)
ピエール・ジョルジョ・モランディ(指揮)
パルマ王立歌劇場管弦楽団&
ピアチェンツァ市立劇場合唱団
(ソニー)SICC-30143 2730円

歌い方がますます知的に真摯になって深みを帯び、独自の境地に

「イル・トロヴァトーレ」「運命の力」と今年に入り次々とヴェルディ作品にチャレンジしているカウフマン。13曲のうち11曲は初めて歌ったというが、今後歌うであろう「仮面舞踏会」や「オテロ」のアリアまで含まれていて興味深い。ダークで甘い声を生かし、歌い方はますます知的に 真摯 しんし になり深みを帯びて、独自の境地を開拓している。とくに「ルイザ・ミラー」などでのソット・ヴォーチェの歌い方はカウフマンぶしと呼びたいほど魅力的だ。