新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、第8番&第9番

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、第8番&第9番

●ショスタコーヴィチ:劇付随音楽「ハムレット」組曲
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ボストン交響楽団
(ユニバーサル)UCCG-1741/2(2CD) 3780円

客観的に表現しようとつとめ、音楽的にも申し分ない水準

 「スターリンの影の下でのショスタコーヴィチ」シリーズの第2弾。2015、16年のライヴ収録。前作の交響曲第10番とパッサカリア同様、作品を極めて客観的に表現しようとつとめ、音楽的に申し分ない水準に達している。この作曲家特有の 諧謔 かいぎゃく 性をありのままに描き出した第9番、スケールの大きさを実感させる第5番も秀逸。難解とされる第8番でも、作品の特性を手際よく解き明かし、名作であることを明らかにしている。オーケストラの技能も卓越している。

ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番

●ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
シャルル・ミュンシュ(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
(オクタヴィア)OVCL-00597 2916円

巨匠を迎えて全身全霊を傾け演奏する草創期のオーケストラ

 1962年のライヴ収録。これは、ミュンシュが単独で来日し、日本フィルを指揮した際の記録である。老巨匠を迎えて、草創期のオーケストラが全身全霊を傾けて演奏していることが実感される。第1楽章冒頭からテンションは極めて高く、全曲にわたって覇気に満ちあふれた音楽が続く。しかも、楽員たちの心意気が空回りすることなく、一つの壮大な構築物へと結晶しているところが素晴らしい。日本のオーケストラの歴史を語るうえで、忘れることができないディスクであろう。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番・第2番/ヴィオラ・ソナタ

ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番・第2番/ヴィオラ・ソナタ

ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
ツォルト=ティハメール・ヴィゾンタイ(ヴァイオリン)
マッツ・リドストレーム(チェロ)
アダ・マイニク(ヴィオラ)
(ユニバーサル)UCCD-1430 3024円

ショスタコーヴィチ生誕110年記念盤でトリビュート

 ヴラディーミル・アシュケナージと仲間たちによるショスタコーヴィチ生誕110年記念の新譜は、作曲家の人生をたどる意義深いアルバム。アシュケナージは1960年代にショスタコーヴィチのアパートでピアノ三重奏曲第2番を演奏したことがあるそうで、トリビュートの意味合いが含まれる。ショスタコーヴィチの若き時代の並外れた才能、親友ソレルチンスキーの想い出、「白鳥の歌」であるヴィオラ・ソナタと、いずれも心に響く作品群だ。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ベートーヴェン:「ミサ・ソレムニス」

ベートーヴェン:「ミサ・ソレムニス」

ベルナルダ・フィンク(メゾ・ソプラノ)、他
ニコラウス・ア―ノンクール(指揮)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
アルノルト・シェーンベルク合唱団
(ソニー)SICC30279 2808円 ※Blu-spec CD2

この3月に亡くなった名指揮者の“遺言”とも言うべき録音

 今年3月に亡くなったア―ノンクールが最後まで 対峙 たいじ したのがベートーヴェンだった。生涯最後に演奏したのも「ミサ・ソレムニス」。これは2015年7月に故郷のグラーツで演奏した同曲のライヴで、遺言ともいえる録音。鋭い眼光で常に革新に果敢に挑み続け、異端であり続けたアーノンクールだが、この最後の録音は底に激情を秘めつつも、 静謐 せいひつ さと哀しみが浮かび上がる。特に「サンクトゥス」から「アニュス・ディ」にかけての沈潜し浄化された美しさに心揺さぶられる。

現代曲

長木誠司◎音楽評論家

ヒンデミット:ホルン・ソナタ、他

ヒンデミット:ホルン・ソナタ、他

●ヒンデミット:ホルン・ソナタ/アルトホルン・ソナタ/ホルン協奏曲
●ケクラン:12のモノディー~ノクターン/モノディー
ラデク・バボラーク(ホルン)
菊池洋子(ピアノ)
(オクタヴィア)OVCC-00124 3456円(SACDハイブリッド)

バボラークが胸の空くような快演を聴かせる

 ヒンデミットが書いた2曲のホルン・ソナタ(ひとつはアルトホルン用)と1曲の協奏曲に、バボラークが胸の くような快演を聴かせる。楽想はヒンデミットらしい、行きつ戻りつの晦渋さを秘めるが、それをいささかも意識させない圧倒的なうまさである。ピアノの菊池洋子も柔剛兼ね備えた鮮烈な対声部を作り上げる。併収されるケクランの小曲《モノディ》2作は、その名の通り無伴奏のホルン独奏だが、小技大技が聴かれて楽しい。