岡本稔◎音楽評論家
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
フランクフルト放送交響楽団
(ソニー)SICC-10218 3024円
明晰な表現を徹底し、新たなブルックナー解釈の地平を切り拓く
パーヴォ・ヤルヴィとフランクフルト放送交響楽団によるブルックナー・シリーズの6枚目。ヤルヴィは9月にNHK交響楽団でもこの作品を指揮して名演を聴かせたが、ヤルヴィの解釈は当録音のほうにより明確に示されているように感じさせる。旧来の重厚長大なこの作曲家のイメージを覆し、 明晰 な表現を徹底し、新たなブルックナー解釈の地平を切り拓いているように思わせる。そこににじむロマン性はほかの作曲家の作品に類例を見ないものではなかろうか。
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
(ワーナー)WPCS-13549/50 3780円(2CD)
心の吐露ともいうべき熱き思いが凝縮
2005年秋から5年間、指のケガでヴァイオリンを弾くことができなくなり、それを乗り越えて11年6月に復活したチョン・キョンファが念願だったバッハの無伴奏作品をリリース。彼女はヴァイオリンが弾けなかった時期にバッハの楽譜を読み込み、作曲家の神髄に近づいたという。ここにはチョン・キョンファの心の吐露ともいうべき熱き思いが凝縮している。17年1月には来日公演でこのバッハを演奏する予定、熟成したバッハに期待!
●シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番/幻想小曲集
●ブラームス:F.A.E.ソナタ●バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第4番
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)&
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13551 2808円
お互いが相手の音楽に触発され高みを目指す
巨匠となったパールマンとアルゲリッチが再び共演し、ずっと一緒に演奏していたような親密的なデュオを聴かせている。冒頭に置かれたのは1998年にふたりがアメリカのサラトガ音楽祭で共演したシューマン。その後、2016年のパリ録音が続く。時間も場所もすべてを超えて天空に舞い上がる音楽は、聴き手に至福の時間を与え、とりわけバッハに心が奪われる。お互いが相手の音楽に触発され、より高みを目指していく濃密な空気がただよう。
石戸谷結子◎音楽評論家
クルト・エクヴィルツ(福音使家)、他
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
ウィーン・コンツェントゥスムジクス
ウィーン少年合唱団、他
(ワーナー)WPCS13507/8 2484円 ※2CD
ウィーン少年合唱団が女声パートを歌ったアーノンクール追悼盤
ア―ノンクール追悼のため再発された1965年の録音盤で、古楽器を使って初めて録音された「ヨハネ受難曲」。当時のア―ノンクールの研究に基づき、ソプラノやメゾ・ソプラノのパートはウィーン少年合唱団のメンバーが歌う。やわらかなフルートの音色とボーイソプラノの声がよく響き合い、 雅 な世界に誘ってくれる。バスのアリオーソもビオラ・ダ・ガンバとリュートの伴奏。グスタフ・レオンハルトのオルガンも優雅な響きで全体は生き生きした演奏。
長木誠司◎音楽評論家
●伊福部昭:「ラウダ・コンチェルタータ」/
ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲/「交響的エグログ」
/「リトミカ・オスティナータ」
山根一仁(ヴァイオリン)、野坂操壽(二十絃箏)
山田令子(ピアノ) 、高田みどり(マリンバ)
井上道義(指揮)、東京交響楽団
(キング)KICC-1342 3780円(10月26日発売予定)
4人のソリストの楽器の特性に合わせた彩りが聴き応え
7月10日ミューザ川崎での演奏会ライヴで、伊福部の協奏作品4曲が採り上げられている。同工異曲の伊福部作品も、ソロが入ると、楽器の特性に合わせた変化が彩りよく加わるので聴き応えがする。4人のソリストがそれぞれに素晴らしく、ことに《ラウダ・コンチェルタータ》での高田みどりのマリンバは実演よりもいっそう打の感触が心地よく捉えられて、ラヴェルの左手協奏曲のような伴奏に上手く映える。他の3曲も逸品。