新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2016

ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート2016

●ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲/ボレロ、プーランク:2台のピアノと管弦楽の協奏曲、ビゼー:「アルルの女」組曲より、他
カティア・ラベック&マリエル・ラベック(ピアノ)
セミョン・ビシュコフ(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-30281 2808円

ウィーンの初夏の風物詩、今年はフランス音楽がテーマ

2004年の初開催以来、毎年シェーンブルン宮殿の野外で開かれ、ウィーンの初夏の風物詩としてすっかり定着した感のあるサマーナイト・コンサートのライヴが早速発売された。今年のテーマはフランス音楽。ウィーン・フィルが初めて取り上げるプーランクの2台のピアノのための協奏曲(独奏、ラベック姉妹)を中心に、ビゼー、ベルリオーズ、ラヴェル、オッフェンバックの名旋律の数々が野外の空間に拡散していく。その様子が手に取るようにわかる録音も秀逸だ。

アーノンクール・エターナル・コレクション 古典~ロマン派ベスト

アーノンクール・エターナル・コレクション 古典~ロマン派ベスト

●モーツァルト:交響曲第40番~第1楽章、ハイドン:交響曲第100番「軍隊」~第4楽章、ベートーヴェン:交響曲第7番~第4楽章、メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」、他
ニコラウス・アーノンクール(指揮)、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、他
(ワーナー)WPCS-13531 1080円

アーノンクールの音楽への入門にふさわしいディスク

今年没したアーノンクールがテルデック・レーベルに残した おびただ しい録音のなかから、古典派からロマン派の作品のエッセンスともいうべき楽曲を集めたコンピレーション盤。ロイヤル・コンセルトヘボウ管、コンツェントゥス・ムジクス・ウィーン、ヨーロッパ室内管、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルとオーケストラは異なっても、作品の真の本質を見据え、鮮やかに表現するスタイルは変わらない。アーノンクールの音楽への入門者にふさわしい好企画のディスクといえるだろう。

ストラヴィンスキー:「春の祭典」

ストラヴィンスキー:「春の祭典」

●ドビュッシー:「遊戯」、シェーンベルク:5つの管弦楽曲、ヴァレーズ:「アルカナ」、ベルク:アルテンベルク歌曲集、他
ジョアンナ・ピータース(アルト)、他
ピエール・ブーレーズ(指揮)
フランス国立放送管弦楽団
(アルトゥス)ALT-343/4(2CD) 4093円

ブーレーズの鬼才の面目躍如たる出来を示した演奏

2つの演奏会の模様をライヴ収録。1963年の演奏会はストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」をメインとしたもの。ブーレーズは同じフランス国立放送管を指揮して同年にセッション録音を行い、同作品を広く知らしめるきっかけを作ったことで知られる(コンサートホール原盤)。このライヴでも解釈の骨格は変わることなく、精緻な音楽を聴かせている。ドビュッシー、ベルク、シェーンベルク、ヴァレーズを収録した1964年の演奏会も鬼才の面目躍如たる出来を示している。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ワーグナー:歌劇「トリスタンとイゾルデ」

ワーグナー:歌劇「トリスタンとイゾルデ」

スティーヴン・グールド(トリスタン)
エヴェリン・ヘルリツィウス(イゾルデ)
ゲオルク・ツェッペンフェルト(マルケ王)、ほか
クリスティアン・ティーレマン(指揮)
バイロイト祝祭管&合唱団
カタリーナ・ワーグナー(演出)
(DG)0735254〈BD〉、0735251〈DVD〉 オープン価格
※輸入盤、日本語字幕なし

斬新な解釈の演出と耽美的な音楽が混在するバイロイト・ライヴ

2015年バイロイト音楽祭でワーグナーの 曾孫 ひまご 、カタリーナにより新演出された舞台。1幕は無機的な建造物で、トリスタンとイゾルデは 媚薬 びやく を飲まずに手にこぼす。2幕は牢屋でマルケ王たちは上から 逢瀬 おうせ を監視。舞台から甘さや陶酔を排除し、2人は夢でしか愛を確かめ合うことができず、悲惨な恋人たちに最後まで救いはない。まさに斬新な解釈だが、なんとも つら い。しかし、ティーレマンの音楽だけは耽美的だ。トリスタン役のグールドが深い美声で好演。

イアン・ボストリッジ フランス歌曲集

イアン・ボストリッジ フランス歌曲集

●ドビュッシー:「艶なる宴」/プーランク:「ある日ある夜」/フォーレ:「優しい歌」、ほか全32曲
イアン・ボストリッジ(テノール)
ジュリアス・ドレイク(ピアノ)
ベルチャ四重奏団
(ワーナー)WPCS-13402 2160円

豊かなニュアンスとディクションで創り上げた独特な耽美世界

ボストリッジが歌うブリテンは素晴らしいが、彼はフランス歌曲も豊かなニュアンスとディクションで、独特な耽美世界を創り上げる。この録音は2002年から04年にかけて行われ、彼の声も若くみずみずしい。フォーレの有名な「ゆりかご」や「月の光」も聴きものだが、プーランクのドラマチックな歌の数々にも魅了されてしまう。フォーレのピアノと弦楽五重奏の伴奏つき連作歌曲「優しい歌」は、密やかな恋を描いた美しい曲で一番の聴きもの。