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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ホルスト:組曲《惑星》

ホルスト:組曲《惑星》

ダニエル・ハーディング(指揮)
バイエルン放送交響楽団
(ナクソス)NYCX-10394 2970円

世界屈指の高機能オケを縦横に生かした純粋な音楽的表現

 バイエルン放送響はハーディングが定期的に客演しているオーケストラの一つ。この2022年のライヴは両者がきわめて良好な関係にあることを示すもの。世界屈指の機能性を縦横に活かし、ホルストのスコアの隅々までありのままに表現。そこでは南ドイツの暖かみのある音色が独自の世界を形成している。芝居がかったところは微塵もなく、そこが好みの分かれるところかもしれないが、純粋な音楽的表現がもつ説得力はきわめて大きい。

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番

ラハフ・シャニ(指揮)
ロッテルダム・フィル
(ワーナー) 5419761966 オープン価格 ※輸入盤

注目の若い才能が独自のアプローチで迫る初のブルックナー録音

1989年、イスラエル生まれで指揮とピアノの両分野で活躍するシャニによる初のブルックナー。ロッテルダム・フィルとイスラエル・フィルのシェフを兼任し、2026年からはミュンヘン・フィルの首席に就任が決まっている、まさに飛ぶ鳥を落とさんばかりの若い才能が、それをいかんなく発揮。音楽の全体像を的確に把握し、みずみずしい抒情を漂わせながら豊かに歌わせるアブローチは他者からの借り物ではない独自のものである。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

PROKOFIEV STORY

PROKOFIEV STORY

プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1、2番、《ピーターと狼》
滝千春(ヴァイオリン)、沼沢淑音(ピアノ)
(MClassics)MYCL00027 3520円

緊迫感と集中力に富むソナタ、物語の世界に誘う《ピーターと狼》

 プロコフィエフを深く愛する滝千春が作曲家の没後70年を記念し、沼沢淑音(よしと)と組んでオール・プロコフィエフの録音を完成させた。ソナタ第1番と第2番に加え、《ピーターと狼》の編曲版を収録。これは根本雄伯(たけのり)が物語に沿い、各々のキャラクターを生かしたすばらしい編曲に仕上げた意欲作。ソナタでは緊迫感と集中力に富むデュオが、《ピーターと狼》では一気に開放され、物語のなかに迷い込む感覚。初めて耳にする音楽に心が高揚する。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

エミーリオ・デ・カヴァリエーリ:音楽劇《魂と肉体の劇》

エミーリオ・デ・カヴァリエーリ:音楽劇《魂と肉体の劇》

アネット・フリッチュ(魂)、ダニエル・シュムッツハルト(肉体)、
フローリアン・ベッシュ(忠告)、ほか
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)イル・ジャルディーノ・アルモニコ
ロバート・カーセン(演出)
(ナクソス)NYDX50284 4950円 ※BD、日本語字幕・解説付き

バロック時代の音楽劇を若者たちの成長劇に仕立て上げる

 オペラというジャンルが確立していなかった1600年に、教会で初演された音楽劇。カヴァリエーリのこの貴重な作品を、奇抜な才能と洗練されたセンスで、現代に蘇らせたのがカーセンだ。もとは教訓的で道徳的な内容の劇だが、カーセンは人生を旅するさまざまな国の若者たちによる成長劇に仕立て上げた。魂役のフリッチュ、肉体役のシュムッツハルト、忠告役のベッシュと歌手も充実。古楽集団を率いるアントニーニの溌剌(はつらつ)とした演奏も素晴らしく、哲学的でスペクタクルな舞台が感動的。

脇園彩「アモーレ」

脇園彩「アモーレ」

ジョルダーニ:「カロ・ミオ・ベン」/ベッリーニ:「追憶」/
ロッシーニ:「今の歌声は」~歌劇《セビリアの理髪師》/
同:「苦しみと涙のうちに生まれて」~歌劇《チェネレントラ》、ほか全11曲
脇園彩(メゾ・ソプラノ)
丸山貴大(ピアノ)
(BRAVO)BRAVO10011 3300円

イタリアを中心に躍進を続けるメゾによる待望の初アルバム

 イタリアを中心に、スカラ座やボローニャ歌劇場で躍進を続けるメゾ・ソプラノ、脇園(わきぞの)の初アルバム。ベッリーニなどの歌曲とこれまで得意としてきたロジーナのアリアや《チェネレントラ》の最後のアリアなどを歌っている。明瞭なディクションと超絶技巧のアジリタが得意技で、舞台では確固とした存在感がある。このアルバムでも音符の一つ一つに重みがあり、説得力のある歌い方。とくにリストの「ペトラルカのソネット」が秀逸。丸山貴大(たかひろ)のピアノも美しい。訳詞も脇園彩。