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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:交響曲第2番、第4番

1ベートーヴェン交響曲第2、4番

ケント・ナガノ(指揮)
モントリオール交響楽団
(ソニー)SICC-1713 2592円

ピリオド奏法を取り入れた交響曲全集の完結編

 ナガノとモントリオール交響楽団によるベートーヴェン交響曲全集の完結編にあたる。「自由を求める詩」という副題が付けられたアルバムには、第2番と第4番が収録されている。これまでの録音と同様に、対向配置にし、ヴィブラートを控え目にした弦楽器、硬いバチによる引き締まった響きのティンバニが特徴的な、ピリオド楽器の奏法を取り入れたアプローチによる。作品本来の たたず まいを活かした第2番、優美な第4番といずれも優れた演奏だ。

ロッシーニ序曲集

2ロッシーニ序曲集

●ロッシーニ:「セビリアの理髪師」序曲/「ウィリアム・テル」序曲/「チェネレントラ」序曲/「セミラーミデ」序曲、他
アントニオ・パッパーノ(指揮)
サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
(ワーナー)WPCS-12870
3240円

ロッシーニの魅力を満喫させてくれる1枚

 パッパーノとサンタ・チェチーリア国立アカデミーの来日記念盤。「絹のはしご」序曲の鮮烈な響きは、このコンビが今好調なのを実感させるもの。「セビリアの理髪師」序曲のアクセントの効いたサウンド、旋律を豊かに歌わせる才能についてもこの指揮者ならではのものがある。「ウィリアム・テル」序曲における劇的な感覚はパッパーノが劇場の監督を長年務めていることと無関係ではないだろう。ロッシーニの魅力を満喫させてくれる一枚だ。

ストラヴィンスキー:「春の祭典」、「ペトルーシュカ」

3ストラヴィンスキー春の祭典ペトルーシュカ

フランソワ=クサヴィエ・ロト(指揮)
レ・シエクル
(キングインターナショナル)KKC-5401
3086円

ピリオド楽器で100年前の初演の響きを再現

 2013年のライヴでピリオド楽器による演奏。「春の祭典」については100年前、1913年の初演の響きを再現しようという試み。1900年前後に作られた主にフランス製の楽器を使用し、楽譜についても初演の版が踏襲されている。大編成のピリオド楽器が織りなす、時として きしむような響きも駆使した音楽はきわめて興味深く、作品の原点を鮮やかなタッチで描き出した演奏といえる。「ペトルーシュカ」は1911年の初版。エラールのピアノが含蓄に富んだ響きを奏でる。

器楽・室内楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

アルゲリッチ&バレンボイム
デュオ

4アルゲリッチ&バレンボイムデュオ

●モーツァルト:2台のピアノのためのソナタニ長調
●シューベルト:創作主題による8つの変奏曲
●ストラヴィンスキー:「春の祭典」
(ユニバーサル)UCCG-1679 3024円

炎のようなデュオを展開、興奮が味わえる「春の祭典」

 アルゲリッチとバレンボイムの共演は、冒頭のモーツァルトから疾風怒濤どとうのごとく駆け抜ける両者のピアノに心が高揚する。シューベルトでは母国語で親密的な会話をしているような雰囲気。圧巻は「春の祭典」で、バレンボイムが要所をしっかり支え、アルゲリッチは自由奔放に闊達に飛び回る。即興性と創造性に満ちたピアノは熱情的、壮絶、さらに狂乱的な様相を呈し、炎のようなデュオを展開。ナマを聴いているような興奮が味わえる。

オペラ・声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

「ザ・ベスト・オブ・ヨナス・カウフマン」

5ザ・ベスト・オブ・ヨナス・カウフマン

●ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」から「私は望みを失った」ほか全20曲
ヨナス・カウフマン(テノール)
マルコ・アルミリャート(指揮)
プラハ・フィルハーモニー管弦楽団ほか
(ユニバーサル)UCCD-1406 2808円
※ SHM-CD、Decca原盤

来日は叶わなかったが、カウフマンの得意な曲をベスト盤で

 来日記念盤として企画された1枚。イタリア・フランス・オペラからドイツ・オペラ、さらにはリートまで、カウフマンの得意曲がぎっしり詰まっており、彼の多才ぶりを耳でしかと確かめることができる。全20曲のなかに、3曲の初収録曲が含まれているのが貴重。「ボエーム」や「椿姫」や「リゴレット」のアリアなど、もう舞台では演じないだろうという曲も輝かしい声で情熱を込めて歌っている。カウフマンはどの曲でも全力投球。それが彼の魅力だ。