岡本稔◎音楽評論家
●︎ワーグナー:「神々の黄昏」から“ジークフリートの葬送行進曲”
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1794 3024円
録音:2017年
初演したオーケストラの伝統を活かし清新な息吹をもたらす
2018年3月に行われたネルソンスのカペルマイスター就任披露演奏会のライヴ。ブルックナーの第7番はこのコンビによるシリーズ第3作に当たる。同作品を初演したオーケストラの伝統をフルに活かしつつ、そこに清新な息吹をもたらしている。過度に重厚な陥ることなく、抒情性を保ちながら旋律を豊かに歌わせたところが印象的。音色が美しく、含蓄に富んでいるところも心に残る。ワーグナーの「神々の黄昏」の「葬送行進曲」も極めて雄弁な演奏だ。
●グルック:「精霊の踊り」●ハイドン:ヴァイオリン協奏曲第4番●ミスリヴェチェク:ヴァイオリン協奏曲●モーツァルト:ヴァイオリン:協奏曲第3番/「トルコ行進曲」、他
ダニエル・ホープ(ヴァイオリン・指揮)
チューリヒ室内管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1793 3024円
録音:2017年
モーツァルトと同時代の作曲家の個性を描き分ける
「ジャーニー・トゥ・モーツァルト」と題されたこのアルバムには、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を中心に、同時代の作曲家の作品が収録されている。神童時代のこの協奏曲では、鮮烈なタッチで才気に富んだ音楽を描き出す。現代的ではあるとともに、典雅な味にも富む。グルック、ハイドン、ザロモンらの曲は、天才的な煌めきこそ乏しいが、いずれも個性的なもの。ホープが音楽監督を務めるチューリヒ室内管の演奏も切れ味鋭い。
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
●プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」から12章(2台ピアノのための編曲:セルゲイ・ババヤン)/「エフゲニー・オネーギン」「ハムレット」「スペードの女王」「戦争と平和」からのセレクション
マルタ・アルゲリッチ
セルゲイ・ババヤン(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1795 3024円
高度なテクニックとリズム表現の多彩さが炸裂
セルゲイ・ババヤンの演奏は聴き慣れた作品に新たな光を灯すものであり、心奥に響く。長年プロコフィエフの作品に徹底して向き合い、編曲を行い、マルタ・アルゲリッチに捧げたこれらの作品は、両者のプロコフィエフへの敬愛の念、研鑽、作品と自由に向き合う精神が凝縮したもの。冒頭から高度なテクニックとリズム表現の多彩さが炸裂、一瞬たりとも耳が離せない緊張感を孕んでいる。ヨーロッパの聴衆を熱狂させた演奏がついに登場。
●モーツァルト:ピアノ・ソナタ第3番/ピアノ・ソナタ第11番/ピアノ・ソナタ第17(16)番/ピアノ・ソナタ第9(8)番●ラフマニノフ:13の前奏曲作品32より第5曲/10の前奏曲作品23より第6曲
ルース・スレンチェンスカ(ピアノ)
(Liu MAER)LIU-1014/15 4320円(2CD)
20世紀の巨匠たちの偉業をいまに伝える92歳の演奏
1925年生まれのピアニスト、ルース・スレンチェンスカは2003年に初来日し、岡山を中心にリサイタルを行っていたが、今春、サントリーホールに登場した。ラフマニノフやコルトーに師事し、その時代の歴史と伝統を担う奏法の持ち主で、幅広いレパートリーを誇る。ここに聴くモーツァルトは2017年夏のライヴ(92歳)。はつらつとした、かろやかで深みのあるモーツァルトを紡ぐ。彼女のピアノは20世紀の巨匠たちの偉業を今に伝える。
石戸谷結子◎音楽評論家
インタビュー登場者:アントニオ・パッパーノ、ローランド・ビリャソン、クリスティーネ・オポライス、トーマス・ハンプソン、他
※特典映像:プッチーニ:歌劇「トスカ」第2幕
(キングインターナショナル)KKC-9310(BD)
6499円、KKC-9311(DVD) 4536円
※C MAJOR原盤、日本語字幕付き
1964年収録のカラスの「トスカ」と現役歌手らへのインタビュー
1964年、マリア・カラスはコヴェントガーデン歌劇場で「トスカ」に出演した。この公演の映像はないが、同時期にテレビ収録のための2幕のみの貴重な映像が残っている。この映像をもとに、パッパーノ、ビリャソン、オポライス、プロハスカ、またディレクターのブライアン・マクマスターなどが、カラスへの熱い想いをインタヴューで語っている。カラスの独特な声の魅力、演技力などに改めて感嘆させられる。ティート・ゴッビと共演した2幕の映像付き。