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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ニューイヤー・コンサート2020

マーラー:交響曲第3番

小泉和弘(指揮)
九州交響楽団 
清水華澄(アルト)
九響合唱団、RKB女声合唱団、他
(フォンテック)FOCD-9831/2 3850円

音色にも作品にふさわしい配慮がなされ、奥行きが深い音楽

 九州交響楽団の創立65周年記念演奏会のライヴ。先にリリースされた第8番「千人の交響曲」でも、鮮やかなタクトさばきによって公演を成功に導いた小泉が、ここでもモニュメンタルな作品への強みを遺憾なく発揮している。一昔ならば、日本のオーケストラがこうした作品に挑むときには、背伸びして演奏している印象があったものだが、ここにはそうした印象は微塵もない。音色にも作品にふさわしい配慮がなされ、音楽の奥行きはかなり深い。

コープランド:「ビリー・ザ・キッド」

コープランド:「ビリー・ザ・キッド」

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界から」
ジャナンドレア・ノセダ(指揮)
ワシントン・ナショナル交響楽団
(キングインターナショナル)NSO-0001 オープン価格(SACDハイブリッド)

派手な効果を狙わず作品に真正面から向かうノセダ

 大統領のオーケストラ、2016年にワシントン・ナショナル交響楽団の音楽監督に就任したノセダがカーネギー・ホールで行った演奏会のライヴ。大編成の「ビリー・ザ・キッド」では、トランペットのソロやパーカッションの活躍など、聴きどころは盛りたくさん。派手な効果を狙うことなく、音楽的な表現に徹しているところに好感が持てる。ドヴォルザークの「新世界から」でも、通俗名曲のイメージは一切なく、作品に真正面から向かっている。

エルガー

エルガー

●伝承曲:吹けよ風よ南風よ(カネー=メイソンによるソロ・チェロ編)●エルガー:エニグマ変奏曲より「ニムロッド」(Parkinによる6つのチェロ編)/チェロ協奏曲/ロマンス ニ短調(Parkinによるソロ・チェロ&弦楽五重奏編)、他
シェク・カネー=メイソン(チェロ)
サイモン・ラトル(指揮)
ロンドン交響楽団
(ユニバーサル)UCCD-1480 3080円

エルガーでは曲想を歌い、自らの主張も的確に行う

 シェク・カネー=メイソンはイギリス生まれの若手。デッカ専属第2弾に選んだのはエルガーのチェロ協奏曲を中心にした、歌う楽器チェロの魅力に富んだもの。デュ・プレの名盤を聴いて育ったという彼は、名手の解釈に影響を受けながらも、自らの主張も的確に行っている。エルガーならではの曲想をありのままに歌いだす。ラトル指揮のロンドン響はそうした彼の独奏を巧みに引き立てていく。併録されたエルガーやブロッホの小品も格調が高い。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30~32番

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30~32番

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-40096 3080円

後期のソナタを再録音し深遠さを浮き彫りに

 2014年に完成したマウリツィオ・ポリーニのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、1975年から39年の歳月をかけて録音した偉大な全集だった。彼はベートーヴェンの生誕250年の今年に向け、第30番、第31番、第32番を再録音、作品の内奥に迫る円熟味あふれる演奏を聴かせている。若い時代の完璧で精巧なピアニズムとは異なり、作曲家の真意にひたすら迫る奏法で、ベートーヴェンの後期のソナタの深遠さを浮き彫りにする。

イリュージョンズ

イリュージョンズ

●バラキレフ:東洋風幻想曲《イスラメイ》●ショパン(バラキレフ編曲):ピアノ協奏曲第1番より第2楽章「ロマンス」●リスト:リゴレット・パラフレーズ●ラフマニノフ(阪田知樹編曲):ヴォカリーズ(世界初録音)、他
阪田知樹(ピアノ)
(キングインターナショナル)KKC-062 オープン価格

20世紀初頭までのピアニストのような幻想的な演奏

 2016年のフランツ・リスト国際ピアノコンクール優勝の阪田知樹は、ピアノ好きの心を深くとらえる人である。新譜は舞曲を縦軸に編曲を横軸に配した彼ならではのこだわりの選曲。古い録音やオリジナル楽譜などを収集し、そこから多くを学んでいる阪田知樹は、この録音でも19世紀から20世紀初頭のピアニストのような幻想的で夢幻的な演奏を披露。聴き手はいつしか異次元の世界へと運ばれ、夢の世界でさまざまな幻影を抱いていく。