新譜CD&DVD一覧

過去の新譜CD&DVDをみる

新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
(NAXOS)NYCX10369 3300円

前回録音から約15年、含蓄に富んだ演奏がヤルヴィの円熟を示す

 次々と注目すべき新盤を送り出しているP.ヤルヴィ、今回は2019年より首席指揮者兼音楽監督の地位にあるチューリヒ・トーンハレ管とのブルックナー第7番である。フランクフルト放送響と入れた前回の録音は2006年のもの。両者を比べると、この指揮者の円熟が明白に聴き取れる。ブルックナーについては長い伝統を誇るトーンハレ管の持ち味をいかんなく活かした含蓄に富んだ演奏といえるだろう。響きの美しさは特筆に値する。

ニューイヤー・コンサート2023

ニューイヤー・コンサート2023

フランツ・ウェルザー=メスト(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC 2241-2 3190円(2CD)

ニューイヤー初登場がなんと15曲中14曲、巧みな選曲に驚く

 W=メストがニューイヤーに登壇するのはこれで3回目。オーストリア人であってもリンツ出身の彼について、ウィーンの伝統とは直接のつながりはないと意地悪くみる向きもあるだろうが、それをこの指揮者は巧みなプログラミングによってかわしている。アンコールを除く15曲のうち、ニューイヤー初登場はなんと14曲。まるで遺産を発掘するように、隠れた秀作を世に出す嗅覚には驚かされる。オーケストラがそれに磨きをかける。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

J.S.バッハ:クラヴィコード

J.S.バッハ:クラヴィコード

●バッハ:カプリッチョ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》/《半音階的幻想曲とフーガ》、ほか
アンドラーシュ・シフ(クラヴィコード)
(ユニバーサル)UCCE2100/01 5280円 ※2CD、ECM原盤

古楽器なのに不思議に新しい感覚が宿る自由な演奏

 アンドラーシュ・シフが、J.S.バッハがこよなく愛したクラヴィコードを用いて、インヴェンションやシンフォニアを録音した。彼は10歳のときにクラヴィコードを知り、以来この楽器を愛し、いまではフィレンツェとバーゼルの家に2台所有しているという。実に楽しそうに演奏している様子が音から伝わり、装飾音の入れ方もまるで遊んでいるよう。聴き慣れた作品に新風を吹き込み、古楽器なのに不思議に新しい感覚が宿る自由な演奏だ。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

リムスキー=コルサコフ:歌劇《クリスマス・イヴ》

リムスキー=コルサコフ:歌劇《クリスマス・イヴ》

ゲオルギー・ヴァシリエフ(ヴァクーラ)、
ユリア・ムジチェンコ(オクサーナ)ほか
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)フランクフルト
管弦楽団&合唱団
クリストフ・ロイ(演出)
(ナクソス)NYDX50256 4400円 ※BD、輸入盤・日本語
字幕・解説付き

知られざる作品をファンタジックで奇想天外な演出で

 ウクライナ生まれのゴーゴリの短編で、チャイコフスキーも同じ題材のオペラを作曲した。鍛冶屋の若者が恋した村一番の美人は、女帝の靴を持ってきたら結婚してあげると宣言。若者は悪魔や呪術師の助けを借り、女帝の靴を手に入れる。クリストフ・ロイのファンタジックで奇想天外な演出で、この知られざるオペラに光が当てられた。悪魔の他、魔女や大男や熊や謎のバレリーナが登場する、幻想的な舞台。美しいアリアや管弦楽が満載で、最後は心温まるクリスマス・ファンタジーだ。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

トゥーレセン:北極の音

トゥーレセン:北極の音

クリスチャン・クルクセン(指揮)、アークティック・フィルハーモニック
(2L)2L169SABD  Blu-ray Audio+SACDハイブリッド盤
オープン価格

世界最北端のオーケストラが奏でる「北極」シンフォニー

 ノルウェーの世界最北端のオーケストラが奏でる「北極圏」をテーマにした作品だ。第1楽章は、楽団員の呼吸音が作る見渡す限りの「白」。第2楽章には鳥の声、第4楽章には北方民族サーミの音楽も取り入れる。第5楽章の民俗音楽を奏でる弦楽アンサンブルが見事。第6楽章は細やかな蠢(うごめ)きの上にタケミツ・トーンが展開されじつに美しい。そして終楽章はブラスのお祭りで始まり、カタストロフィが到来。温暖化を示唆しているのだろう。