岡本稔◎音楽評論家
ジョン・ウィルソン(指揮)
シンフォニア・オヴ・ロンドン
シンフォニア・オヴ・ロンドン・コーラス、他
(東京エムプラス) RCHSA5327
3562円
ウィルソン自ら編んだ実用校訂版
名手揃いの手兵オケによる彫琢尽くされた名演
2020年に収録されたラヴェルの管弦楽曲集で高い評価を得たコンビによる続編。今回も楽譜に徹底的な見直しを加え、演奏にもっともふさわしい実用校訂版を自ら編み、それを使用して録音を行った。シンフォニア・オヴ・ロンドンはウィルソンがかつて映画音楽の分野で活躍していた臨時編成の団体の名前を復活させ、自らが理想とするオーケストラに磨き上げたもの。名手揃いの楽員による彫琢が尽くされた見事な演奏が実現された。
ラルス・フォークト(ピアノ、指揮)
パリ室内管弦楽団
(ナクソス) NYCX10441
2970円
パリ室内管音楽監督として活躍の矢先に急逝
作品の独自の魅力を伝えるフォークトの遺作
ドイツを代表するピアニストとしてもっとも精力的な活躍を行っていた矢先、51歳という若さで急逝したフォークトの遺作。2020年にパリ室内管弦楽団の音楽監督に就任した彼は、意欲的な選曲と一流のソリストの招聘によって大成功を収めた。このディスクはメンデルスゾーンの没後175年の2022年に向けて収録されたもの。ヴァイオリン協奏曲と比べ、取り上げられる機会の少ないピアノ協奏曲の独自の魅力を明らかにする名演だ。
伊熊よし子◎音楽評論家
ショパン:ノクターン ハ短調op.48-1/
ポロネーズ 変イ長調《英雄》/ポロネーズ 変イ長調《幻想》、ほか全9曲
遠藤郁子(ピアノ)
(カメラータ)CMCD28390 3080円
えもいわれぬ悲しみの空気が漂うライヴ
ポーランド語のジャルということばは悲哀、後悔、恨みなどの意味だそうだが、遠藤郁子の2015年のライヴ盤はえもいわれぬ悲しみの空気が全編にただよっている。解説書にはCD化された経緯とご本人の気持ちが綴られているが、音楽とともにひとりのピアニストの人生が浮かび上がり、心が締め付けられる。ショパンの心情に共感し、それを自身の指先から放つ。聴き手はそれを全身で受け止め、ショパンの神髄へと近づく。心が浄化する演奏だ。
石戸谷結子◎音楽評論家
サビーヌ・ドゥヴィエル(ラクメ)、ステファヌ・ドゥグー(ニーラカンタ)、
アンブロワジーヌ・ブレ(マリカ)、ほか
ラファエル・ピション(指揮)ピグマリオン
ロラン・ペリー(演出)
(ナクソス)NYDX50326 4950円
※BD、輸入盤、日本語字幕・解説付き
幻想的で夢のような舞台を創出
不思議の国インドを舞台に、神秘的な巫女(みこ)に魅了されたイギリス将校とラクメのはかない恋。演出(&衣装)のペリーは、幻想的な雰囲気による夢のような舞台を創りあげた。ラクメ役のドゥヴィエルは、透きとおるように澄んだ高音で、名アリア「鐘の歌」をやわらかに歌いあげた。ニーラカンタ役のドゥグーも、力強いオーラを放ち、存在感が充分。古楽集団ピグマリオンを率いる俊英ピションの指揮により、フランス・オペラの傑作の一つが、理想的な形で上演された。
フアン・ディエゴ・フローレス(ジャコモ5世/ウベルト)、
マイケル・スパイアーズ(ロドリーゴ)、サロメ・ジーチャ(エレナ)、ほか
ミケーレ・マリオッティ(指揮)
ボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団&合唱団
ダミアーノ・ミキエレット(演出)
(キングインターナショナル)KKC9841 6700円〈BD〉、
KKC9842 6700円〈DVD〉
※輸入盤、C-Major原盤、日本語字幕・
解説付き
フローレスほか理想的なキャストによる舞台
1月末に来日するフローレスの主演で、2016年ロッシーニ音楽祭のライヴ。フローレスは情熱的な恋をする不遇の国王を演じ、輝かしい超高音を駆使して力強い歌唱を披露する。まさに彼の絶頂期の貴重な記録だ。恋敵のロドリーゴ役は、超高音からバリトンの声域までカバーするスパイアーズ。エレナ役は美しい涼やかな声と可憐な歌い方、アジリタも巧いジーチャという理想的なキャスト。ミキエレットの演出はわび住いの老夫婦が昔を回想するという手法。マリオッティの指揮も情熱的だ。