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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー:交響曲第5番

ブルックナー:交響曲第5番

ラハフ・シャニ(指揮)
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
(ワーナー) 5419779201
オープン価格 ※輸入盤

みずみずしい感性を投影した解釈
風通しよく、際立つ旋律美と運動性

 ブルックナー生誕200年を迎え、近年、それに呼応するように楽曲解釈の幅の広がりが顕著になってきた。ラハフ・シャニの音楽の立ち位置は20世紀の解釈に従っているが、そこに彼のみずみずしい感性が投影されているのが大きな特徴だ。旧来の宗教性、精神性といった言葉を最重要とするのではなく、有機的に構成された作品の一要素とし、旋律の美しさやカンタービレも際立たせた。その結果、巨大な音楽に風通しのよさと旋律美、運動性がもたらされている。

ラスト・コンサート・イン・ポーランド

ラスト・コンサート・イン・ポーランド

ショパン:ピアノ協奏曲第2番、
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》、
ショパン:ポロネーズ第6番《英雄》
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
ヘンリク・チシ(指揮) ウッチ・フィルハーモニー管弦楽団
(東京エムプラス) XNIFCCD155/6
4650円 (2CD) ※Nifc原盤

引退前年のルービンシュタイン、故郷でのライヴ
協奏曲2曲を傑出した表現で弾き切る

 ルービンシュタインが目の疾患で引退したのは1976年。ここに収録されているのはその前年、彼の故郷であるポーランドのウッチにおけるライヴである。80歳代後半で協奏曲2曲を弾き切る体力も大したものだが、その表現が傑出しているのには驚かされる。青年ショパンのみずみずしい感性を共感ゆたかに引き出し、音楽の高揚を創り出す手腕は驚くべきものだ。ベートーヴェンでも作品の持ち味を最大限に描き切り、醍醐味を明らかにする。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

モーツァルト・ストーリーズ

モーツァルト・ストーリーズ

●モーツァルト:フルート・ソナタ(原曲:ヴァイオリン・ソナタ)
K.378、379、304、296
エマニュエル・パユ(フルート)、エリック・ル・サージュ(ピアノ)
(WARNER)5419789352 オープン価格
※輸入盤、ERATO原盤、日本語解説書・帯着き

パユ&ル・サージュの盟友デュオ
モーツァルトの夢の世界へと聴き手を誘う

 モーツァルトと同じ1月27日が誕生日で、モーツァルトをこよなく愛すエマニュエル・パユが、もっともフルートと合うヴァイオリン・ソナタを選び、楽譜に忠実な演奏を展開している。アーティキュレーション、フレージングなど、いずれもパユならではの自然で繊細でまろやかな奏法が全編を彩る。特筆すべきはエリック・ル・サージュの明快で情感豊かなピアニズム。盟友ふたりのデュオは、モーツァルトの夢の世界へと聴き手を自然にいざなう。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ドニゼッティ:歌劇《ラ・ファヴォリート》

ドニゼッティ:歌劇《ラ・ファヴォリート》

アンナリーザ・ストロッパ(レオノール)、
ハビエル・カマレナ(フェルナン)、
フロリアン・センペイ(アルフォンス11世)、ほか
リッカルド・フリッツァ(指揮)ドニゼッティ歌劇場管弦楽団&
合唱団、ほか
ヴァレンティナ・カラスコ(演出)
(ナクソス)NYDX50334 5500円
※BD、輸入盤、DYNAMIC原盤、日本語字幕・解説付き

オリジナルの仏語版《ラ・ファヴォリート》
一般公募でダンサー登用し、ダンス音楽も全曲演奏

 比較校訂版上演に力を入れているドニゼッティ音楽祭。これは2022年上演のオリジナルのフランス語版。ロイヤル・オペラ公演で来日するカマレナがフェルナン役を好演し、超高音を次々と披露している。レオノール役のストロッパ、アルフォンス11世役のセンペイと歌手も揃った。演出のカラスコ(女性)は、ベルガモ市から一般公募した70歳以上の女性たちをダンサーとして登用し、通常カットされるダンス音楽を 全曲演奏。音楽祭監督のフリッツァの指揮は、切れのいいドラマチックな演奏。

サン=サーンス:歌劇《デジャニール》

サン=サーンス:歌劇《デジャニール》

ケイト・アルドリッチ(デジャニール)、
ジュリアン・ドラン(エルキュール)、ほか
山田和樹(指揮)モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団
&モンテカルロ歌劇場合唱団
(ナクソス)NYCX10466 7260円
※輸入盤、Bru Zane原盤、 歌詞対訳・解説書付き

サン=サーンスの世界初録音の歌劇
山田の指揮のもと、歌唱陣も充実の貴重盤に

 2枚のCDと対訳が載った立派なブックレットが付いた珍しい作品。なんと世界初録音だという。作品は最初、劇の付随音楽として作曲され、後にオペラに改作された。5月末に来日したモンテカルロ・フィルと、初演地モンテカルロで録音された。指揮の山田和樹は、もしもタイトルが《ヘラクレスの死》とかであったなら上演の機会が増えたのに、と書いているが、ギリシャ悲劇によるストーリーも面白く、曲も壮大でドラマティック。歌手もアルドリッチやドランなどスター歌手が出演し、貴重な盤となった。