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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番、交響曲第7番

ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番、交響曲第7番

小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
(ユニバーサル)UCCD-40018 3300円

的確な様式感を伴った含蓄豊かな音楽

 小澤の生誕85年とベートーヴェンの生誕250年を祝すリリース。小澤が精力的な活動の第一線から退いてかなりの年月が経つが、その間に指揮した際の演奏の素晴らしさを実感させるディスク。2017年の序曲、16年の交響曲は、オーケストラの楽員すべてから絶大な敬意を集めていることを感じさせるもの。壮年期には音楽の勢いで聴衆を圧倒する感もあった小澤だが、ここではその力はそのままに的確な様式感を伴った含蓄豊かな音楽を聴かせる。

ザルツブルク音楽祭2019~フェアウェル・コンサート

ザルツブルク音楽祭2019~フェアウェル・コンサート

●ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
●ブルックナー:交響曲第7番
エマニュエル・アックス(ピアノ)
ベルナルト・ハイティンク(指揮)
ウィーン・フィル (キングインターナショナル)KKC-9579 4620円(DVD)

ハイティンクが刻んできた年輪の豊かさが明瞭に示される

 2019年8月31日、ザルツブルク音楽祭、祝祭大劇場で行われたハイティンクとウィーン・フィルによるフェアウェル・コンサートのライヴ映像。90歳の巨匠の身体は、弱っていないというと嘘になるが、いったん始まると鋭い眼光と的確なタクトさばきからもたらされる音楽の含蓄はこの上なく深い。アックスとの協奏曲における意義深い対話は格別、そしてブルックナーの壮大な交響曲ではこの音楽家の刻んできた年輪の豊かさが明瞭に示される。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲

ラン・ラン(ピアノ) (ユニバーサル)UCCG-1876/7 3520円

待望の録音は研究し、探求してきた成果が結実

 ラン・ランはインタビューのたびに「《ゴルトベルク変奏曲》を録音するのが夢だ」と語っていた。その夢が20年以上の時を経て実現。ここにはベルリン、イエス・キリスト教会のセッションとライブツィヒ、聖トーマス教会のライヴの2種の録音が収録されている。いずれもラン・ランが長年にわたって研究し、探求してきた成果が結実。主題の表現、変奏の妙味、自然な装飾音などすべてが味わい深く、心に響く。ピリオド楽器を学んだ術も全面開花。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

「パヴァロッティ 太陽のテノール」

「パヴァロッティ 太陽のテノール」

●プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」/ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」から「人知れぬ涙」、ほか全22曲 ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール) (ユニヴァーサル)UCCL-1217 2750円

公開された映画で使われたパヴァロッティの名唱

 9月4日公開の映画「パヴァロッティ 太陽のテノール」のサウンドトラック盤。製作したロン・ハワードは「アポロ13」などで知られる映画監督。2度目の妻はもちろん、元妻や3人の娘、元愛人などが想い出を語り、ドミンゴやカレーラス、ゲオルギューなどがエピソードを語る。多くの証言により、パヴァロッティの魅力的な人間像が浮かび上がる。その中で使われた20以上の曲(使われた個所も明記)が収められ、太陽のように明るい彼の声を偲ぶことができる。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

救済─コロナ禍のなかのバッハ

救済─コロナ禍のなかのバッハ

●バッハ:カンタータ第115番よりアリア「かかる時にもまた祈り求めよ」/カンタータ第25番より合唱「わがからだ健やかならず」/カンタータ第135番、他
アンナ・プロハスカ(ソプラノ)
ヴォルフガング・カチュナー(指揮)
ラウテン・カンパニー (Alpha)ALPHA-658 オープン価格

色彩的なアンサンブルに力強くも澄み切った声が映える

 ヘンデルを得意にして、最近はグラスの録音で話題にもなったラウテン・カンパニー。ジャケットでは全員黒マスク姿で登場。柔らかい響きで色彩的なアンサンブルに、プロハスカの力強くも澄み切った声が映える。バッハのカンタータからソプラノのためのアリア、コラール、合唱を収録。コロナ禍を背景にしながら、「癒し」で終わっていないところがいい。ボーナストラックでは、アルバム冒頭のアリアをジャズ版で披露。なんとも芸達者!