岡本稔◎音楽評論家
●ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「帝都はひとつ、ウィーンはひとつ」/ワルツ「奇抜」/ワルツ「美しく青きドナウ」●ワルトトイフェル:「スケーターズ・ワルツ」
●スッペ:「スペードの女王」序曲、他
グスターボ・ドゥダメル(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-2141/2(2CD) 3086円
若きドゥダメルのきらめくような感性が放つ魅力
史上最年少でニューイヤー・コンサートに登壇したドゥダメルが 溌剌 とした棒さばきによってウィーンの音楽から極めて新鮮な味わいを引き出しているのが印象的。自らの持ち味に合った軽快な作品を数多く取り入れることによって個性をアピール、そこではラテン的な感性も垣間見える。伝統的なニューイヤー・コンサートを好む聴衆にはいささか騒々しいかもしれないが、そのきらめくような感性が放つ魅力は他の指揮者からは得難いものである。
●ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3、5番
ヘルベルト・カラヤン(指揮)
アレクシス・ワイセンベルク(ピアノ)
バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)、他
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
日本プロ合唱団連合、東京芸術大学合唱団
(TOKYO FM)TFMC-0041/6(6CD) オープン価格
オーケストラと完全に一体となった全盛期のカラヤン
1977年の来日時に普門館で収録されたライヴ録音。筆者も収容人員4700人のこのホールの天井桟敷で聴いたが、カーテン越しに耳を傾けるような音響条件で満足できなかった記憶がある。この録音を聴くと、65歳の全盛期のカラヤンの極めて充実した演奏だったことがわかる。オーケストラと完全に一体になったベートーヴェンの魅力は筆舌に尽くしがたい。ライヴ特有の高揚感も特筆すべきだろう。ワイセンベルクの正確無比なピアノも魅力的だ。
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
●ショパン:舟歌/3つのマズルカ(第36~38番)/幻想ポロネーズ/2つの夜想曲(第17、18番)/3つのマズルカ(第39~41番)/3つのワルツ(第6「小犬」~8番)/マズルカ第49番
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1753 3024円
自然でおだやか、心にじっくりと浸透する演奏
ポリーニがショパンの後期の作品を録音した。「舟歌」、マズルカ、夜想曲、ワルツなどが並ぶ。とりわけ印象的なのが「幻想ポロネーズ」。これはショパンのすべての表現が必要とされる重要な作品で、ショパン・コンクールでも課題とされた。最近のポリーニの演奏は、若いころのコンピューターのように精確で完璧なるピアニズムとは趣を異とし、自然でおだやかで心にじっくりと浸透してくるもの。初来日時から聴き続けている私は、感慨深い。
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)
ダニエル・ゼヘック(ヴァイオリン)
ロエル・ディールティエンス(チェロ)
(キングインターナショナル)KKC-5671 4320円(2CD)
弦楽器とフォルテピアノの音の対話が馨しい歌を紡ぐ
シュタイアーのフォルテピアノはいつも聴き慣れた作品に新たな光を当てる演奏で、これまでいくつもの名演を生み出してきた。ゼペック、ティールティエンスと組んだシューベルトのピアノ三重奏曲も詩情あふれる美質と歌謡性に満ち、弦楽器とフォルテピアノの音の対話が 馨 しい歌を紡ぎ出している。特に緩徐楽章の主題の歌わせ方が心に響き、シューベルトの歌心が満喫できる。今回も、シュタイアーはすばらしい人選で名演を生み出した。
石戸谷結子◎音楽評論家
●ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より「清きアイーダ」/歌劇「オテロ」より「すでに夜もふけた」/ビゼー:歌劇「カルメン」より花の歌「おまえの投げたこの花を」/ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」より「冬の嵐は去り」、ほか全49曲
プラシド・ドミンゴ(テノール)、ほか
(ワーナー)WPCS-13582/4 4320円 ※3CD
オペラ界の至宝ドミンゴのテノール時代の名唱を集めたCD
76歳になっても第一線で活躍するドミンゴは、歌手だけでなく指揮者として、歌劇場総監督として、声楽コンクールの主宰者として若手の育成にも努めており、まさに世界オペラ界のゴッド・ファーザーだ。テノール時代のイタリア・オペラ、フランス・オペラを各1枚に収め、3枚目はドイツもの中心で、ベートーヴェン、ワーグナーのアリア、オペレッタ、サルスエラも収録。輝かしい高音とパワフルな歌い方、甘い声の「偉大な」ドミンゴに酔いしれるアルバム。