新譜CD&DVD一覧

過去の新譜CD&DVDをみる

新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー:交響曲第3番(1873年第1稿、ノヴァーク版)

ブルックナー:交響曲第3番(1873年第1稿、ノヴァーク版)

フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
(キングインターナショナル) KKC6772 3300円 ※Myrios 原盤

奇才ロトらしい版の選択
精密な表現で、曲の全体像を捉える

 ロトとギュルツェニヒ管によるブルックナー交響曲全曲シリーズの第3弾。初稿(1873年第1稿、ノヴァーク版)という楽譜の選択はいかにもこの鬼才らしい。ブルックナーの交響曲の中でもきわめて頻繁に改変が加えられ、第3稿まであるこの作品、初稿はブルックナーの様々なアイデアがいわば原形のまま盛り込まれていることで知られる。ロトは精密な表現でそうした音楽の細部まで描き出し、実験的な要素も大胆に取り入れられた全体像を明らかにする。

マーラー:交響曲第4番

マーラー:交響曲第4番

アデラ・ザハリア(ソプラノ)
佐渡裕(指揮)
トーンキュンストラー管弦楽団
(エイベックス) AVCL84156 2200円

ダイナミックで優美
指揮者とオーケストラの良好な関係を反映

 佐渡裕がトーンキュンストラー管弦楽団の首席指揮者に就任したのは2015年。近年ではウィーンの音楽シーンに欠かせない存在になった印象がある。このマーラーからも両者の良好な関係が実感させられる。佐渡ならではのダイナミックな表現を受け止めるとともに、ウィーンならではの優美さを併せ持つ表現スタイルでそれに肉付けしている。以前の佐渡の場合、時に表現が大味に傾くきらいがあったが、それはすっかり姿を消している。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

カツァリス シューベルト:即興曲集 作品90&142(全8曲)

カツァリス シューベルト:即興曲集 作品90&142(全8曲)

シプリアン・カツァリス(ピアノ)
(東京エムプラス)XP21059N 3300円 ※Piano 21原盤

流れる水のように透明感に富み、
クリアで叙情的なシューベルト

 超絶技巧をものともせず、どんな難度の高い箇所も実に自然にピアノをうたわせ、作品の歌心を前面に押し出す術で知られるカツァリスが、シューベルトの即興曲集を録音。全8曲がそれぞれ特有の歌を内包し、ともに旋律を口ずさみたくなる親密さに満ちている。カツァリスは気負いも誇張もまったくなく、すべてが流れる水のように透明感に富み、クリアで叙情的。ストレスにさらされた心に染み込む美しい音に、いつしか魂が救われる思い。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

バッハ300 ライプツィヒ・バッハ音楽祭2023

バッハ300 ライプツィヒ・バッハ音楽祭2023

バッハ:ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 BWV1060R/
カンタータ第78番《イエスよ、わが魂を》BWV78、ほか全14曲
ラン・ラン(ピアノ)、ダニエル・ホープ(ヴァイオリン)、
アルブレヒト・マイヤー(オーボエ)、
フランチェスカ・アスプロモンテ(ソプラノ)、
キャメロン・シャバジ(カウンターテナー)、ほか
(キングインターナショナル)765704 オープン価格 ※輸入盤、C-MAJOR原盤

バッハの記念年に開催された
華やかなガラ・コンサート

 2023年6月のライプツィヒ・バッハ音楽祭は、バッハがトーマス教会のカントルに就任して300年という記念の年だった。夕方から夜にかけて市庁舎前の広場で開催されたガラ・コンサートには、ラン・ランやヴァイオリンのホープ、オーボエのマイヤーなど豪華ソリストが出演。歌手ではソプラノのアスプロモンテやカウンターテナーのシャバジが出演し、有名カンタータや《ロ短調ミサ》などを演奏。カメラワークも良く、バッハを楽しみつつ堪能できる。

反映~管弦楽伴奏によるフランス歌曲集

反映~管弦楽伴奏によるフランス歌曲集

デュパルク:《旅へのいざない》/ラヴェル:ステファヌ・マラルメの3つの詩/ブリテン:4つのフランスの歌、ほか全10曲
サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)
ジャン=フランソワ・ヴェルディエ(指揮)
ヴィクトル・ユーゴー・フランシュ=コンテ管弦楽団
(ナクソス)ALPHA1019 オープン価格
※輸入盤、ALPHA原盤、日本語解説・歌詞付き

フランス歌曲の第一人者が
絶妙の声で聴き手を夢の世界へ

 ピオーは、フランス歌曲の第一人者。これまでユニークな名盤をリリースしてきたが、この「反映」も、プログラム構成が素晴らしい。デュパルク、ケクラン、ドビュッシー、ラヴェルなどフランス人作曲家の曲と、ブリテンのフランス語歌曲で入念に構成されたアルバム。淡い光に浮かびあがる幻想的な風景や心情が、美しい詩と音楽で彩られる。ピオーの声はまろやかな響きで、抑制の効いた歌い方。しばしの間、聴き手を夢の世界へ誘ってくれる。J・F・ヴェルディエの指揮も優雅。