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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブラームス:セレナード第1番、第2番

ブラームス:セレナード第1番、第2番

リッカルド・シャイー(指揮)
ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(ユニバーサル)UCCD-1416 2808円

演奏機会の少ない作品の真価を明らかに

 ブラームスの管弦楽作品に集中して取り組んでいるシャイーとライプチヒ・ゲヴァントハウス管が2つのセレナードを録音した。ハイドンの作品のエコーが聴こえる第1番では、そうした作品の特徴を的確に描出しながら、ブラームスならではの重厚なオーケストレーションの持ち味も表出する。モーツァルトやベートーヴェンの影響がより顕著な第2番では、陰影に富んだ響きが美しい。いずれも演奏機会の少ない作品の真価を明らかにするものだ。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

シューベルト:幻想曲集

シューベルト:幻想曲集

●シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想ソナタ」/ハンガリーのメロディ/4手連弾のための幻想曲/4手連弾の為のアレグロ「人生の嵐」
ダヴィッド・フレイ、ジャック・ルヴィエ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13054 2808円

作品に宿る歌心を幻想的な響きと知的な解釈で表現

 ダヴィッド・フレイはその端正な風貌からは想像できないほど、演奏は熱く深い。新譜のシューベルトでは、特有の抒情的で神秘的で清涼な美音が前面に押し出されているが、その奥にはほの暗い情熱と作曲家への強い共感が息づいている。4手連弾では、恩師ジャック・ルヴィエとの初共演が実現、息の合ったところを披露。シューベルトの作品に宿る歌心を幻想的な響きと知的な解釈で表現した、ピアノ好きの心をとらえる意欲作の誕生だ。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第4巻「超越」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第4巻「超越」

●ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第5番/第6番/第7番/第11番/第29番「ハンマークラヴィーア」
小菅優(ピアノ)
(ソニー)SICC-10216~7 4104円
(SACDハイブリッド)

深い思考と洞察力がみなぎる重量級の2枚組

 小菅優が2011年に着手したベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の第4作は、ついに「ハンマークラヴィーア」が登場。高い頂に挑む、全身全霊を傾けた緊迫感あふれる演奏が展開されている。これはまさにひとつの大きな「超越」を意味したアルバム。さらにここに聴く5曲のソナタには、小菅優のベートーヴェンに対する思いが明確に投影され、人間ベートーヴェンが浮き彫りに。彼女の特質である深い思考と洞察力がみなぎる重量級の2枚。

シューマン:変奏曲&幻想曲集

シューマン:変奏曲&幻想曲集

●シューマン:アベッグ変奏曲/幻想小曲集/3つの幻想小曲集/変奏曲(聖霊の変奏曲)
アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)
(キングインターナショナル)KKC-5420 3086円

人間シューベルトが浮き彫りになるヒューマンな演奏

 シュタイアーのフォルテピアノは、人間の語りかけのような温かなぬくもりに満ちている。1837年エラール製、エドウィン・ボイング・コレクションの楽器が、シュタイアーの完璧にコントロールされた奏法で生き生きと時代をよみがえらせ、シューマンの詩的でみずみずしい音楽が芳醇ほうじゅんな香りを放つ。作曲年代と様式の異なる作品を対比させ、シューマンの変遷を明快かつ深遠に表現。人間シューマンが浮き彫りになるヒューマンな演奏が心に響く。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

ヴィットリオ・グリゴーロ
「アヴェ・マリア」

ヴィットリオ・グリゴーロ「アヴェ・マリア」

●カッチーニ:アヴェ・マリア/シューベルト:アヴェ・マリア、ほか全18曲
ヴィットリオ・グリゴーロ(テノール)
ファビオ・チェローニ(指揮)
ローマ・シンフォニエッタ管
(ソニー)SICC-1775 2592円

幼少時に聖歌隊に所属していたグリゴーロが宗教曲を歌った一枚

 ローマで育ったグリゴーロは、子供の頃からシスティーナ礼拝堂の聖歌隊に所属し、付属学校で合唱を学んだという。このアルバムはそんな彼のルーツをたどった一枚。付属学校の神父さんたちが作曲した曲も多く含まれる。また慣れ親しんできたフランクやモーツァルトの宗教曲、シューベルトの「アヴェ・マリア」など思い出深い曲も歌っている。全曲のなかの白眉は、ヴェルディの「レクイエム」からのテノールのアリア「私は嘆く」で、非常にドラマティックだ。