新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

●ショスタコーヴィチ:歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」から間奏曲「パッサカリア」
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ボストン交響楽団 
(ユニバーサル)UCCG-1709 2808円

曲に込められた様々な屈折した感情を鮮やかに描き出す

 2014年にボストン交響楽団の音楽監督に就任したネルソンスのドイツ・グラモフォンへの初録音。15年のライヴだ。「スターリンの影の下でのショスタコーヴィチ」というシリーズの第1弾だという。「ムツェンスク郡のマクベス夫人」からの「パッサカリア」から、この名門オーケストラをすでに完全に掌握していることを感じさせる圧倒的な演奏。スターリンの没後すぐに作曲された作品である交響曲第10番では、ネルソンスは曲に込められた様々な屈折した感情を鮮やかに描き出す。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番

オットー・クレンペラー(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
(ワーナー)WPCS-13218 3240円(SACDハイブリッド)

有無を言わさぬ説得力を持ったクレンペラーの指揮

 ワーナーが連続してリリースしている「レジェンダリー」シリーズの一枚。LP時代初期の名演奏を最新のリマスターを施し、SACDハイブリッドの形で商品化したもの。ここに収められている2曲はともに1955年のモノラル録音。クレンペラーの壮年期の名残りをとどめたベートーヴェンは有無を言わさぬ説得力をもっている。恣意(しい的なところは微塵(みじんもなく、作品に真正面から取り組んだ解釈はいずれも比類ない水準にある。音質も良好で、往年の巨匠の芸風を堪能することができる。

音楽史・バロック

安田和信◎音楽評論家

テレマン:無伴奏オーボエのための12の幻想曲

テレマン:無伴奏オーボエのための12の幻想曲

●テレマン:無伴奏オーボエのための12の幻想曲第1~12番(原曲:無伴奏フルート)
トーマス・インデアミューレ(オーボエ)
〈2011年録音〉
(カメラータ)CMCD-28324 3024円

味わい深い演奏が流麗で自然な音楽に結実

 原曲のフルート版でも、本盤のようなオーボエ編曲でも、どちらもよく演奏される人気作品であるが、本盤はとくにインデアミューレの演奏が味わい深い。一つ一つの音型の意味を探るかのように、時に大胆な間をとり、音の長短の使い分けを繊細にする。とくに繰り返し時における装飾も新鮮である。こうした解釈が、しかし全く嫌みにならず、非常に流麗で自然な音楽へと結実しているところが個性であり、とにかく素晴らしい。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

「ライヴ・アット・ウィグモア・ホール」

「ライヴ・アット・ウィグモア・ホール」

●サイトリクイド:「夕べの歌」/S.フォスター:「夢路より」/ハロルド・アーレン:「オーバー・ザ・レインボウ」、ほか全19曲
ジョイス・ディドナート(メゾ・ソプラノ)
アントニオ・パッパーノ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13239/40 4104円

古典から現代の歌曲、米ミュージカルまで歌うメゾの面目躍如

 原題は「ジョイス&トニー」。2014年9月のコンサート・ライヴ。トニーことパッパーノがピアノを受け持ち、2人の白熱のコラボが繰り広げられる。曲はハイドンの知られざるカンタータからイタリアの知られざる現代作曲家の歌曲。そしてフォスターやジェローム・カーンなどアメリカのミュージカルまで大きな弧を描いて自由な飛翔(ひしょうを見せる。まさに変幻自在で柔軟な発想を持ったディドナートの面目躍如の楽しくも充実したアルバムだ。トニーのピアノが抜群の巧さ。

現代曲

長木誠司◎音楽評論家

ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲、交響曲第2番

ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲、交響曲第2番

クリスティアン・ツィメルマン(ピアノ)
サイモン・ラトル(指揮)
ベルリン・フィル
(ユニヴァーサル)UCCG-1704 2808円

ツィメルマンを一心同体でサポートするラトルとベルリン・フィル

 自らに献呈され、作曲者と録音した作品を、ツィメルマンが24年ぶりに再録音。ラトルとベルリン・フィルの名技ぶりが圧倒的で、絶妙なタッチでふわふわと世界を弾きまくるツィメルマンを、潮が満ち引くように一心同体でサポート。協奏曲では薄氷上を歩むようなベルリン・フィルだが、交響曲第2番では音の分厚い重なり合いを、しかしなんともクリアに響かせる。あまりに見通しのよい響きかつ演奏で拍子抜けだが、けだし名演だ。