新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブルックナー:交響曲第2番

ブルックナー:交響曲第2番

●R.シュトラウス:「町人貴族」組曲
リッカルド・ムーティ(指揮) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1784/5(2CD) 3780円 《録音:2016年》

旋律美にあふれ、重々しさとは無縁の独自の解釈

 2016年のザルツブルク音楽祭のライヴ。ムーティは若い頃からブルックナーに深い愛着を抱き、なかでも第2番を極めて高く評価してきたという。それは演奏に如実に反映されている。ウィーン・フィルのしなやかで奥行きのある音色を余すところなく活かし、重々しさとは無縁の独自の解釈を示している。旋律美にあふれているのも特徴的だ。R.シュトラウスの演奏機会の多くない組曲でも、オーケストラの持ち味を素直に引き出したアプローチが際立つ。

マーラー:亡き子をしのぶ歌

マーラー:亡き子をしのぶ歌

●R.シュトラウス「死と変容」
ブリギッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ) セルジュ・チェリビダッケ(指揮) ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
(ワーナー)WPCS-28125 3024円 《録音:1983&79年》

鬼才により尋常ではない緊張感に支配されたライヴ

 1983年と79年のライヴ。生涯にわたって、マーラーの交響曲を指揮しなかったチェリビダッケにとって、「亡き子をしのぶ歌」は極めて貴重な記録だ。ゆっくりとしたテンポ設定のもと、旋律を精妙に歌わせたオーケストラはこの指揮者ならでは。ファスベンダーの歌唱もそれにふさわしい細やかな味わいに富んだものである。「死と変容」でも遅い速度が採用されているが、全体を支配するのは尋常ではない緊張感で、鬼才の個性が発揮されている。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」

シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」

●シューベルト:ノットゥルノ(ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための)/セレナード(「白鳥の歌」第4曲、エルマン編曲ヴァイオリンとピアノ版)/アヴェ・マリア(「エレンの歌」3番、ハイフェッツ/ヴィルヘルミ編曲ヴァイオリンとピアノ版)
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ダニール・トリフォノフ(ピアノ)、マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)、ファユン・イ(ヴィオラ)ロマン・パトコロ(コントラバス)
(ユニバーサル)UCCG-1781 3024円

ムターと若手ヴィルトゥオーゾたちの室内楽を堪能

 アンネ=ゾフィー・ムターが「ムター・ヴィルトゥオージ」と題する若手弦楽器奏者との共演で「ます」を録音し、新たな方向性を見出している。ここにいま勢いに乗るピアニスト、ダニール・トリフォノフが加わり、天空にはばたくようなシューベルトを誕生させた。ムターの説得力のあるヴァイオリンにトリフォノフの躍動感あるピアノが融合し、上質で歌心あふれる「ノットゥルノ」と歌曲の編曲版も生み出され、室内楽の醍醐味が堪能できる。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ヴェルディ:歌劇「椿姫」

ヴェルディ:歌劇「椿姫」

マリア・カラス(ヴィオレッタ) アルフレード・クラウス(アルフレード) マリオ・セレーニ(ジェルモン)、ほか
フランコ・ギオーネ(指揮) リスボン・サン・カルロ劇場管&合唱団
(ワーナー)WPGS-10030 7128円 ※SACDシングルレイヤー

ドラマティックな熱演で圧倒、カラス絶頂期のリスボン・ライヴ

 カラス没後40周年を記念して、多くの貴重な録音が高音質のSACDで次々発売されている。この1958年、リスボンの歌劇場でのライヴは、相手役が若きクラウスであり、カラスの絶頂期の記録として、ファン垂涎すいぜんの貴重な録音だった。新盤ではカラス、クラウス、ジェルモン役のセレーニの声は雑音も少なく生々しい迫力で迫ってくる。公演のライヴだけに熱演でスリリング。カラスの第2幕二重唱は涙を誘うドラマティックな歌唱で、3幕の死の場面も感動的だ。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

R.シュトラウス:英雄の生涯、死と変容

R.シュトラウス:英雄の生涯、死と変容

ケント・ナガノ(指揮) エーテボリ交響楽団
(Farao)B-108092 オープン価格

弦楽器の卓抜した表現力で丁寧なバランスの作り方

 ナガノとエーテボリ響によるシュトラウス・シリーズ第2弾。バランスの作り方がとても丁寧。たとえば、「英雄の敵」の嘲笑ちょうしょうまでもが整然として妙に礼儀正しい。そして、弦楽器の卓抜した表現力は、「英雄の伴侶」後半部で、官能の波を厳かなまでにうねらせる。また、芝居じみて聴こえがちな終曲コーダは、木管を浮き立たせ光が降り注ぐような甘美さ。「死と変容」でも、死を表わすタムタムが鳴ってからコーダまでの神々しさに呆然ぼうぜん