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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ドヴォルザーク:交響曲第7番、第8番、第9番《新世界から》、序曲《自然と人生と愛》

ドヴォルザーク:交響曲第7番、第8番、第9番《新世界から》、
序曲《自然と人生と愛》

セミヨン・ビシュコフ(指揮)
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(キングインターナショナル)KKC6870/1 (2CD)
4500円 ※Pentatone原盤

ビシュコフとチェコ・フィル、共同作業の大きな成果
楽員の持つ様式感に指揮者の現代的感性を加味

 「チェコ音楽の年2024」にちなむリリース。2018年よりチェコ・フィルの音楽監督をつとめるビシュコフが、オーケストラとの共同作業の実りの大きさを実感させる録音である。楽員たちが持っている故国の大作曲家の音楽の様式感をありのままに活かしながら、彼は自らの主張も交えながら現代にふさわしいシャープな感性も反映させた音楽を構築。弦楽器群の透明な美感はこの団体固有のもの。それに音色に細やかな配慮がなされた管が和していく。

ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界から》、《アメリカ組曲》

ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界から》、《アメリカ組曲》

ナタリー・シュトゥッツマン(指揮)
アトランタ交響楽団
(Erato)2173226379
オープン価格 ※輸入盤

専業指揮者として鮮烈なデビュー盤!
行き届いたコントロール、歌心溢れる素晴らしい《新世界》

 シュトゥッツマンといえば声楽と並行して、名教師ヨルマ・パヌラのもとで本格的に指揮を学んだことでも知られる。これまで、自らの歌の伴奏や協奏曲の録音でその腕前を披露したことはあったが、専業指揮者としてのアルバムは今回が初となる。隅々までコントロールが行き届くとともに、歌心が満ち溢れた素晴らしい《新世界》だ。2022年から音楽監督をつとめるアトランタ響から、紛れもない彼女の音楽をひきだしている。《アメリカ組曲》も傾聴に値する。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

フランク、グリーグ ヴァイオリン・ソナタ集

フランク、グリーグ ヴァイオリン・ソナタ集

●フランク:ヴァイオリン・ソナタ
/ショール(プレトニョフ編):ヴァイオリン・ソナタ
/グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番、ほか
ダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)、ミハイル・プレトニョフ(ピアノ)
(WARNER)2173228580 3080円 ※輸入盤

敬愛するプレトニョフと共演
聴き手の想像力を喚起

 2017年、初来日のダニエル・ロザコヴィッチにインタビューした際「僕は7つの民族の血を受け継ぎ、4カ国語を話す」と語ったのが印象的だった。彼は著名な指揮者からオファーが絶えず、今回は敬愛するプレトニョフとの共演が実現、嬉々として演奏しているのが音から伝わる。聴き手の想像力を喚起する演奏で、ギトリスが使用していたエクス・サンシー(1713年製ストラディヴァリウス)が深く熱く響く。アレクセイ・ショールが貴重な録音。

ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)

●ショパン:2つの夜想曲第17&18番/
ポロネーズ第7番《幻想》/《舟歌》/
ピアノ・ソナタ第3番/3つのマズルカ第36~38番

ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)
(キングインターナショナル)KKC6876 3300円 ※PENTATONE原盤

ショパン後期の作品で見せる
内省的で円熟した手法と表現力

 ユリアンナ・アヴデーエワの演奏を初めて聴いたのは、2010年のショパン・コンクールの会場。そのときに演奏した《幻想ポロネーズ》が今回の新譜に収録されている。ショパンの後期の作品を集めたこのアルバムは、アヴデーエワがコンクール後にさらに研鑽を積み、内容を深めた曲ばかり。潔く凛として作品と対峙する姿勢は変わらず、そこに内省的で円熟した手法と表現力が加わった。とりわけ《舟歌》が心に染み入る美しさで、胸を打つ。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ドニゼッティ:歌劇《アルフレッド大王》

ドニゼッティ:歌劇《アルフレッド大王》

アントニーノ・シラグーザ(アルフレッド)、
ジルダ・フィウメ(アマーリア)、ほか
コッラード・ロヴァーリス(指揮)ドニゼッティ歌劇場管弦楽団、
ハンガリー放送合唱団
ステファノ・シモーネ・ピントル(演出)
(ナクソス)NYDX50362 4950円
※BD、輸入盤、DYNAMIC原盤、日本語字幕・解説付き

作曲家の知られざるオペラ上演
主役のシラグーザが大奮闘

 70ものオペラを作曲したというドニゼッティの知られざるオペラを、次々上演しているドニゼッティ歌劇場。これは1823年にナポリで初演された初期の作品で、実在のアルフレッド大王を題材に、敵と勇敢に戦う姿を描く。大王役のシラグーザ(10月に新国《夢遊病の女》で来日)が輝かしい高音を連発して大奮闘。曲は勇壮でテンポも良く、後の《連隊の娘》の旋律も使われ、聴きごたえ充分。妻役のソプラノ、フィウメも大健闘。コンサート形式を随所に取り入れた演出もしゃれている。