新譜CD&DVD一覧

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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

シューベルト:交響曲第8番「未完成」、第9番「ザ・グレイト」

シューベルト:交響曲第8番「未完成」、第9番「ザ・グレイト」

ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-45053/4 3520円

95歳になるブロムシュテットのみずみずしい音楽

 本年95歳の誕生日を迎えたブロムシュテットへの事実上のグラモフォンへのデビュー盤。1998年から2005年までゲヴァントハウス管のカペルマイスターをつとめたブロムシュテットは、楽員からの全幅の信頼を得ていることが実感される。高齢の指揮者の音楽で思い浮かべがちな枯淡という表現からは遠く、この上なく含蓄に富み、みずみずしさと生命力をあわせ持つ音楽に驚嘆させられる。音色や作品の様式に対する配慮も怠りない。

ストラヴィンスキー:3大バレエ音楽

ストラヴィンスキー:3大バレエ音楽

●ストラヴィンスキー:「火の鳥」「ペトルーシュカ」(1947年改訂版)「春の祭典」
サイモン・ラトル(指揮)ロンドン交響楽団
(LSO/キングインターナショナル)KKC-6509 4500円
(2SACDハイブリッド) 

アンサンブルと音色、解釈の完成度の高さに驚く

 2017年9月、ラトルがロンドン響の音楽監督就任記念演奏会で披露したストラヴィンスキーのライヴ盤。驚くべきはその完璧ともいえるアンサンブルと音色、解釈の完成度の高さだ。「春の祭典」については19歳の時から指揮してきたラトルにとって、すっかり手の内に入った作品であるのは間違いない。しかし、生演奏で超級の名演を実現したのには敬服させられる。楽員たちにもベルリン・フィルへの対抗意識があったのは間違いない。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

J.S.バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻&第2巻

J.S.バッハ:平均律クラヴィア曲集第1巻&第2巻

山根弥生子(ピアノ)
(コジマ録音)ALCD-9230 4950円(4CD) 

生き方を映し出す熟成した人間味あふれるバッハ

 1970年代からベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏をはじめ幅広い作品の録音を行ってきた山根弥生子が、J.S.バッハの「平均律クラヴィア曲集第1巻&第2巻」を完成させた。長年に渡る彼女の生き方を映し出す熟成した人間味あふれるバッハで、ひとつひとつの音が生きた音楽として存在する。昔からテンポが速いといわれ続けてきたが、ここでも「これが私のバッハよ」と自信をもって表現。その潔さが聴き手の心に浸透し、活力を与える。

斎藤雅広 ザ・ヴィルトゥオーゾ!

斎藤雅広 ザ・ヴィルトゥオーゾ!

●ショパン:バラード第4番●スクリャービン:ピアノ・ソナタ第4番
●フォーレ:ヴァルス・カプリス第4番●シューマン:6つの間奏曲
●ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第15番
斎藤雅広(ピアノ)
(ナミ・レコード)WWCC-7968 2750円 

急逝した斎藤雅広の人生最後の貴重な録音

 斎藤雅広は爽快なテクニックを披露する名手として知られたが、近年はそこに成熟した表現力と情感豊かな響きを加味した演奏を聴かせた。その彼が2021年8月8日に急逝してから1年を迎え、人生の最後に残してくれた貴重な録音が登場した。これらは常に前を向いてまっすぐに歩みを進め、ピアノという親友を得て音楽の楽しさを人々に伝える伝道師の役割を貫いた、斎藤雅広の生きざまが映し出されている。涙をこらえて聴く記念盤だ。

新譜CD輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ワンス・アポン・ア・タイム

ワンス・アポン・ア・タイム

●リスト:オーベルマンの谷/風景/マゼッパ/回想/雪あらし/ピアノ・ソナタ ロ短調
ミシェル・ダルベルト(ピアノ)
(La Dolce Volta)LDV-105 オープン価格 

巨匠が弾く精妙にして巨大なリスト

 ダルベルトは1990年代にリスト作品集をDENONに録音している。青年らしさを留めたような精巧な演奏だったが、30年後の今回のアルバムは、精妙さが冴える。ベヒシュタインから放たれる音の一つひとつの響きを確かめるような運びながら、どこか少年のようなみずみずしさも顔をのぞかす。さらに、その音楽は一切の躊躇ちゅうちょや迷妄なく、持ち前のダイナミクスさと相まって、「オーベルマンの谷」やソナタでは巨大なクライマックスを築く。