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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ニールセン:交響曲全集(交響曲第1番~第6番)

ニールセン:交響曲全集(交響曲第1番~第6番)

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
フランクフルト放送交響楽団(hr響)
(ソニー)SICC-30257 5184円

高い機能性を誇る楽団で作風の変遷を余すところなく表現

 昨年、生誕150周年を迎えたデンマークの作曲家ニールセンの交響曲全集。ヤルヴィがフランクフルト放送響(hr響)の首席指揮者を務めていた2009年から13年にかけての録音である。ヤルヴィはレコーディングにあたって、作品に最もふさわしいオーケストラを起用する指揮者。ここでは高い機能性を誇るドイツの放送響との共演だ。それによって音楽の書法、作風の変遷を余すところなく表現。20世紀でもっとも注目すべき交響曲作家の一人であることを明らかにする。

ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート2016

ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート2016

●シュトルツ:国連行進曲/ヨーゼフ・シュトラウス:「天体の音楽」/シュトラウス2世:「皇帝円舞曲」、「ヴェネツィアの一夜」序曲、「狩り」、「観光列車」、「美しく青きドナウ」、他
マリス・ヤンソンス(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-1974/5 3086円

きわめて音楽的な表現によって聴く者を魅了するヤンソンス

 マリス・ヤンソンスがニューイヤー・コンサートを指揮するのは、4年ぶり3度目。新年の恒例行事だが、毎年、演目に工夫が凝らされ、聴く者を全く飽きさせない。今年の冒頭を飾ったのはローベルト・シュトルツの「国連行進曲」。国連第1回総会から70年を記念した選曲だ。また、エドゥアルト・シュトラウスの没後100年にもあたるため、その作品も2曲加えられている。おなじみの名曲からこうした珍しい作品まで、ヤンソンスはきわめて音楽的な表現によって聴く者を魅了する。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

亡き王女のためのパヴァーヌ~ラヴェル:ピアノ・ソロ作品集

亡き王女のためのパヴァーヌ~ラヴェル:ピアノ・ソロ作品集

●ラヴェル:水の戯れ/シャブリエ風に/鏡/古風なメヌエット/グロテスクなセレナード/ボロディン風に/高雅で感傷的なワルツ/夜のガスパール、他
ベルトラン・シャマユ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13338/9 3780円(2枚組)

ラヴェル好きの心を刺激する表情豊かな演奏

 子ども時代からラヴェルに魅了され、研究を重ね、弾き続けてきたベルトラン・シャマユが満を持してピアノ・ソロ作品集を録音。「ラヴェルの録音は原点に立ち帰り、前進するための自然な一段階」と解説書で語っている。シャマユのラヴェルは、いずれの作品にも繊細な響きと りん としたテンポ、自由 かつ 達な表情が見受けられ、ラヴェル好きの心を刺激する。もっとも表情豊かなのが「夜のガスパール」。最高傑作と称される作品へのアプローチに注目。

ザ・クラリノッツ

ザ・クラリノッツ

●メンデルスゾーン:コンツェルトシュテュック第1番●モーツァルト:風は穏やかに●ドップラー:歌劇「リゴレット」の主題による幻想曲●ロッシーニ:踊り、他
ザ・クラリノッツ(エルンスト、ダニエル&アンドレアス・オッテンザマー)
ウィーン・ヴィルトゥオーゼン、他
(ユニバーサル)UCCG-1725 2700円

ウィーン、ベルリンの名手親子3人がクラリネットで魅惑

 ウィーン・フィル首席の父エルンストと兄ダニエル、ベルリン・フィル首席の弟アンドレアスの3人がクラリネットの妙技を披露するザ・クラリノッツ。彼らの新譜はオペラからバレエ、ダンスなど舞曲に根差す作品が選ばれ、3人3様の超絶技巧と表現力を爆発させている。何を演奏しても家族ならではの音楽言語の融合が見られ、嬉々とした響きが 横溢 おういつ 。ウィーンの伝統が息づき、歌謡的な精神がみなぎり、3人が束になって聴き手を魅惑する。

音楽史・バロック

安田和信◎音楽評論家

システィーナ礼拝堂の音楽

システィーナ礼拝堂の音楽

●パレストリーナ:「スターバト・マーテル」/「おお、祝福され、賛美される、栄光の三位一体よ」●アレグリ:「ミゼレーレ」●モラレス:「ヤコブの嘆き」●ジョスカン・デ・プレ:「アヴェ・マリア」、他
アンドルー・パロット(指揮)、
タヴァナー・コンソート
〈1986年録音〉
(ワーナー)WPCS-16240 1512円

アレグリ「ミゼレーレ」などヴァティカンで奏でられた音楽

 ヴァティカンの名高い礼拝堂で奏でられたであろう音楽を再現した、音楽史らしい一枚が復活(録音場所はロンドンなのだけど)。礼拝堂のメンバーだった4人の音楽家が取り上げられているが、パレストリーナの《スターバト・マーテル》、アレグリの擬古的な《ミゼレーレ》が本盤の白眉。イギリス古楽の特徴とも言える透明性の高い声の調和は、テキストの劇的な表出とは無縁だが、作品の精緻な構造を見事に映し出してくれる。