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新譜CD&DVD

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

クリスティアン・ツィメルマン(ピアノ)サイモン・ラトル(指揮)
ロンドン交響楽団
(ユニバーサル)UCCG―45005/7 5500円

ちりばめられた細やかなニュアンスの豊かさは舌をまくばかり

 2020年のベートーヴェンの生誕250周年を祝す録音。ツィメルマンにとって、バーンスタイン指揮のウィーン・フィルとの全集以来、ほぼ30年ぶりの録音となる。前回の録音も極めて高い水準のものだったが、この新盤ではピアノという楽器の表現力を極めつくされていると言える。ちりばめられた細やかなニュアンスの豊かさは舌を巻くばかり。ラトルの指揮するロンドン響がそうしたソロと見事な対話を交わしていく。現代的な感覚もあわせもつ。

ドヴォルザーク:交響曲第6番、第9番「新世界から」

ドヴォルザーク:交響曲第6番、第9番「新世界から」

ヴァーツラフ・スメターチェク(指揮)プラハ交響楽団、
プラハ放送交響楽団
(Altus)ALT-482 オープン価格(2CD)

通俗名曲の要素は微塵もなく、高潔な表現を貫く第9番

 チェコの名匠、スメターチェクの代表的録音が連続してリリースされている。収められているのは 十八番 おはこ ともいうべきドヴォルザーク。第6番は30年間首席指揮者をつとめたプラハ響との1975年の録音。民族性をいかんなく発揮させながら、作品の魅力をありのままに表現した演奏である。端正な表現のなかに高揚感を織り交ぜたところがこの指揮者らしい。第9番はプラハ放送響との1974年の記録。通俗名曲の要素は 微塵 みじん もなく、高潔な表現を貫く。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」、「エロイカ」の主題による15の変奏曲とフーガ

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」、「エロイカ」の主題による15の変奏曲とフーガ

ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)
(PentaTone/キングインターナショナル)
PTC―5186724 オープン価格

豊かな想像力と表現力を備えたエマールの演奏

 フランスの名ピアニスト、ピエール=ロラン・エマールが2020年の来日公演で披露する予定だった(コロナ禍で公演中止)ベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」を録音した。カップリングは《エロイカ》変奏曲。いずれも力強さと創造性に満ち、エマールならではの豊かな想像力と表現力を備えた演奏。テンポがむやみに速くなく、じっくりとベートーヴェンの魂に迫る。ひとつの作品に長い時間をかけて対 する彼の特質が現れた意欲作。

現代曲

長木誠司◎音楽評論家

ブーレーズ:ピアノ作品全集

ブーレーズ:ピアノ作品全集

●ブーレーズ:12のノタシオン(1945)/ピアノ・ソナタ第1番(1946)/
ピアノ・ソナタ第2番(1946-48) /構造 第1集(1951-52)/
アンシーズ(1994/2001)/天体暦の1ページ(2005)、他
ミヒャエル・ヴェンデベルク、ニコラス・ホッジズ(ピアノ)
(Bastille Musique)BM―016 オープン価格(2CD)

どの曲も息もつかずに一気に聴かせてしまう

 1、2台用のすべてのピアノ作品を網羅した初のアルバム。演奏は晩年の作曲者像を通して見返してみたような感触で、音楽の作り方・感じ方が非常に柔軟。緩急の自在なせめぎあい、フレーズ同士の間合いの取り方、 屹立 きつりつ する打鍵のけっして硬質すぎぬ輝きが与える感覚的快、常に見通しよい構造感によって、どの曲も息もつかせずに一気に聴かせてしまう迫真性がある。セリー的に「厳格」な《ストリュクテュール第1集》すら味わい深い。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ハイドン・ニュース―同時代作曲家による室内楽編曲集

ハイドン・ニュース―同時代作曲家による室内楽編曲集

●ハイドン:交響曲第53番「帝国」に基づく「愛しているとは言わないわ」/交響曲第60番「うかつ者」(室内楽版)/ディヴェルティメント ト長調(室内楽版)
ハンナ・モリソン(ソプラノ),ミヒャエル・デュッカー(リュート&指揮),ヌオーヴォ・アスペット
(Prospero Classical)PROSP―0017 オープン価格

こんな編曲が同時代にあったのかと瞠目の1枚

交響曲の楽章を歌詞を付けて、ソプラノとリュートで歌わせたり、いかにも現代の気の利いたアレンジに聴こえてしまうが、じつはハイドンと同時代の編曲をリュート奏者デュッカーがアーカイヴから探し出してきたもの。「うかつ者」交響曲は、ハープ、ダルシマー、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの珍妙すぎる編成。シンフォニーたる気取りが消え、サロンか民族音楽のような愉悦感だ。もちろん終楽章のチューニング騒ぎもキチンと再現。