モノオペラ「ガラシャ」を国立能楽堂で上演
難民を助ける会のチャリティコンサート
「新しい作品なので自由に見てほしい」
自らプロデュース、主演するモノオペラ「ガラシャ」を来年1月29日(土)に国立能楽堂で公演する。「難民を助ける会」のチャリティコンサートで、コンサートの純益は難民支援などに充てられる。
「ガラシャ」は、アルゼンチンで育ちフランスで活躍する作曲家エステバン・ベンセクリが、田中彩子のために書き、昨年11月、世界文化遺産でもある京都の上賀茂神社で世界初演された。今回は能楽堂バージョンとして公演される。
「昨年、ヨーロッパに住んだ年数と日本で育った年数が同じになりました。何かチャレンジしたいと思ったのです。女の人をテーマに、どこでも上演できる小さなオペラを作ろうと考えました。日本だけじゃなく、ヨーロッパでも国際的に理解しやすいものをと、細川ガラシャを思いつきました」
ガラシャは、明智光秀の三女で細川忠興に嫁いだ。キリシタン大名の高山右近の話からキリスト教に興味を持ち、洗礼を受ける。ガラシャは洗礼名(ラテン語で神の恵みの意)。関ケ原の戦いで石田三成に屋敷を囲まれたため自害、家老の小笠原秀清(少斎)が介錯した。
モノオペラ「ガラシャ」より
「作曲のエステバン・ベンセクリは私の声をよく知っています。能のことは知らないから日本の作曲家がいいんじゃない、と言われましたが、あなたの見た日本を音にしてほしい、と頼みました。脚本は能をイメージしたものを、とガラシャについての本を書かれていて、京丹後市に住んでいる横島昇さんに直接電話をして頼みました」
この作品は、小笠原少斎が自害する最後の5分間が描かれ、田中の歌は、主にヴォカリーズで歌われる。これに能楽師2人とカルテットの演奏が加わる。
「ガラシャの話は当時、ヨーロッパにも伝えられました。重い話ですし、初演はホールではなく神聖な場所でしたいと思い、上賀茂神社でできました。あまり聴きやすくない現代音楽で、一般受けはしないかと思っていましたが、いろいろな方から反響がありました。今回のバージョンは能に近いものになります」
田中の声は、ソプラノの中でも少ない、速いフレーズに華やかな装飾を施すコロラトゥーラが魅力。当日はこの声を生かした舞台を聴くことができるだろう。
「出来立てほやほやの新しい作品なので自由に見てください。現代音楽と能が一緒になった公演はあまりないと思います。難しいことは考えないで楽しんでほしいと思います」
京都府出身。18歳でウィーンに留学。 22歳のとき、スイス・ベルン州立歌劇場にて「フィガロの結婚」でソリスト·デビュー。翌年、 国際ベルヴェデーレ·オペラ·オペレッタ·コンクールにてオーストリア代表として本選出場。オーストリア政府公認スポンサー公演「魔笛」夜の女王役を2012年から3年間出演。14/15年、「カルミナ・ブラーナ」のソリストとして、ウィーン·コンツェルトハウスにて大成功。ロイヤル・フィルの定期コンサートでイギリス・デビュー。19年 Newsweek誌 「世界が尊敬する日本人100」 に選ばれる。ウィーン在住。
AAR Japan[難民を助ける会]チェリティコンサート
モノオペラ「ガラシャ」
2022年1月29日(土)17:00 国立能楽堂(東京・千駄ヶ谷)
作曲:エステバン・ベンセクリ
脚本:横島昇
ガラシャ:田中彩子(ソプラノ)
小笠原少斎:林宗一郎(能楽師)
味土野村長の亡霊:茂山逸平(狂言方能楽師)
祈り:谷本健吾(能楽師)
■問い合わせ:難民を助ける会 TEL:03-5423-4511
https://aarjapan.gr.jp/event/2971/