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vol.137 チェロ シェク・カネー=メイソン

チェロ シェク・カネー=メイソン
©Ollie Ali

ラトル=ロンドン響と共演、人気沸騰
姉のイサタと12月に東京公演
「信頼できる人との共演は自由もたらす」

 ラトル=ロンドン響と共演するなど欧米で人気急上昇のチェリスト、シェク・カネー=メイソンと、ピアノのイサタの姉弟は、受賞歴や名門レーベル録音が裏付ける実力の持ち主。演奏はしなやかさと強い芯を感じさせ、ファンを広げる。シェクが初来日を前にオンラインで語ってくれた。
 シェクのチェロは楽器を滑らかに歌わせると共に、時に歌詞のついた節を情感を込めて語るよう。歌をテーマに収録された最新アルバム「ソング」は、ウェールズの民謡、バッハのコラールなどのクラシック作品からジャズ、ポップソングまで、シェク自身が編曲、作曲した演奏も含める。
 「ドヴォルザークが黒人霊歌、英国人作曲家がスコットランドやウェールズの歌謡から刺激を得たように、クラシック音楽以外からインスピレーションを得る事は過去にもありました。クラシック以外の音楽に耳を傾ける事は、想像力やインスピレーションにもたらす面において大事だと思います。自分の表現手段が増え厚みを増します」
 来日公演のプログラムについて「ブリッジは日本で珍しい作曲家かもしれません。私の最も好きな曲の一つで、英国から持って来たいと思いました。1913年に書かれた第1楽章は不安と予感的なものを強く漂わせますが、まだ後に起きる戦争の影響を受けていません。第2楽章は戦後に書かれましたが、第1楽章由来の主題で終わります。ノスタルジアや希望の抒情性、そして未来に向かう何かがあり、それがこの作品に説得力を与えています」。録音済みのラフマニノフは「情感豊かで、壮大なフレーズに満ち、力強い」。ショパンは「それに比べ均衡のとれたフレーズが古典的ですが、音の編成が実にロマン派的です」と語る。
 「影響を受けたのは、ジャクリーヌ・デュ・プレ。常に弾く音一つ一つに全霊で尽くすこと、彼女の演奏する自由さ、それらが聴く者に強く直接訴えかけます。メニューインも演奏者、教育者として尊敬します」
 教育への思いは、若き彼を駆り立てている。各地の学校で演奏し、教えてもおり、その活動は父の両親の出身地であるカリブ海のアンティグア島にも広がる。母方はアフリカのシエラレオーネと英国ウェールズの血を引き、コスモポリタンなカネー=メイソン家。7人兄弟は、全員が秀でた楽才を示す。「家中が音楽に満ち、互いに刺激し合ってきました。他のメンバーが練習しているのを知ると、練習を孤独ではなく素敵なものだと感じられます」と言う。
 姉弟共演について「多くの事について根本的な部分で相互に理解し、それは舞台上で確信になります。信頼できる人との演奏は、多くの自由をもたらします。自分が何をしても、いつもそばにいてくれるからです」

(野々山順子)

Sheku Kanneh-Mason

2016年BBCヤング・ミュージシャン・アワード優勝、サセックス公爵夫妻の結婚式で演奏披露し注目を集める。同年名門デッカクラシックスとチェロ奏者として史上最年少で専属契約を結ぶ。サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団と共演の録音「エルガー」はチェロ奏者として初の全英アルバムチャートトップテン入り。2021年にシェクとイサタの初デュオアルバム「ミューズ」がリリース。2022年にアルバム「ソング」を発表。23/24シーズンは、BBCプロムスラストナイト、ロサンゼルス・フィル、パリ管弦楽団、スペイン国立管弦楽団、シカゴ交響楽団、ニューヨーク・フィル、サンフランシスコ交響楽団との共演等が含まれる。使用楽器は、無期限で貸与された1700年製のマッテオ・ゴフリラー。


ここで聴く

シェク(チェロ)&イサタ(ピアノ)カネー=メイソン デュオリサイタル

シェク(チェロ)&イサタ(ピアノ)
カネー=メイソン デュオリサイタル

12月10日(日) 14:00 紀尾井ホール

ブリッジ:チェロ・ソナタ
ショパン:チェロ・ソナタ
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ

■問い合わせ:AMATI TEL)03-3560- 3010