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vol.17 ヴァイオリン 漆原啓子・朝子

ヴァイオリン 漆原啓子・朝子

無伴奏ヴァイオリン・デュオ作品のCDを初リリース
「同じ音域で繰り広げられる軽やかな世界」と啓子
「どこまでできるか挑戦してみました」と妹の朝子

それぞれソロやアンサンブルで活躍するヴァイオリニスト姉妹が、初めて無伴奏作品ばかり集めたCDを作った。

「デュオは中学のころからしていました。バッハの『2つのヴァイオリンのための協奏曲』などの曲があります。若いころは、曲の解釈などでよくけんかをしていましたが、ここ20年くらいはしていません(笑い)。でも無伴奏作品だけのコンサートはありません。レコーディングのために調べて、2つのヴァイオリンのための無伴奏作品がたくさんあることが分かりました」と姉の啓子。

ヴァイオリン 漆原啓子・朝子

2人とも血液型はA型。しかし、性格が違うように生み出す音楽も違う。朝子の恩師、徳永二男は「姉の啓子さんは明るく響く音で、歯切れのよい鮮やかな演奏、一方、妹の朝子さんは落ち着きのある音でガチッと輪郭のある力強い、いぶし銀のような演奏です」と評する。「2人がまったく同じだったらそろい過ぎてつまらない。同じように弾こうとするけど違うから面白い」と啓子。

姉のレッスンに付いていってヴァイオリンを始めた朝子は、「姉にはいろいろ教えてもらっています。よく話すのですが、母は姉がお腹にいるとき、父親が買ってきたケンプが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ、オイストラフ、スターンなどのレコードをよく聴いていました。しかし、私のときには飽きて聴かなかった。お腹の中で聴いていた姉は古典の解釈を教わらなくてもできてしまいました」と当時のエピソードを教えてくれた。

CDには、18世紀前半に書かれたジャン=マリー・ルクレールから、シュポア、ヴィエニャフスキ、ミヨー、プロコフィエフ、現代の武満と国も時代も大きくまたがっている。

「ボッケリーニも入れたかったのです。古典派の無伴奏は多く、ロマン派はあまりありません。曲の好みは似ているかも知れません」と啓子。「2人でいろいろな音の世界を表現したかった。シュポアの分厚い響き、武満の研ぎ澄まされた色彩感など、どこまでできるか挑戦してみました」と朝子。

ヴィエニャフスキは前半は朝子がファースト・ヴァイオリン、後半は啓子がファースト・ヴァイオリンを弾いている。楽器は啓子がストラディヴァリウス、朝子がグァルネリウスで、音色の違いも楽しめる。

「ヴァイオリン2台だけで地味なイメージがあるかもしれませんが、結構楽しめます。同じ音域で繰り広げられる軽やかな世界です。これでデュオがはやるといいな」と啓子。「曲の持ち味がわりとはっきりしています。2台のヴァイオリンのエネルギー、繊細さを感じ取ってほしい」と朝子は話した。

Keiko Urushihara(右)

1981年、東京芸術大学付属高校在学中に第8回ヴィエニャフスキ国際コンクールにおいて最年少の18歳、日本人初の優勝。翌年、東京芸大入学と同時に本格的な演奏活動を開始。86年、ハレー・ストリング・クァルテットとして民音コンクール室内楽部門で優勝。国立音楽大学客員教授、桐朋学園大学特任講師。

Asako Urushihara(左)

東京芸術大学付属高校在学中に第2回日本国際音楽コンクールにおいて最年少優勝。東京芸大に入学した翌年、文化庁芸術家在外研修員としてジュリアード音楽院に留学。徳永二男、ドロシー・ディレイに師事。1988年、NHK交響楽団定期公演にデビュー、ニューヨークでリサイタル・デビュー。東京芸大准教授。

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■CD
無伴奏ヴァイオリン・デュオ
漆原啓子&漆原朝子
シュポア:2つのヴァイオリンのための二重奏曲
ジャン=マリー・ルクレール:
2つのヴァイオリンのためのソナタ
ミヨー:2つのヴァイオリンのための二重奏曲
武満徹:揺れる鏡の夜明け
プロコフィエフ:2つのヴァイオリンのためのソナタ
ヴィエニャフスキ:エチュード・カプリースより第2番アンダンテ
(日本アコースティックレコーズ)NARD-5046