パリ国立高等音楽院で学ぶヴィオラの俊英
ヴィオラスペースで「シャコンヌ」などを演奏
「ヴィオラの可能性を追求していきたい」
今井信子が提唱して始まったヴィオラの祭典、ヴィオラスペースが今年で25回の記念年を迎える。2009年にはアジアで初めて、唯一のヴィオラの国際コンクールとなる東京国際ヴィオラコンクールもスタートした。東条慧は昨年の第3回コンクールで2位及び聴衆賞、バッハ賞などを獲得。現在、パリ国立高等音楽院修士課程で学ぶ俊英だ。
「去年のコンクールは、予備審査を入れて課題曲11曲を用意しなければならず、準備期間は大変でしたが、本当によい勉強になりました。コンクールでは緊張の中で力を出し切り、できる範囲のことはできたと思います」
音楽を聴くのが好きな両親のもと、3歳からヴァイオリンを習いはじめた。アンサンブルの中のヴィオラの役割に興味を覚えたという。
「ヴィオラの地味さが好きです(笑い)。合唱もハモるのが好き。性格にも合っていると思います。学校でもヴィオラ奏者同士は仲良しですが、ヴァイオリンは少し違います。ヴィオラはほんわかしていますが、ヴァイオリンはそうではありません(笑い)」
©藤本文昭
高校1年生のとき、スイスで開催されたジャン・シュレムのマスタークラスに参加した。その後、シュレムのいるパリ国立高等音楽院に入学した。今は修士課程2年生。6月14日に卒業試験がある。
「環境の違うヨーロッパを見てみようと思って参加しました。シュレム先生の人柄にひかれました。真摯に音楽と向き合い、生徒一人一人に親身になってアドバイスをしてくれます。卒業してももう少し勉強を続けて行きたい。オーディションも受けていきます。将来はオーケストラに入ることや、室内楽で活動できたら」
パリでは昨年11月、同時多発テロ事件が起きた。
「身近に被害にあった人はいませんでしたが、その日は気になって眠れませんでした。1、2週間たっても街が暗い感じでした。衝撃的な出来事でしたが、かといって引きこもっている訳にはいきません。いつも通り、やれることをやっていくしかありません」
今年のヴィオラスペースに出演、テレマンやシュペーア、昨年にコンクールでバッハ賞を受賞した「シャコンヌ」などを演奏。マスタークラスの講師も務める。
「これからもヴィオラの可能性を追求していきたい。日本ではヴィオラの音を聴く機会が少ないと思うので、演奏を通してヴィオラという楽器を知ってもらいたい」
山梨県甲府市出身。3歳からヴァイオリン、12歳からヴィオラを始める。小野富士、ジェフリー・イルヴァイン、ジャン・シュレムに師事。スーパーキッズ・オーケストラ、東京ジュニアオーケストラソサエティに在籍。高校卒業後、渡仏し、パリ国立高等音楽院に入学。6月に同音楽院修士課程を卒業予定。フランス国立放送フィル、パリ管のアカデミー生オーディションに合格。2014年、ウィリアム・プリムローズ国際ヴィオラコンクール特別賞。15年、東京国際ヴィオラコンクールで第2位。フラデツ・ベートーヴェン国際ヴィオラコンクール第2位。
第25回記念ヴィオラスペース2016
ヴィオラの誕生! バロックへの回帰
上野学園石橋メモリアルホール
コンサートⅠ 5月31日(火) 18:30
バロック音楽の夜明け
テレマン:6つのカノン風ソナタより、ヴィオラ協奏曲ト長調
シュぺーア:2つのヴィオラのためのソナタ、他
コンサートⅡ 6月1日(水) 18:30
バッハ・フェスト!
バッハ:カンタータ第54番「さあ罪に抗うがいい」シャコンヌ、他
■問い合わせ:電話03-6418-8617