父、山本直純の作品を指揮しコンサート
「寅さんファンタジー」など盛りだくさん
「大人になっても子供の心を持っていました」
チョコレートのCM「大きいことはいいことだ」、映画「男はつらいよ」、童謡「1年生になったら」などあらゆるジャンルで膨大な作品を残した山本直純。指揮者、作曲家という枠には収まりきれない才能だった。クラシック音楽の振興に偉大な功績のあった人物を特集する横浜みなとみらいホールの「グレート・アーティスト・シリーズ」が3回目で、山本直純を取り上げる。今年で直純が亡くなって13年になる。
「69歳で早く亡くなったとはいえ、やりたいことを全部やってしまって、我慢してやり残したという感じはしません。ふー、と一息ついて人生を終えた感じです。本人に病名を知らせていました。病院で、神様はまだ迎えに来ないなーなんて言っていました」
こう、父親の思い出を話すのは山本直純の次男、祐ノ介。今回のコンサートの指揮をする。最初に記した曲のほかにも、クラシックファンにはテレビ番組「オーケストラがやってきた」の司会の印象も強く残っている。
「『歌えバンバン』を子供たちに指導するとき、子供と一緒になって子供みたいな気持ちになってやっていました。子供を引きつける力がすごくありました。純粋といえば純粋、わがままといえばわがままでした。大人になっても子供の心を持っていたいというのは、音楽家にとって捨てがたいものでしょう。普通の大人にはできないことです」
たくさんの作品の中からコンサートのプログラムを選ぶのは容易でない。メーンは「和楽器と管弦楽のためのカプリチオ」。祐ノ介が生まれた1963年の作品。4管編成で、32分かかる。「寅さんファンタジー」は映画「男はつらいよ」の音楽を、祐ノ介がつなぎ編曲したもの。直純は1作ごとに違うマドンナのためのメロディーを作曲した。司会は「オーケストラがやってきた」のマリ・クリスティーヌ。
祐ノ介はチェリストとして活動をはじめたが、今は指揮や編曲も手がける。
「子供のころから指揮者になりたい気持ちはありました。アレンジはやらざるを得ない機会があり、始めました。父親に指揮は習っていませんが、子供のころから見ています。コンチェルトでもオーケストラの中でも共演しています。オーケストラの方に指揮姿がお父さんを見ているような気がした、と言われました。体形などから自然と似てきてしまうのかも知れません」
トークも入るので、盛りだくさんのコンサートが2時間で終わるか心配。
「スピリットとして父を継いで、お客さんに楽しんでもらいたいと思います。でも別なキャラクターなので、父とは完全に一致しません」と笑った。
1963年、東京生まれ。父、山本直純、母、岡本正美とも作曲家。東京芸大附属音楽高校、同大学を卒業。同大学院を修了。ハレー・ストリング・クァルテットのチェロ奏者、東京交響楽団の首席チェロ奏者などを経て、現在、ソロ・チェリスト及び指揮者として活躍。2011年、東京ニューフィルハーモニック管弦楽団の常任指揮者、14年、東京ポップス・シンフォニーオーケストラの初代常任指揮者。13年、ミャンマー国立交響楽団を指揮、15年、同団の音楽監督に就任。
グレート・アーティスト・シリーズvol.3 山本直純
11月10日(火)19:00
横浜みなとみらいホール大ホール
和楽器と管弦楽のためのカプリチオ
寅さんファンタジー(映画「男はつらいよ」より)
「オーケストラがやって来た」映像紹介
白銀の栄光~札幌オリンピック~
オーケストラ伴奏による児童合唱
「歌えバンバン」「夕日が背中を押してくる」
「1年生になったら」「こぶたぬきつねこ」
大河ドラマ「武田信玄」のテーマ、他
山本祐ノ介(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
マリ・クリスティーヌ(司会)
横浜少年少女合唱団、他
■問い合わせ:電話045-682-2000