NISSAY OPERAで「魔笛」を指揮
「よそでは見られないものが絶対にあります。
フェアなオーディションによるキャストです」
6月に公演されるNISSAY OPERAの「魔笛」を指揮する。
「世界の誰が聴いても、何歳の人が聴いても素晴らしいオペラです。試練を受けた者が最後に幸せを得る、というストーリーは日本人に受けます。少しスポ根みたいなところがあります」と笑いながら話す。
「魔笛」はモーツァルト最後のオペラ。ストーリーは幻想的で一筋縄ではいかない。王子タミーノが大蛇に襲われ、3人の侍女に助けられる。彼女らが仕える夜の女王はタミーノに、悪魔ザラストロにさらわれた娘パミーナの救出を頼む。鳥刺しのパパゲーノとともに魔法の笛を持ってザラストロの元へ向かう。
「フリーメーソンの思想が反映されていることは確かです。時折見せる女性への不信感が面白い。モーツァルトのダイイング・メッセージのようなものかもしれません。謎は解決しなくていい。演出家にはモーツァルトが出したキャラクター以上のものを出して混乱させないように、と言っています。しかし、オペラに付いている音楽が極上のものです。何かが乗り移って書いたとしか思えない音楽です。そこからファンタジーが広がり、ストーリーの多少の混乱もカバーしてしまいます」
今回の公演は、歌唱はドイツ語で日本語字幕が付き、台詞は日本語。初めてオペラを見る人も分かりやすい。
「私の最初のオペラの仕事は日生劇場でした。キャストのオーディションをここまでフェアにやっているところは他にありません。この姿勢は何十年も続く伝統です。人材発掘の場として機能しており、必然的に若手が多くなります。台詞以外はドイツ語ですが、違和感がないように繋いでいけたらと思います」
日生劇場、びわ湖ホールでの一般3公演に加え、「ニッセイ名作シリーズ」として高校生らに聴かせる公演が12回も組まれている。オペラ団体の公演はせいぜい3、4回、ダブルキャストでは1、2回しか出番がない。だから、たくさん歌えるNISSAY OPERAのオーディションに応募者が集まる。
「素晴らしいキャストがそろったので、舞台の自由度が高まるでしょう。稽古でアイデアがわいてくるかもしれないし、何かがスパークするかも知れません。外国の大スターなどのウリはありませんが、よそでは見られないものが絶対あります。日生劇場は馬蹄形で約1300席です。客席との一体感があり、歌手の顔も見えるし。呼吸を感じることもできます」
東京都出身。桐朋学園大卒。ベルリン芸術大学に留学。1990年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。これまで、新星日響正指揮者、東フィル正指揮者、名古屋フィル常任指揮者、日本センチュリー響首席客演指揮者などを歴任。2007年、びわ湖ホール芸術監督。13年、リューベック歌劇場音楽総監督。14年1月にはオペラ《竹取物語》を作曲・世界初演。99年第7回渡邉暁雄音楽基金音楽賞、2011年文化庁芸術祭優秀賞、第61回芸術選奨文部科学大臣賞などを受賞。2017年紫綬褒章。桐朋学園大学教授。
NISSAY OPERA
モーツァルト:オペラ「魔笛」
指揮:沼尻竜典
演出・上演台本:佐藤美晴
6月16日(土)、17日(日) 各日13:30
日生劇場(東京) 新日本フィル
10月6日(土)15:00 びわ湖ホール(滋賀)
日本センチュリー交響楽団
6/16 6/17 10/6
ザラストロ デニス・ビシュニャ 伊藤貴之
タミーノ 西村悟 山本康寛
夜の女王 中江早希 角田祐子
パミーナ 森谷真理 砂川涼子
■問い合わせ:日生劇場 電話 03-3503-3111
びわ湖ホール 電話 077-523-7136