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vol.21 指揮 河原忠之

指揮 河原忠之

いずみホール・オペラで「フィガロの結婚」を指揮
所属にこだわらず東西の実力派歌手を集める
「人間と人間愛のオペラ。人生に重なります」

歌手から信頼の厚い優れた伴奏ピアニストとしてキャリアを築いてきたが、指揮活動も2006年からはじめた。

「小学校の卒業文集に『指揮者とピアニストになりたい』と書いていました。学校で指揮を習ったわけではありませんが、コレペティトゥールとしてずっと指揮者を近くで見ていました。コレペティの経験が長いので、自然に指揮ができてしまいました」

コレペティトゥール(コレペティ)とは、歌手の個人練習をつけるピアニストで、オペラ制作になくてはならない。ヨーロッパの指揮者の多くが、劇場のコレペティトゥールから副指揮者やアシスタントを務め、指揮者に育っていく。

いずみホール・オペラでは昨年の「シモン・ボッカネグラ」に続き、今年は「フィガロの結婚」を指揮する。ホールの年間企画「モーツァルト~未来へ飛翔する精神」シリーズの第3弾。「フィガロの結婚」全幕をオーケストラで指揮するのは初めてだが、コレペティとして何十回もつきあってきた。

「『フィガロの結婚』は、演奏家にとっては憧れの、一生に1回は指揮したいオペラです。何回やっても新しい発見があり、音楽家の何かが満たされるのです。一言で言ってしまえば人間と人間愛のオペラ。大団円を迎えるときに、トラブルを乗り越える瞬間が訪れ、登場人物一人一人が成長します。歌う側も聴く方も、沈んだり浮いたりの人生に重なります」と魅力を語る。

指揮 河原忠之
昨年6月、「シモン・ボッカネグラ」を
指揮した 撮影:樋川智昭

コンサートホールでの公演だから、声やオーケストラがダイレクトに客席に届く。関西二期会など関西で活躍する歌手に、東京の二期会や藤原歌劇団など所属にこだわらず実力派を集めた。多くは河原が実際に舞台で共演した。

「大阪にも優秀な人材がいます。本番でどういう演奏をするかは、本番を一緒にやらないと分かりません。ずっと一緒にしてきたので歌手のことが一番わかります。彼だったら本番はこうしてくれるだろうと念頭において選びました」

「フィガロ」の原作はボーマルシェの戯曲。1作目はロッシーニがオペラ化した「セヴィリアの理髪師」、2作目は「フィガロの結婚」、3作目はミヨーがオペラにした「罪ある母」。今回は、3部作の流れを踏まえた演出になるという。

「『セヴィリア』から3年しか経っていないのに、伯爵と夫人の関係はなぜ冷え切ってしまったのか。あんなに優秀だったフィガロが、伯爵にスザンナが狙われていることが分からないのか。そうしたことを考えて役作りをしたいと思います。音楽的には、アリアの一部に装飾音を付けるなど、より曲の心情や情景が表現できればいいと思っています」

Kawahara Tadayuki

国立音大卒業。同大学院修了。イタリアでアルド・プロッティのオペラ伴奏ピアニストを務める。マリア・カルボーネのもとで発声法、ディクションなどを学ぶ。1992年に帰国後は、サイトウ・キネン・フェスティバル松本などでコレペティトゥールを務める。2006年、江原啓之「スピリチュアル・ヴォイス・カウントダウン」にて大阪センチュリー響を指揮してデビュー。声楽グループ「イル・デーヴ」でも活躍。国立音大及び大学院准教授。新国立劇場オペラ研修所の音楽主任講師。

ここで聴く

いずみホール・オペラ2014
モーツァルト「フィガロの結婚」
12月6日(土)14:00
指揮:河原忠之 演出:粟國淳
伯爵:黒田博 伯爵夫人:澤畑恵美
スザンナ:石橋栄実 フィガロ:西尾岳史
ケルビーノ:向野由美子 バルトロ:折江忠道
マルチェリーナ:福原寿美枝
バジリオ/クルツィオ:清原邦仁
バルバリーナ:四方典子 アントニオ:晴雅彦
ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
関西二期会合唱団
■問い合わせ:電話 06-6944-1188

vol.21 指揮 茂木大輔

指揮 茂木大輔

小金井でしか聴けない「こがねいガラ・コンサート」
小金井市在住、ゆかりの名手たちのアンサンブル
「いろいろな可能性があるオーケストラです」

「最初は室内楽を考えていたのですが、小金井在住の演奏家でオーケストラができないか、と発展しました。昔、住んでいましたとか、実家があります、などゆかりの人も含めて、意外といっぱいいたのです。だんだん、そうした人が増えてきて〝純血化〟が進んでいます(笑い)」

小金井市在住の茂木大輔が呼びかけた「こがねいガラ・オーケストラ」は、中央線武蔵小金井駅前の小金井市民交流センターのオープンがきっかけでできた。毎年1回集まり、来月、3回目のコンサートを開催する。

小学校5年から小金井市に住む茂木は、「小金井は緑が多く、静かで住みやすい町です。何しろ中央線の始発があり、座れます(笑い)。昔は小金井の周りの、三鷹、武蔵野、府中、小平などにホールがあり、小金井になくても仕方がないと思っていました。ホールができても、こんなに音楽的に豊かな運営ができるとは思いませんでした」。同センターは大ホール、小ホール、練習室などがあり、プロからアマチュア、ピアノの発表会までさまざまな公演が行われている。

今回の「こがねいガラ・コンサート2014」にも小金井ゆかりのメンバーが集まった。ベートーヴェンの「ロマンス」を弾くヴァイオリンの滝千春は、ベルリン留学中だが、小金井市在住。オーケストラ・メンバーにも、奥村愛(ヴァイオリン)、小川和久(チェロ、山形響)、藤井洋子(クラリネット、読響)らの名前が見える。

指揮 茂木大輔

また、ショパンのピアノ協奏曲第1番を弾く小山実稚恵は、同センターが開館した際に、所有するピアノを選んだ。「ピアノは生き物です。ホールと共に育っていきます」とメッセージを寄せている。

「毎回メンバーが変わるので、指揮者としてはある意味試練ですが、いろんな人とやれる楽しみもあります。曲は企画性というより、お客様が退屈しないように考えました。昨年は市内の中学校OBの合唱団にバッハのカンタータを歌ってもらいました。一昨年はオペラ・ガラをしました。いろいろ可能性のあるオーケストラです。芸術をするから来なさい、ではなく、どうしたら市民が喜んでもらえるかを、まだまだ探していきたい」

もぎオケやのだめ音楽会などでも活動する茂木だが、11月には東京フィルで友人の山下洋輔をソリストに山下作品などを指揮する。

「山下さんとは私がドイツに行く1年前、1980年に知り合いました。木管三重奏を書いてもらいましたし、筒井康隆さんの小説を交響詩にした作品も振っています。今回指揮する『エンカウンター』は和太鼓が入ります。すごく楽しみです」

Daisuke Mogi

ミュンヘン州立音大大学院修了(オーボエ専攻)。シュトゥットガルト・フィルの第1オーボエ奏者を経て、1990年からNHK交響楽団首席オーボエ奏者。若手在京プレーヤーを中心とした「もぎオケ交響団」を率いる。2009年より、東京音大、同大学院で指揮実技などを学ぶ。二ノ宮知子「のだめカンタービレ」原作に取材協力。「オーケストラ楽器別人間学」など著書多数。小金井市在住。

ここで聴く

こがねいガラ・コンサート2014
10月26日(日)15:00
小金井市民交流センター大ホール
茂木大輔(指揮) 小山実稚恵(ピアノ)
ショパン:ピアノ協奏曲第1番
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」、他
■問い合わせ:小金井市民交流センター
電話 042-380-8099

山下洋輔encounters 茂木大輔×東京フィルハーモニー交響楽団
11月24日(月・祝)15:00
江戸川区総合文化センター大ホール
山下洋輔(ピアノ) 茂木大輔(指揮)
山下洋輔:ピアノ協奏曲第1番
即興演奏家のための《エンカウンター》第4楽章
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー、他
■問い合わせ:江戸川区総合文化センター
電話 03-3652-1106