左から和樹、直樹、洋
2枚目のCD、ベートーヴェンの作品70を発売
長男の和樹、次男の直樹、3男の洋と兄弟トリオ
「ベートーヴェンの三重奏曲の全集を仕上げたい」
「家族の中でピアノとヴァイオリン、チェロとピアノなどいろいろなバリエーションで室内楽をしてきました。2012年にトリオとして活動を始めました」と長男の和樹・ヘーデンボルク。ヴァイオリニストだ。次男の直樹・ヘーデンボルクはチェロ、ピアニストの三男の洋・ヘーデンボルクと兄弟3人でトリオを組む。
兄2人はウィーン・フィルのメンバー。昨秋の来日公演でもステージに乗った。しかし、ピアノはオーケストラには入れない。
洋は「16歳の時、ピアノから離れてベースギターを弾き、ヘヴィ・メタをやっていたのですが、音楽学校にも通っていて『カルミナ・ブラーナ』のピアノを弾くことになりました。そこで今の親友と先生に巡り会うことができました。客席からわき上がってくる拍手を聞き、ここがいるべき場所だと思ったのです。本当の仕事ができるのはピアノです」と話す。
トリオとしてのCDは2枚目。1枚目に続きベートーヴェンのピアノ三重奏曲。作品70の第5番「幽霊」と第6番を収録した。
「1年から1年半かけて準備します。作曲家に対して責任がありますから。録音プロジェクトとしてベートーヴェンのピアノ三重奏曲の全曲集を仕上げたい」と和樹。録音はウィーンのホーフブルクカペレで6日間も取った。通常は3日間、ライブ録音も多い。「追い込まれるとテンションが上がることもありました。でも録音は切りがありません。録音は残るものですが、音楽は瞬間芸術です」と直樹。
兄弟ゆえにあうんの呼吸は当然。小さい頃からお互いの楽器を知り、どんな音楽を作るかも分かっている。
「それぞれが最後まで主張して譲らないことがあります。しかし、舞台にあがると魔法がかかります。自分のエゴなどどうでもよくなるのです」と直樹。「音楽を素直に出すことで統一感が生まれます」と洋。
それゆえ、けんかをしてもトリオが分かれることはない。
「室内楽はウィーンの伝統の一つです。オーケストラ、ウィーン国立歌劇場のホールでお客様と繋がることも美しいと思う。しかし、あえて言えば室内楽は観客がいなくても成り立ちます。奏者の対話だからです。室内楽は自分の楽器を超えて自分の色を作らなければならないのです」と直樹は話した。
長男・和樹(ヴァイオリン)、次男・直樹(チェロ)、三男・洋(ピアノ)のザルツブルク出身の兄弟によるピアノ・トリオ。スウェーデン人の父(ヴァイオリニスト)と日本人の母(ピアニスト)のもとに生まれ、それぞれ両親から音楽の手ほどきを受ける。長男・和樹、次男・直樹はウィーン・フィルの正団員として活動する。2012年にトリオとしての活動を開始。16年秋に3兄弟の日本滞在が重なったことが契機となり17年に初来日ツアーの念願が叶った。
ヘーデンボルク・トリオ
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲作品70 (写真)
ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」
ピアノ三重奏曲第6番
(カメラータ)CMCD-28368
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲作品1
ピアノ三重奏曲第1~3番
(カメラータ)CMCD-15143/4
ユリアン・洋・ヘーデンボルク(ピアノ)
ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク(ヴァイオリン)
ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク(チェロ)