6月に銀座のヤマハホールでリサイタル
長年委嘱している長生淳の作・編曲作品
「チガイノワカルYJ」は初演のトリオで
「サクソフォンは新しい楽器なのでよく演奏されるレパートリーは少ないのです。今年はデビュー32年になりますが、20代のころからいろいろな作曲家に委嘱してきました。ソロの曲だけで30曲、室内楽を入れたら40曲以上はあります。作曲家の長生淳さんに書いてもらった曲は僕の財産になっています。レパートリーになっている彼の作品は20曲以上あります。リサイタルのプログラムを考えたら長生さんの作品がほとんどになりました」
ソロ活動のほか、東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスター、サクソフォン四重奏団、トルヴェール・クヮルテットでも活躍するサクソフォン奏者。6月にヤマハホール(東京・銀座)でリサイタルを行う。
「委嘱したオリジナル作品だけですと、プログラムが難しそうな感じになるので、編曲作品も入れました。オリジナル作品は、長生さんの『変奏曲』と『ユア カインドネス』の2曲。編曲作品は、ドビュッシーの『小組曲』やガーシュウィンの『3つのプレリュード』、アルベニスの『イベリア』第1集より『セビーリャの聖体祭』は、原曲の雰囲気を生かして、オリジナルにはない旋律が出てきて、編曲ならではの楽しさがあります」
アルベニスとドビュッシーは長生の編曲。ガーシュウィンは田村文生の編曲。
「長生さんは単なるトランスクリプションではありません。自分なりにスタイルを変えた曲が多いんです。トルヴェール・クヮルテットのために書かれた作品はほとんどCDにしています。田村さんのガーシュウィンは現代曲のテイストもあり、原曲のピアノとは違う無調の音楽も出てきます」
Photo : amigraphy
コンサートの最後に予定しているのは「チガイノワカルYJ」という作品。大森潤子さんのヴァイオリン、白石光隆さんのピアノとのトリオの曲。Yは田中靖人のY、Jは大森潤子のJだ。白石とは25年来のつきあいだ。
「初演と同じ3人です。1月に久しぶりに愛知県で演奏しました。長生さんがリストの『ハンガリー狂詩曲』やジプシー・バンドの曲を散りばめメドレーになっています。『チガイノワカルYJ』は、長生さん曰く、早口で何度も言うと、『チゴイネルワイゼン』になります(笑い)。とても楽しいレパートリーです」
ドビュッシー「小組曲」が25年前ぐらいの委嘱。「変奏曲」が20年前の作品。「チガイノワカルYJ」が2008年。
「自分の歴史を聴いていただくリサイタルでもあります」
1964年、和歌山市生まれ。国立音楽大学在学中、第4回の日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位。91年、「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」でCDデビュー。一方、サクソフォン四重奏団、トルヴェール・クヮルテットでも活躍。同団体は92年東京国際音楽コンクールで第2位。2001年、文化庁芸術祭レコード部門大賞受賞。03年、きのくに芸術新人賞。国立音楽大学、昭和音楽大学、愛知県立芸術大学講師、東京佼成ウインドオーケストラ コンサートマスター。
田中靖人サクソフォン・リサイタル
6月13日(土) 14:00 ヤマハホール(東京・銀座)
アルベニス(長生淳編):「イベリア」第1集より「セビーリャの聖体祭」
ドビュッシー(長生淳編):小組曲
長生淳:変奏曲
ガーシュイン(田村文生編):3つのプレリュード
長生淳:ユア カインドネス
長生淳編:チガイノワカルYJ
大森潤子(ヴァイオリン)、白石光隆(ピアノ)
■問い合わせ:ヤマハ銀座ビルインフォメーション TEL 03-3572-3171