「ヘンゼルとグレーテル」のヘンゼルを歌う
6月のNISSAY OPERA、日生劇場で公演
「大人が聴いても深みのある音楽です」
「ヘンゼル役のオーディションに合格したときはうれしさとともに驚きました。間違って電話がかかってきたのではないか、としばらく周りにもあまり話しませんでした」とオーディションに受かった1年前のことを話す。
立川市民オペラの「カルメン」で、カルメンの友人メルセデスなどを歌った経験はあるが、オーディションを受けたのは「ヘンゼルとグレーテル」で2つ目。まだ東京芸大大学院に在学中で、外部のオペラ公演の主役は初めてというフレッシュな歌い手。
「私の先生である伊原直子先生が魔女を歌っている録音を聴き、この作品が大好きになりました。魔女役もやってみたかったのですが、私の声をより活かせるのはヘンゼルだな、と思ったのです。やるしかない、と悔いの残らないオーディションでした」
「ヘンゼルとグレーテル」は1893年、ドイツ・ワイマールで初演された。初演の指揮はリヒャルト・シュトラウス。作曲者のフンパーディンクは、バイロイトにおいてワーグナーの下で働くなどしており、この作品にもワーグナーの影響が感じられる。
「『ヘンゼルとグレーテル』は、何となく明るく楽しい音楽と想像するかもしれませんが、オーケストラは重厚で、楽しいだけでなく、美しく、繊細な旋律が流れます。大人が聴いても深みのある音楽は、とても素敵です」
今回は、高校生などを対象にした公演もあるため、日本語に翻訳された歌詞を歌う。日本語の字幕も出て、観客の理解を促す。
モーツァルト「フィガロの結婚」のケルビーノを歌う
「日本語でオペラをやるのは賛成です。言葉を聴いて、オペラを楽しんでほしい。『注文の多い料理店』という日本語の新作オペラを歌ったこともあります。今度の作品は練習をしていて、日本語のために書かれた作品ではない、とは思います。日本語で歌うと、言葉のニュアンスが難しいのですが、一番いい場所で声を出せるようにしたい」
母親は中学の音楽の先生。小さいときからピアノは習っていたが、歌と出合ったのは高校2年のとき。東京芸大の文化祭に行き、「音楽にあふれた環境が新鮮」と感激し、歌の道に進んだ。
「ヘンゼルはちょっと抜けたところがありますが、妹のことが大好きです。やんちゃで腕白、食いしん坊です。自分に通じるものがありますし、彼の気持ちが分かります。いたずらをしてお母さんに怒られるなど、かわいい役です。貧乏暮らしの中にも楽しさがあります。音楽とともに表情がころころと変わっていきます。そんな表情を見てほしい。伸び伸びと歌って全身で表現したいと思います」
京都府出身。東京芸術大学音楽学部声楽科卒業(卒業時に同声会賞を受賞)。同大学院音楽研究科修士課程オペラ専攻修了(アカンサス音楽賞を受賞)。現在、同大学院博士課程オペラ専攻に在籍中。藤花優子、伊原直子、菅英三子に師事。第23回友愛ドイツ歌曲コンクール学生の部奨励賞受賞。第21回コンセール・マロニエ21 第1位。モーツァルト「フィガロの結婚」ケルビーノ、ビゼー「カルメン」メルセデスで出演。第64回「芸大メサイア」、 モーツァルト「レクイエム」「戴冠ミサ」、ベートーヴェン「第九」などにおいてソリストを務める。
NISSAY OPERA 2019「ヘンゼルとグレーテル」
日本語訳詞上演、日本語字幕付
6月15日(土)、16日(日) 各日13:30 日生劇場
作曲:フンパーディンク 指揮:角田鋼亮
演出・振付:広崎うらん 新日本フィル
15日 16日
ヘンゼル 郷家暁子 山下裕賀
グレーテル 小林沙羅 鵜木絵里
父 池田真己 小林大祐
母 藤井麻美 八木寿子
魔女 角田和弘 伊藤達人
眠りの精・露の精 宮地江奈 照屋篤紀
■問い合わせ:日生劇場 電話03-3503-3111