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vol.37 ソプラノ 佐藤康子

ソプラノ 佐藤康子
©Yoshinobu Fukaya

藤原歌劇団公演「トスカ」のタイトルロールを歌う
「今出来うる限りの最良のものをお届けします」
イタリアに足かけ10年、「まだ勉強は足りません」

 イタリアを中心に活躍しているプリマドンナ。今年6~10月にはフィレンツェ歌劇場で「蝶々夫人」のタイトルロールを歌った。プッチーニでいえば、「蝶々夫人」に加えて、「ラ・ボエーム」のミミもレパートリー。しかし、「トスカ」は初めて挑戦する。
 「緊張で足が震えています。トスカはまさにローマっ子の気質そのものなので、親友のローマ出身の同僚を観察して研究しています。嬉しい気持ちも、嫉妬も包み隠さず表現してしまう。嫉妬はコミュニケーションの一つなのです。トスカはローマの女性の気質を知らないと歌えない。強いだけじゃなく、一呼吸おいて考えて行動できない。一途で、愛らしさと脆さが同居している女性です」
 東京芸術大学、修士課程在学中の2005年にイタリア・スポレート実験歌劇場と東京室内歌劇場の共同制作公演であったヴェルディ作曲歌劇「オベルト、またはサンボニファーチョ伯爵」でレオノーラを歌ったのがイタリア・デビュー。
 「素晴らしい体験でした。日本人はまじめで何事も一生懸命にします。一方イタリア人は気が抜けていて時間にもルーズだし一見ふざけているようですが、ゆるさを保ちながら心地良い音楽を築いて行き、本番に伸び伸びとしていながらハリのある音楽を聞かせます。この自由さを勉強したいと思いました」
 奨学金を得てイタリアに留学。スポレート実験歌劇場の研修所で教わったライナ・カバイヴァンスカに師事するため、続けてモデナ音楽院に通った。

2014年藤原歌劇団公演「蝶々夫人」
2014年藤原歌劇団公演「蝶々夫人」
©公益財団法人日本オペラ振興会

 「幸運にも先生とレパートリーがかぶるんです。最初、イタリア人の歌うイタリア語と私のイタリア語がなんでこんなに違うのか分かりませんでした。彼らは機械的に歌わずしゃべるように歌います。イタリア語の自然な流れができませんでした」
 2007年からヨーロッパ、日本の数々のコンクールを受賞、徐々に仕事が入るようになった。しかし、日本人なのでどうしても「蝶々夫人」が多い。
 「大歓迎です。イタリアでも大人気で感動を呼ぶオペラです。先日私の舞台を見て、若い一人の観客が泣きすぎて最後は見ていられず顔を覆っていたという話をききました。とてもうれしい」
 イタリアに住むようになり、足かけ10年。日本とイタリアを行ったり来たりの生活で、昨年も藤原歌劇団の「蝶々夫人」を歌った。
 「何十年勉強しても勉強しきることはありませんが、来年1月のトスカは自分が今出来うる限りの最良のものをお届けします」

Yasuko Sato

東京芸大卒業、同大学院修士、博士課程修了。2009年、新進芸術家海外留学制度研修生としてイタリアに留学。07年トラエッタ国際コンクール、08年アラガル国際コンクール、09年日本音楽コンクール、11年トーティ・ダル・モンテ国際コンクールで最高位。05年、スポレート実験歌劇場にて「オベルト」レオノーラ役でイタリア・デビュー。「ラ・ボエーム」ミミ、「イル・トロヴァトーレ」レオノーラなどを各地で歌い、今年3月にはペトルッツェッリ劇場、6月パルマ王立歌劇場、7~9月フィレンツェ市立歌劇場で「蝶々夫人」のタイトルロールを歌った。

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藤原歌劇団公演
プッチーニ:オペラ「トスカ」
2016年1月30日(土)、31日(日)
両日14:00 東京文化会館大ホール
指揮:柴田真郁 
演出:馬場紀雄
藤原歌劇団合唱部 
東京フィルハーモニー交響楽団
           30日    31日
トスカ:     野田ヒロ子  佐藤 康子
カヴァラドッシ: 村上 敏明  笛田 博昭
スカルピア:   折江 忠道  須藤 慎吾
アンジェロッティ:三浦 克次  久保田真澄
堂守:      柴山 昌宣  安東 玄人
スポレッタ:   所谷 直生  澤﨑 一了
シャルローネ:  党  主税  田中 大揮、他

■問い合わせ:日本オペラ振興会チケットセンター
電話 044-959-5067