おすすめアーティスト一覧

過去のアーティストをみる

おすすめアーティスト

vol.128 ディエゴ・マテウス ◎指揮者

ディエゴ・マテウス
©大窪道治

《ラ・ボエーム》を若い音楽家たちと上演する
私にとっても実り多い素晴らしい経験です

 コロナ禍で2020、21年と2年続けて中止となった「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」。昨年はヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ《こうもり》で再開した。この作品を指揮して、首席指揮者をマエストロ小澤から任されたのがこの人。
 「小澤先生から信頼されているんだと感じ、とてもうれしく光栄なことだと思いました。それとともにすごく責任を感じますので、何とか信頼にこたえるべく、一生懸命に取り組みたいと思っています。音楽塾に参加できたことは、私にとっても本当に実り多い素晴らしい経験です。若い音楽家たちとの最初の出会いから、真剣なトレーニングを積みながら、最後の舞台公演に至るプロセスを間近に見ることは大変な醍醐味です。初めは硬い表情で演奏していたのに、しまいには彼らの方がリードしていくような迫力が出てくる。ごく短期間で彼らが成長していく様子は実に素晴らしい!」
 また、出身母体である「エルシステマ」にはシモン・ボリバル・ユース管弦楽団があり、小澤征爾音楽塾にはサイトウ・キネン・オーケストラという土台があるということでも共通点がある、とも。
 「音楽を志す若者の教育への投資ということでも全く同じです。今回気が付いたことでは、1カ月というごく短い期間で様々な物事がうまく運べるようにサポートがよくできていて、裏方である音楽塾の組織運営が見事であることにも感心しました」
 今年1月にはベルリン州立歌劇場で《蝶々夫人》、2月23日からは東京二期会の《トゥーランドット》、そして3月には小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトで《ラ・ボエーム》と、プッチーニのオペラの指揮が続く。

ディエゴ・マテウス
©大窪道治/2022 小澤征爾音楽塾

 「プッチーニはもちろん大好きです。でも今年に入ってプッチーニの指揮が続いているのは、たまたまスケジュール上、そうなっただけでして。実は去年は、ロッシーニのオペラの指揮を3本任せられました。パリで《チェネレントラ》を、ベルリンでは《セビリアの理髪師》、ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルではフアン・ディエゴ・フローレスと《オリー伯爵》を共演しました」
 なお、《ラ・ボエーム》は、二期会と藤原歌劇団という日本を代表するオペラ団体がかつて旗揚げ公演で選んだ作品。まだ芽の出ない若き芸術家たちの青春の疼きを甘美で切ない音楽で歌い上げたオペラだが、物事の〝出発点〟という要素も当然あるはず。
 「若者のオーケストラによって、若者の世界を描いたオペラを演奏するということは特別な体験で、彼らの生の気持ちをより強く引き出すことができると思います。そして短い期間ながら、世界第一線のソリストたちとの共演を通じ、できるだけ多くのことを学ぼうという集中力で、青年たちのエネルギー、魂の輝きを一層描き出せると確信しています」

Diego Matheuz

(1984~)ベネズエラのバルキシメト出身。名高い音楽教育システム「エル・システマ」でヴァイオリンと指揮を学ぶ。後にクラウディオ・アバドの薫陶を受け、明日の音楽界を担う存在として注目される。現在、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場首席指揮者、ボローニャのモーツァルト管とメルボルン響の首席客席指揮者、そして小澤征爾音楽塾首席指揮者を務める。他にオーケストラではミラノ・スカラ座管、ロサンゼルス・フィルほか、オペラハウスではベルリン州立歌劇場、リセウ大劇場などに客演。

ここで聴く

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅨ
プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》

3月17日(金)18:30、19日(日)15:00 ロームシアター京都 メインホール
■問い合わせ:ロームシアター京都チケットセンター TEL 075-746-3201

3月23日(木)15:00 東京文化会館 大ホール
■問い合わせ:東京文化会館チケットセンター TEL 03-5685-0650

3月26日(日)15:00 愛知県芸術劇場 大ホール
■問い合わせ:東海テレビチケットセンター TEL 052-951-9104