©Michael Pöhn
ウィーン・フィルとの待望のコンビで来日公演
「ウィーン・フィルは特別の音を持つオーケストラ
私はその音を聴きながら成長してきました」
2年ぶりのウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパンが11月に行われる。今回、指揮を執るのはオーケストラと同じオーストリア・リンツ生まれのウェルザー=メスト。音楽ファンにとっては待望のコンビで、6月に行われたクリーヴランド管とのベートーヴェン・チクルスが高い評価を得て、すでに東京公演は完売となっている。
「ウィーン・フィルは世界でも特別なサウンドを持つオーケストラで、私はそのサウンドを聴きながら成長してきましたし、とても尊敬しています。今回は、ウィーン・フィルがオーストリア人の指揮者と来日するというところを強調したプログラムを考えました」
モーツァルト、ブラームスというウィーンで活躍した作曲家、オーストリア・ハンガリー帝国時代は同じ国のチェコの血を引く団員も多く、近しい関係のドヴォルザーク、世界最高の演奏水準にあるワーグナーなど得意としている作品が並ぶ。
「ウィーンで初演された『魔笛』は、モーツァルトの作品の中でも、高い精神性と啓蒙的な意味も備えながらも楽しい部分も忘れていません。最もウィーン的な作品だと思います。ピアノ協奏曲第24番はメランコリックでありながら、ダークな面も少しあるウィーンの魂のような曲です。ブラームスの交響曲第2番は、オーストリア南部の州ケルンテンの夏の自然の様子が描かれています」
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チューリヒ歌劇場の来日公演「ばらの騎士」の名演、ウィーン国立歌劇場の音楽監督としての評判や録音、さらにザルツブルク音楽祭でのウィーン・フィルとのオペラの評価は高い。多くの音楽ファンが期待したウィーン国立歌劇場との来日は果たせなかったが、今回はワーグナーの「神々の黄昏」の抜粋を演奏する。このコンビのオペラ演奏の神髄に触れることができる。
「ウィーン国立歌劇場の音楽監督の時代には多くの新制作を指揮しましたが、中でもワーグナーの『ニーベルングの指環』はそのハイライトでした。ザルツブルク音楽祭でもウィーン・フィルとは毎年オペラを演奏しています(今年はR.シュトラウスの『サロメ』)ので、それをぜひ聴いてもらいたい」
人気のピアニストのラン・ランも手の故障から復帰し、久しぶりの公演となる。
「ラン・ランと知り合ったのは、1999年のニューヨークでした。まだ、世界的には知られていない頃で、以来ほぼ2年おきにクリーヴランド管で共演しています。彼のテクニックは非常に素晴らしい。左手にちょっと問題があったようですが、彼はそのようなリスクをチャンスに変え、音楽をより深く捉えることができるようになるピアニストだと思っています」
1960年、オーストリアのリンツ生まれ。クリーヴランド管の音楽監督を2002年より務めている。特にウィーン・フィルと密接な関係を構築、同楽団の「ニューイヤー・コンサート」を2度指揮している。14年春に同楽団から「リング・オブ・オナー」を授与された。10~14年、ウィーン国立歌劇場音楽総監督。ザルツブルク音楽祭にも定期的に招聘されており、17年にはウィーン・フィルでライマンのオペラ「リア王」(新演出)を上演した。数々のCDやDVDは国際的な賞を受賞。ドイツ・グラモフォンからはワーグナー作品集などをリリースしている。
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2018
フランツ・ウェルザー=メスト(指揮)
11月16日(金)19:00 フェスティバルホール(大阪)
モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲、ピアノ協奏曲第24番(ピアノ:ラン・ラン)
ブラームス:交響曲第2番
■問い合わせ:フェスティバルホール 電話06-6231-2221(10:00~18:00)
11月15日(木)19:00 ミューザ川崎(川崎)
ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
(ヴァイオリン:フォルクハルト・シュトイデ、チェロ:ペーテル・ソモダリ)
ワーグナー(ウェルザー=メスト編曲):「ニーベルングの指環」第3夜、「神々の黄昏」より抜粋
■問い合わせ:ミューザ川崎シンフォニーホール 電話044-520-0200(10:00~18:00)
※11月20、23、24日のサントリーホール(東京)の公演は完売