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vol.59 テノール 西村悟

テノール 西村悟

五島記念文化賞オペラ新人賞研修記念の
リサイタルをオーケストラとともに
「これがオペラの音楽です、というものを」

 平成25年度五島記念文化賞オペラ新人賞の研修成果を披露するリサイタルを10月に行う。ほとんどの新人賞受賞者はピアノ伴奏のリサイタルだが、自ら経済的なリスクを背負って山田和樹指揮日本フィルとともに公演する。
 「オペラはオーケストラで音楽が完成させていますので、ピアノですと表現が限られます。やはり作曲家の世界をしっかりと表現したいと思いました。駆け出しなのでオーケストラとの共演なんて大掛かりなことをやってもよいものかと迷いましたが、こういうチャンスはなかなかありませんので、踏ん切りをつけました。初めてのセルフ・プロデュースのコンサートです」
 文化庁の海外派遣員や同賞の副賞などでイタリア・ヴェローナに留学して4年、今も行ったり来たりしている。
 「イタリアに行く前は声量にコンプレックスがありました。声はいいけど飛ばない、と言われ、そこを克服しようとイタリアへ行きました。日本にいるときと歌い方が180度変わりました。日本にいるときは前に前に届かせようと歌っていましたが、声は後ろに響かせるのです。体が声で充満しているので後ろを向いていても聴こえるのです。日本語の発音は体の浅いところでしていますが、イタリア語はもっと深いところで発音しています。イタリアに行かないとわかりませんでした。日本で仕事をするときに声量のコンプレックスがなくなりました」
 プログラムはドニゼッティからヴェルディ、プッチーニなどのオペラ・アリアに、1曲だけチャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」が入っている。

テノール 西村悟
©Yoshinobu Fukaya(aura)

 「思い入れのある曲、コンクールの勝負曲などを並べ、整理したらベルカントから『トスカ』までうまく時代を追えました。『オネーギン』は最初に好きになったロシア語のアリアです。『ラ・ボエーム』のハイCにはどれだけ苦労させられたか。この1音をはずしてしまうと他をいくらよく歌っても魅力が半減してしまいます」
 山田和樹とはアンサンブル金沢とのメンデルスゾーンの「讃歌」で共演をして以来、スイス・ロマンド管弦楽団などと度々共演をしている。
 「山田さんの指揮は自由の中にブレーキをかけて、私が勝手に歌っていると錯覚するくらいにやりやすかった。山田さんがオペラをやりたいということを小耳に挟んだので、一緒に音楽創りができればと思い、お願いすることにしました。リサイタルは、どれだけオーケストラに寄り添って音楽を作り、どれだけ声がしっかり聴こえるかです。これがオペラの音楽です、というのを聴いてほしい」

Satoshi Nishimura

日本大学芸術学部卒、東京芸術大学大学院オペラ科修了。丹羽勝海、川上洋司、Yoko Takedaに師事。第36回イタリア声楽コンコルソ・ミラノ部門大賞。2010年、文化庁新進芸術家海外派遣員としてヴェローナへ。11年、第17回リッカルド・ザンドナーイ国際声楽コンクール第2位、第80回日本音楽コンクール第1位。16年、大野和士指揮バルセロナ交響楽団のメンデルスゾーン「讃歌」のソリストを務めヨーロッパ・デビュー。17年3月にはびわ湖ホールプロデュース・オペラの沼尻竜典指揮「ラインの黄金」にローゲ役で出演。藤原歌劇団団員。

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五島記念文化賞オペラ新人賞研修記念
西村悟テノール・リサイタル
with 山田和樹指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

10月11日(水) 19:00 東京オペラシティコンサートホール
ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」より“人知れぬ涙”
ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」より“我が祖国の墓よ”
マスネ:歌劇「ル・シッド」より“おお、裁きの主、父なる神よ”
ヴェルディ:歌劇「マクベス」より“ああ、父の手は”
プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より“冷たき手を”
プッチーニ:歌劇「トスカ」より“星は光りぬ”、他
■問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ 電話03-5774-3040