世界最大の音楽祭「BBCプロムス」が日本で初開催
開幕でチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏
「音楽の持つ物語を共有し素晴らしい体験をしたい」
2010年ショパン国際ピアノ・コンクールで、女性としてはアルゲリッチ以来の優勝。おかげで数々の来日公演を行い、日本ではファンも多い。
今回は毎夏にイギリスで行われる世界最大級の音楽祭「BBCプロムナード・コンサート」(略称BBCプロムス)の初の日本公演のソリストに選ばれ、開幕演奏会でチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を演奏する。
「BBCプロムスで実際に弾いたことはありませんが、放送などで見たことはあります。とてもユニークで、大勢の観客(会場のロイヤル・アルバート・ホールの収容人数は7000人)がみんな演奏に集中して聴いている特別な雰囲気を持った音楽祭だと思いました」
聴衆も普段の演奏会に比べると若い人が多く、日本でもいつもの演奏会とは違った雰囲気になることが想像される。
「聴衆の中に若い人が見えるととてもうれしいです。音楽家として小さな子供や若い人たちに、クラシック音楽の魅力を伝えることは本当に大切なことだと思っています。音楽家の仕事は、音楽が持つ物語を観客と共有し、彼らが一部としてその空間に参加することだと思います。それにより日頃の悩みを吹き飛ばし、何ものからも自由になる素晴らしい体験になると思うからです」
演奏するチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、華やかでオープニングにふさわしい作品。録音はないが、彼女の日本での演奏は、繊細さとダイナミック、色彩感も備わっているという高い評価を得た。
「この作品は、ダイナミックな冒頭もすばらしいですが、私は第2楽章に作品のエッセンスが凝縮されていると思います。とてもロシア的で、さきほど物語を描くといいましたが、朝早い時間のロシアの田舎の風景のイメージを受けます。曲が違うとまた違ったイメージを受けて、どんな物語でも描くことができます。これが文学と音楽との違いで、音楽には表現について決められたものがないので、自由になることができます」
チャイコフスキーの協奏曲はオーケストラとピアノが渡り合うというイメージがあるが、どのようにこの作品に向き合うのだろうか。
「私は協奏曲もオーケストラと対峙するのではなく、室内楽のように演奏したいと思っています。両者が対決しているのではなく、ピアノはその一部で、曲の中に1つのラインがあるように思います。スコアを理解し、周りの音を聴いてどこに大切なテーマがあるか、それをどの楽器が演奏するのか、みんなで一緒にそれを探して演奏していくことで1つの作品の素晴らしい演奏ができると思っています」
5歳よりモスクワ・グネーシン特別音楽学校においてエレーナ・イヴァノヴァの下でピアノを学び始める。後にシチェルバコフ、トロップに師事。コモ湖国際ピアノ・アカデミーでは、ナボレ、バシュキロフ、ツォンらの薫陶を受ける。2010年、ショパン国際ピアノ・コンクール優勝。アルゲリッチ以来45年ぶりの女性優勝者として脚光を浴びる。他にルービンシュタイン・コンクール、ジュネーヴ国際コンクールでも入賞。
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BBC Proms JAPAN 2019
●Prom1/ファースト・ナイト・オブ・ザ・プロムス
10月30日(水) 19:00 Bunkamuraオーチャードホール(東京)
●Prom2/BBC プロムス・イン・大阪
10月31日(木) 19:00 ザ・シンフォニーホール
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、他
ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)
BBCスコティッシュ交響楽団(管弦楽)
トーマス・ダウスゴー(指揮)
■問い合わせ:BBC Proms JAPAN 2019 事務局
電話0120-970-248(平日10:00~18:00)