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vol.11 メゾ・ソプラノ エレナ・ツィトコーワ

メゾ・ソプラノ エレナ・ツィトコーワ

声と演技と美貌で世界のオペラ・ファンを魅了する
4月に新国立劇場の「ヴォツェック」のマリーを演じる
「狂気を演じるのは好きなので楽しめると思います」

「フィガロの結婚」のケルビーノや「ばらの騎士」のオクタヴィアンなど、いわゆる〝ズボン役〟からレパートリーを拡げ、現在は、ワーグナー「ニーベルングの指環」のフリッカ、「パルジファル」のクンドリーなどの大役でバイロイト音楽祭をはじめ、世界の名門歌劇場で活躍する。新国立劇場では、2003年にケルビーノでデビューのあと、オクタヴィアン、フリッカ、「トリスタンとイゾルデ」のブランゲーネや「タンホイザー」のヴェーヌスなど、数多く出演し、歌と演技と美貌でファンを魅了している。

「もう、劇場の固定メンバーのようです(笑い)。新国立劇場はとても、歌いやすいのです。まず、とても気持ちよく声が響く劇場です。加えて劇場スタッフが優秀でリハーサルなども停滞なく進みます。それに素晴らしい反応をしてくださるお客様がいます。とてもよくオペラを知っていて、半面、上手く歌えなければ怖いのですが、良い緊張感に満ちています」
4月には、ベルクの「ヴォツェック」の内縁の妻マリー役で新国立劇場に再登場する。

バリトン 河野克典
新国立劇場オペラ「トリスタンとイゾルデ」
(2010年12月)より ブランゲーネ役
撮影:三枝近志

「ロシアで何度か歌いましたが、自分のレパートリーに定着してはいません。ソプラノの役なので、メゾの自分には少々高めだったことも原因です。でも、最近はヴェーヌスやクンドリーなど高い声域も歌っているので、時期が来たと思っています」
「ヴォツェック」は、20世紀最高の作品の一つと言われながら、12音技法を用いた技巧的な難しさと、ビュヒナーの原作から要求される高度な演劇的素養も要求される難曲で、世界的に上演回数は少ない。

「リヒャルト・シュトラウスやブリテンなどより前に書かれたにも関わらず、とても現代的な作品です。音楽的には多様な感情表現が要求されます。貧しさ、ヴォツェックや子供、そして鼓手長と関係、常に精神的にギリギリのところに追い込まれている役なので、特別な声の感情表現も要求されます」
演劇としてもしばしば上演されるこの作品で、クリーゲンブルクの演出も演技を重視したものだが、どのように臨むのかも注目される。

「俳優としての勉強をしたことがなく、技術を持っているわけではないので、台本を読んで感じることを演出家の意図に沿って演じるだけです。ただ、この作品の台本を初めて読んだ時、マリーの境遇が自分の中でリアリティーを持って迫ってきて、思わず泣いてしまったほどです。だんだん狂気に向かっていく役ですが、狂気を表現するのは好きなので、思う存分楽しめるのではないかとも思います」

Elena Zhidkova

ロシア出身。演出家のゲッツ・フリードリヒに見いだされ、ベルリン・ドイツ・オペラの専属歌手となり、以来、ウィーン国立歌劇場、ザクセン州立歌劇場、ミラノ・スカラ座、国立リヨン歌劇場などの一流歌劇場、バイロイト音楽祭、エディンバラ音楽祭、サイトウ・キネン・フェスティバル松本、などの著名な音楽祭に招聘されている。新国立劇場には、2003年の「フィガロの結婚」のケルビーノで初登場、以降も「ばらの騎士」オクタヴィアン、「ラインの黄金」、「ワルキューレ」のフリッカ、「トリスタンとイゾルデ」のブランゲーネ、「タンホイザー」のヴェーヌスなどに出演した。

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■公演情報
 ベルク:歌劇「ヴォツェック」
 4月5日(土)14:00 8日(火)19:00
 11日(金)14:00 13日(日)14:00
 新国立劇場オペラ劇場
 ヴォツェック:ゲオルク・ニグル
 鼓手長:ローマン・サドニック
 アンドレス:望月哲也
 大尉:ヴォルフガング・シュミット
 医者:妻屋秀和
 マリー:エレナ・ツィトコーワ
 マルグレート:山下牧子
 演出:アンドレアス・クリーゲンブルク
 指揮:ギュンター・ノイホルト 東京フィル

■ 問い合わせ:電話03-5352-9999