ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクール ガラ・コンサートに出演、
昨年コンクールで弾いたサン=サーンスの
ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を披露
「ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクール」といえば、70年以上の歴史を誇る屈指の名門。これまでの優勝者・入賞者には、日本人も少なくなく、清水和音、野原みどり、田村響(以上ピアノ)、樫本大進、山田晃子(以上ヴァイオリン)ら、現在第一線で活躍している名手を輩出している。
そして昨年11月に開催されたピアノ部門のレース。何と日本人のコンテスタントがワン・ツー・フィニッシュを決めるという快挙を成し遂げた。1位が現在ベルリンで勉強している三浦謙司、2位が今回話を聞いた務川慧悟である。
「この4月に、ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクール ガラ・コンサートに出していただきます。昨年コンクールで弾いたサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を披露できてとてもうれしい」と務川。
「サン=サーンスを取り上げるピアニストは、例えばフォーレに比べて、そう多くはないかもしれません。ただ、僕は彼のピアノ協奏曲が好きで、華やかな第2番と、このエキゾティックな第5番は自分のレパートリーに入っています」
ところで、昨年のコンクール・ピアノ部門の審査委員長は、誰あろう、マルタ・アルゲリッチ。舞台からも、彼女の存在感は目立っていたという。
「アルゲリッチさんがいるから、ということで、演奏を変えようということはもちろんなかったですが、やはり彼女がそこにいれば、意識はしてしまいます。ステージでお辞儀すると、どうしても彼女の姿が目に入ってしまいますから」
6年前からパリ国立高等音楽院で学んでいるが、大学1年くらいまでは、留学するのならドイツと思っていたという。
「ドイツ音楽の方をよく弾いていたし、自分にも合っていると思ったのですが、初めて海外旅行に行ったのがパリ。その時、パリという町の雰囲気、統一感のある街並みなどを見て感じた衝撃で決心が変わりました。冬で寒かったのですが、とても魅力を感じたのです」
フランスに住み始めてから一番親近感を持っているのは、やはりフランス音楽、特にラヴェル。
「ピアノ作品の全曲演奏を既に行っていますし、一番近しい存在で、母国語に近い感じで弾けます。ピアニストにとって、ラヴェルの音楽は非常に弾きやすく作られているのです。ショパンも同様で、彼らのピアノ曲は、指の運動に無理がないように書かれているのです。ラヴェルは、歌曲も含めて、もっと弾いていきたいと思っています」
フランスでは、時間を見つけては、コンサートはもちろん、美術館にも足を伸ばし、大好きなカミーユ・コローやクロード・ロランなどを堪能しているという。フランス音楽で大切に扱われている〝音色〟の学習にも資するのであろう。
ところで、4月のガラ・コンサートでは、1位の三浦とモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲で共演する。
「三浦さんとは今回初めての共演なので、とてもうれしく思っています。いいプログラムになったと思います。彼も僕もモーツァルトが大好きなので、お互いに楽しみにしています」
東京芸大1年在学中の2012年、第81回日本音楽コンクールで1位となり、演奏活動をスタート。2014年、パリ国立高等音楽院に入学、第2課程ピアノ科、室内楽科を修了。現在、第3課程ピアノ科、同音楽院フォルテピアノ科に在籍。17年、シャネル・ピグマリオン・デイズのアーティストに選出、「ラヴェル・ピアノ作品全曲演奏」として6回のリサイタルを開いた。19年、ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクールで第2位に入賞。現在、日本、ヨーロッパを拠点に、ソロ、室内楽、協奏曲と、幅広くコンサート活動を行っている。これまでにフランク・ブラレイ、上田晴子、ジャン・シュレム、パトリック・コーエン、横山幸雄、青柳晋に師事。
4月7日(火)19:00開演
東京文化会館 大ホール
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」(ピアノ:務川慧悟)
ショパン:ピアノ協奏曲第2番(ピアノ:三浦謙司)
モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲K.365(ピアノ:三浦&務川)
下野竜也指揮、新日本フィル
■問い合わせ:クラシック事務局 ☎0570-012-666(平日 12:00~17:00)
http://www.long-thibaud-2020.jp/