©Tomoko Hidaki
師の名作「ウエスト・サイド物語」の映画に
オーケストラ生演奏を合わせるライブを指揮
「その場で生きた音楽を作ることも考えています」
偉大な業績を残した指揮者・作曲家、バーンスタインの生誕100年を記念して、愛弟子の佐渡裕が指揮する「ウエスト・サイド物語」シネマティック・フルオーケストラ・コンサートが行われる。映画を500~600インチの大画面で上映し、舞台上のオーケストラが生演奏するダイナミックなライブ感が味わえる。
「1985年のイスラエル・フィルとの来日公演でバーンスタインの演奏を生で初めて見て衝撃を受けました。とにかく、体全体で音楽を語っていて、すごい集中力と興奮を持ってオーケストラとともに完全燃焼している、度肝を抜かれました。この人にどうしても学びたいと思いました。彼と過ごした時間は夢のようで自分の宝物になっています」
1961年に製作された映画「ウエスト・サイド物語」は、60年近く経った今も色あせない。
「非行グループの抗争という設定を超えて、民族や国同士が憎しみを持って争うという現代にも通じる、永遠に存在しうるテーマを取り上げていて、今を生きる我々も共感できるということが、上映され続けている理由だと思います」
全曲から編まれた「シンフォニック・ダンス」は、オーケストラのレパートリーとなり、「トゥナイト」や「マリア」はスタンダード曲となっている。
©Takashi Iijima / West Side Story
©1961 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc, All Rights Reserved.
©A.M.P.A.S.
「バーンスタインはジャンルを超えた音楽を共存させるのが得意でした。ベースになっているのはシンフォニックなサウンドを持つオーケストラ。背景にはベートーヴェンやショスタコーヴィチ、マーラーなど彼が指揮してきた音楽が感じられ、ジャズやラテン音楽を伴って複合的で立体感のある音楽になっていると思います。クライマックスではマリア、トニー、アニタ、シャーク団、ジェット団という5つのグループが、それぞれに怒り、恋心、期待など違った感情を持って、一つのところに向かっていく。この5重唱はまるでモーツァルトのオペラのフィナーレのようで、違う感情を持った複数の人間が同時に
喋
るというのは、演劇でも難しく、オペラの手法が使われ効果を上げ、クライマックスになっています」
ダンスの場面が多く、そこでのテンポは、すでに決まっていて、指揮は映像に合わせなければならない。
「映像と音楽は合わせないといけないんですが、それだけでは面白くないんですね。すでに一度やっているので、歌やダンスが入っていない部分は、単に職人的に画面にあわせるだけでなく、その場で生きた音楽を作ることも考えています。それこそがライブシネマの面白さだと思います」
1961年、京都市生まれ。京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。89年、ブザンソン指揮者コンクール優勝。95年、第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール優勝。2005年に開館した兵庫芸術文化センターの芸術監督、15年よりトーンキュンストラー管の音楽監督を務める。これまでにベルリン・フィル、パリ管、北ドイツ放送響、ベルリン・ドイツ響、ロンドン響、バイエルン州立歌劇場管などのオーケストラに客演している。
バーンスタイン生誕100周年記念
佐渡裕指揮『ウエスト・サイド物語』
〈シネマティック・フルオーケストラ・コンサート〉
8月4日(土) 12:00 18:00
5日(日) 12:00
東京国際フォーラム・ホールA(東京)
8月9日(木) 18:30
フェスティバルホール(大阪)
(各日開演10分前に佐渡裕のオープニングトークあり)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
■問い合わせ:キョードー東京
電話 0570-550-799(東京公演)
キョードーインフォメーション
電話 0570-200-888 (大阪公演)