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vol.50 ソプラノ 伊藤晴

ソプラノ 伊藤晴
©Katsuhiko Kimura

藤原歌劇団の「カルメン」でミカエラを初めて歌う
「『カルメン』はあこがれのオペラでした」
「舞台の上で人物が生きているように歌いたい」

 「『カルメン』はあこがれ続けてきたオペラです。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部時代、藤原歌劇団の『カルメン』を見て、ドラマティックな演出に感動したのを覚えています」
来年2月に公演される「カルメン」でミカエラ役に初挑戦する。ミカエラは衛兵の伍長を務めるドン・ホセの婚約者。しかしホセは、たばこ工場で働くロマのカルメンに誘惑され、恋人になってしまう。
「ミカエラが純真無垢であればあるほど、カルメンの妖艶さが引き立ちます。ミカエラ役にはカルメンをより輝かせる役割も求められているのです。しかし、ミカエラがホセの母親が重病だから故郷に帰りましょうとホセに訴える場面は、カルメンをしのぐ女性の強さと怖さを見せる名シーン。一途なミカエラがホセをカルメンから取り戻すために、最後に切り札を使うのです」
武蔵野音楽大学大学院などで学び、パリ地方国立音楽院に留学した。師の近藤富佐子は、ブレートルの指揮で名盤が残されているマリア・カラスの「カルメン」で、カラスの指名を受けミカエラを歌ったアンドレア・ギオーの愛弟子。
「近藤先生がギオーにたたき込まれたことを、私も徹底的に教え込まれました。『椿姫』でヴィオレッタが、オペラの幕が進むうちに声が変わっていくのと同じように、ミカエラも最初はとても可 れん ですが、最後は心の強さが歌にも表れてきます。それを体にしっかりと覚えさせるために、後ろの場面から楽譜を読んで練習したりもしました」

ソプラノ 伊藤晴
2014年藤原歌劇団公演「ラ・ボエーム」ムゼッタ
©公益財団法人日本オペラ振興会

 最初の留学先にミラノを選択したのも、カラスの「トスカ」のCDを聴いて、「こんなに情熱的な世界があるんだと衝撃を受けた」から。カラスの「カルメン」は何度も聴き返した。
子どものころからピアノを習っていたが、歌を始めたのは18歳のとき。
「教育学部の音楽科に進学し、歌、チェロ、ピアノなどまんべんなく勉強しました。しかし、4年生のときに、声楽家になることを志し、一念発起して進路を変更しました。大学時代に『カルメン』もみましたが、当時はまさか自分がその舞台に立つ日が来るとは思いもしませんでした」
2013年にパリから帰国。藤沢オペラコンクールで2位、日本音楽コンクールで入選し、日本での活動が本格化。14年には藤原歌劇団80周年記念公演の「ラ・ボエーム」のムゼッタで同歌劇団本公演デビューを飾った。「カルメン」の後、日本オペラ協会の2017年シーズンは「夕鶴」で主役つうを歌う予定。
「舞台の上で演じる人物がそこに生きているように歌いたい」

Hare Ito

三重大学卒業。武蔵野音楽大学大学院修了。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第25期修了。パリ地方国立音楽院コンサーティスト・ディプロマ課程修了。2014年藤原歌劇団創立80周年記念公演「ラ・ボエーム」ムゼッタで藤原歌劇団本公演デビュー。15年セイジ・オザワ松本フェスティバル子どものための音楽会「第九」ソリストに抜擢され、ロームシアター京都竣工式において同ソリストを小澤征爾指揮の下、務める。16年3月日本オペラ協会・兵庫県立芸術文化センター共同制作「天守物語」亀姫役。第9回藤沢オペラコンクール第2位。第82回日本音楽コンクール(オペラ)入選。藤原歌劇団団員。

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藤原歌劇団公演 ビゼー:「カルメン」
2017年2月3日(金)~5日(日)(新演出)
東京文化会館大ホール
指揮:山田和樹  演出:岩田達宗
伊藤の出演は4日(土) 14:00
4日のキャスト
カルメン:ゴーシャ・コヴァリンスカ、ホセ:藤田卓也
エスカミーリョ:王立夫(ワン・リーフ)、日本フィル

2017年2月11日(土・祝) 14:00
愛知県芸術劇場大ホール
ミカエラ:伊藤晴
■問い合わせ:日本オペラ振興会チケットセンター電話044-959-5067