イタリアの明るい音色とカンタービレで魅了
来日記念盤「イタリア協奏曲」をソニーから発売
「バッハは弾けば弾くほど好きになります」
「イタリアの個性派ピアニスト」としてイタリア・ソニーからはすでに7枚のアルバムをリリースしている。このほど、日本での独自企画によるデビュー盤「イタリア協奏曲」を出した。
ジャケット写真がはだしで写っている(写真下)。さすが、これも個性派の自己主張かと聞くと、「カメラマンに靴を脱いでみる? といわれたから脱いだだけです。若いときは反抗心が強い青年でしたが、今は大人しくなりました」と笑う。
こう答えるのには理由がある。子供のころは天才少年と騒がれた。
「ジェノヴァに近い村で育ちました。小学校1年のクリスマスで、先生が弾くキーボードの和音が間違っていました。それを指摘しました。音楽とは無縁の普通の家庭で、家にはプレゼントでもらったリコーダーがあるだけ。絶対音感があることを人に言われたのです。もしかしたら才能があるかもしれない、とピアノを習わせてもらいました」
しかし、ショパン・コンクールなど大きな国際コンクールでの実績はない。たとえば浜松国際ピアノコンクールの予備予選を受けたが、落ち、浜松にさえ行けなかった。
「天才少年と騒がれいろいろな場所で演奏しました。可能性が与えられたと錯覚していました。しかし、人が思うほど才能がないのではないか、という恐怖心をずっと持っていました。国際コンクールでは一度も1位を取っていません。若いときは、コンクールに通った人の演奏を批判したりしていましたが、今ではそれだけの才能があると思うようになりました」
録音はバッハを中心に行っている。 「ゴルトベルク変奏曲」の録音は、映像作品も含めて他レーベルに3種類あり、ソニーからはフランス組曲全曲もリリースしている。今回のアルバムはファツィオリのピアノで録音したことも特徴のひとつ。
「バッハのポリフォニーの完成度の高さは素晴らしい。作曲家の指示が少ないので演奏者が自由に解釈できます。練習して弾けば弾くほど好きになります。ゴルトベルクを3度録音しているのは、自ずと考え方やアイデアが変わってくるので実験をしたいのです。ファツィオリはバロックには合うと思います。ちなみにデッカへのベリオ作品集の録音はヤマハでしました。バッハをピアノで録音するのは、現代のピアノだからできることを最大限に生かすためです」
機関銃のようにぽんぽんと言葉が飛び出す。トッパンホールで行われたリサイタルでも、ノリのよいリズム、そして明るい音色が特徴的だった。
1977年、イタリア、リヴィエラ海岸、レッコに生まれる。モーツァルテウム音楽院、パリ国立高等音楽院、ジェノヴァのニコロ・パガニーニ音楽院で学ぶ。11歳でシモーネ指揮イ・ソリスティ・ヴェネティと共演しデビュー。96年、プレミオ・ヴェネツィア・コンクールで優勝。ベリオと緊密な関係を持ち、ベリオ監修で録音も行った。2012年、ルイジの強い推薦でパシフィック・ミュージック・フェスティバルに来日。イタリア・ソニーを中心に録音を数多く行っている。
■CD
イタリア協奏曲~バッケッティ・プレイズ・バッハ(写真)
DISC1
バッハ:協奏曲(原曲:ヴィヴァルディ:調和の霊感 作品3-9)
イタリア協奏曲/コラール「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」
(ブゾーニ編曲)、他
DISC2
バッハ:フランス組曲第5番、スカルラッティ:ソナタハ短調
マルチェッロ:ソナタ第3番、他
(ソニー)SICC-30167~8
■コンサート
バッケッティ日本ツアー2014
7月12日~19日(終了)